辺野古の工事で新たな問題が判明 --- サンドコンパクションパイル工法作業船の改造は容易なことではない（韓国では事故発生）。しかもかなりの費用となるが、何故、民間作業船の改造費用を公金で負担するのか？

　辺野古・設計変更申請の国の代執行により、本年１月初めから大浦湾での工事が始まっている。今は、海上ヤード造成工事だが、防衛局は、代執行訴訟高裁判決前の昨年１２月初めに、大浦湾の４件の護岸工事（シュワブ（R5）A護岸新設等工事、シュワブ（R5）Ｃ1護岸新設等工事、シュワブ（R5）C3護岸新設等工事、シュワブ（R5）護岸（係船機能付）新設工事）を発注しているので、まもなくこれらの護岸工事のための地盤改良工事が始まる。いよいよ大浦湾の環境は致命的に破壊されてしまう。

　大浦湾の地盤改良工事は、海底地盤に砂杭を打ち込むサンドコンパクションパイル（ＳＣＰ）工法等で行われる。大浦湾では海面下９０ｍまで軟弱地盤が続いているが、防衛局は、「海面下７０ｍ以深は粘土層だが『比較的固い』ので（その後、防衛局は、「『比較的固い』粘土層は海面下７７ｍ以深」と訂正した）、ＳＣＰ工法は海面下７０ｍまで施工する」としている。

　しかし実際には、日本では海面下６５ｍまでのＳＣＰ工法の実績しかなく、作業船もないのだ（海外でも海面下７０ｍまでの施工実績）。今回の地盤改良工事では同時に３隻のＳＣＰ作業船が必要だが、日本には、海面下７０ｍまで施工できる作業船がやっと１隻、２隻は「改造により７０ｍ打込み深度可能」というのが実態である（末尾の「作業船一覧」参照）。

　その後、防衛局の資料（地盤のせん断波速度）でも海面下７７ｍ以深はさらに軟弱地盤であることも明かになっている。海面下７０ｍまでしか地盤改良できない場合、護岸の沈下・崩壊等が想定される。

　いくら代執行で工事を強行しても、辺野古新基地建設事業は頓挫する。

 

　ＳＣＰ工法作業船（不動テトラ㈱ＨＰより）

 

　ＳＣＰ工法について、さらに別の問題を指摘したい。

　海面下７０ｍまでの地盤改良としても、作業船の改造が必要となる。昨年１２月に契約した「シュワブ（Ｒ５）Ｃ１護岸新設等工事」の特記仕様書には次のような記載がある。

　「ＳＣＰ船については、３連装、７５ｍ級への改造を３隻想定しており、費用については、当初は計上していない。--- 改造が必要となる場合の費用については見積書の提出を求め、妥当性を確認したうえで計上する」

　現在の５５ｍ級のＳＣＰ作業船を７５ｍ級に改造するのは容易ではない。リーダー（上の写真の赤白部分）が２０ｍも高くなることとなり、船の安定性を保つためにも船幅を大きくする必要がある。大規模な改造が必要となり、費用も膨大なものとなるだろう。台風、冬の時化等、大浦湾の波浪等を考慮するとさらに慎重な対策が必要となる（2007年、韓国での海面下７０ｍまでのＳＣＰ工事でも、突風と高波のためにリーダー３本のうち２本が折れ曲がる事故があった（2024.2.25 沖縄タイムス）。また、2012年の韓国・蔚山市沖の軟弱地盤改良工事では、高さ８０ｍのリーダーが折れて作業船が沈没。作業員２４人が海に落ち、１２人が死亡する大惨事となったという（2024.3.4 沖縄タイムス））。

　今回の工事では、「シュワブ（Ｒ５）Ｃ１護岸新設等工事」のＳＣＰ工法の作業船３隻の改造だけではない。「シュワブ（R5）C3護岸新設等工事」では、ＳＣＰ工法の作業船２隻の「船体補強の改造」、また、トレミー船（砂撒船）についても「改造が必要となる場合」、「シュワブ（Ｒ５）護岸（係船機能付）新設等工事」でも、ＳＣＰ工法の作業船１隻の「船体補強の改造」の費用を負担するとしている（各工事の特記仕様書より）。

　５５ｍ級のＳＣＰ工法作業船を７５ｍ級に改造したり、船体補強の改造費用を出してやるというのだ。受注業者にしてみれば、負担なしで作業船の改造ができることとなり、これほど美味しい話はない。

　何故、民間業者の作業船の改造費用を公金で負担することができるのか。これは、土砂運搬を受注した業者のダンプトラックを大型トレーラーに改造してやるようなものだ。許されない。

 

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＜「シュワブ（Ｒ５）Ｃ１護岸新設等工事」の特記仕様書＞

 

＜作業船一覧＞