チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

2月5日(水)那覇地裁へ・防衛局土木課長と私の証人調べの傍聴を! --- 軟弱地盤土質調査資料の不開示決定取消を求める訴訟(原告陳述書全文掲載)

2020年01月28日 | 沖縄日記・辺野古

 現在、大きな問題となっている大浦湾の軟弱地盤問題は、2018年1月に沖縄防衛局に公文書公開請求を行った結果、2014年当時の土質調査結果が公開されて明らかになったものです。

 防衛局は2015年以後も土質調査を続けています。私は2018年5月、それらの追加調査の土質柱状図等の公文書公開請求を行いましたが、防衛局は「文書不存在」として不開示決定としてしまいました。

 この不開示決定は許せないとして、2018年7月、那覇地裁にこの不開示決定取消訴訟を提訴しました。今まで書面のやり取りが続いていましたが、いよいよ証人調べが行われます。防衛局の西村土木課長(当時)と私が証言台に立ちます。是非、傍聴においでください。

 2月5日(水)午後1時半~ 那覇地裁101号法廷

 

 

 この訴訟の詳細については、下記のブログを参照してください。

・軟弱地盤地質調査データの不開示決定取消を求めて提訴(2018.7.10)

・情報公開訴訟、原告の口頭陳述の傍聴を!(2018.9.16)

・情報公開訴訟、那覇地裁で口頭陳述(2018.9.19)

 

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(以下、今回の証言にあたって裁判所に提出した陳述書です。)

               
        陳 述 書                                           

第1.私の経歴
 私は、1945年生まれで、●大学工学部で土木工学(専攻は土質力学)を学んだ後、1971年(26歳)から2003年(58歳)まで●●に土木技術職職員として勤務して、公共土木事業の設計・現場監督・検査等の業務に従事してきました。その間、1996年~1998年には、フィリピンのサマール州カルバヨグ市役所に都市計画の技術顧問として赴任しています。●●を退職した後は、JICAのフィリピンでの草の根支援事業に数年間、従事した後、2008年に家族で沖縄に移住しました。
  そして沖縄の歴史を学び、各地の戦跡を訪ねたり、米軍基地の現状を見るにつけ、沖縄が抱える深刻な問題について考えるようになりました。
 ちょうどその頃から、北部訓練場のヘリパッド工事や、辺野古の新基地建設などに対して、沖縄県民の「これ以上の基地強化は許さない」という抗議行動が盛り上がってきました。私もいつのまにか、それらの運動にかかわるようになりました。
 こうした運動の中で私は、沖縄防衛局や沖縄県等に公文書公開請求を行って工事の設計図書や委託業務の報告書等を入手し、それらを分析・検討する作業を続けてきました。


第2.今回の公文書公開請求に至る経過
1 調査①及び調査②に関する開示請求で軟弱地盤の存在が発覚
 沖縄防衛局は今回の辺野古新基地建設事業で、2014年度以来、毎年のように海底地質調査を続けてきました(被告第1準備書面の調査①ないし調査⑦)。ところが2014年度に始まった地質調査(調査①及び調査②)は、2016(H28)年3月末には報告書が出されているのに、防衛局はその内容を公表してきませんでした。
 そのため私は、2018(H30)年1月17日、沖縄防衛局長に対して、「シュワブ(H25)地質調査(その2)」(調査①)によるボーリング柱状図や地質断面図、その他、業務終了後に提出された報告書等の成果品の公文書開示請求を行いました。
 これに対して、沖縄防衛局長は同年2月28日、調査①の報告書を開示しました(受領は3月6日)。また、その後、国会議員に対して、調査①及び調査②の報告書を提供しました。
 これらの報告書を見て驚きました。大型ケーソンの設置が予定されている大浦湾海底部に4地点で、N値ゼロという、まるでマヨネーズのような軟弱地盤が広がっていたのです。
N値とはボーリング調査の標準貫入試験に基づく地盤の強度を示す数字です。標準貫入試験とは、ボーリングで掘削した孔を利用して、63.5kgのハンマーを75cmの高さから落下させ、先端の試験杭(サンプラー)を30cm貫入させるのに要する打撃回数を調べる試験です。その打撃回数をN値といいます。したがって、N値が大きいほど地盤の強度は大きいということになります。N値ゼロとは、ハンマーを落下させる前に、先端の試験杭を設置しただけでズブズブと沈んでしまったことを意味しています。
このような標準貫入試験を深さ1m毎に行い、ボーリング柱状図を作成します。
 特に、調査②の報告書で分かったことですが、大型ケーソンが設置されるB28地点では、水深30mの海底に、厚さ40mものN値が概ねゼロという軟弱地盤が続いていました。このB28地点のボーリング柱状図(甲35)を説明します。
 海底から深さ1m毎にN値が測定されていますが、折れ線グラフのようなものを見ても分かるように、海底1m、4m、5m、12m、13m、15m、16m、17m、19m、20m、21m、23m、24m、27m、28m、29m、31m、32m、33m、35m、36m、37m、39mの地点が全てN値ゼロとなっています。その地点は、「モンケン自沈」と書かれていますが、これは試験杭(モンケン)を置いただけで、ハンマーを落とす前に「自沈」してしまったことを意味しています。
 また、上の方には、「調査期間:平成27年3月13日~平成27年4月23日」と書かれています。調査②は、2016(H28)年3月31日までの工期で、工期末に報告書が出されているのですが、その1年前にはこうした深刻なN値ゼロの調査結果が出ていたのです。
大型構造物の基礎としてはN値が「50以上が望ましい」とされています。このN値は、土木工事で構造物を設計する際に、最も基本となる重要な数値です。防衛局の当初の埋立承認願書では、N値11としてケーソン護岸の設計をしていましたから、全面的な設計のやり直しが必要となります。
まず、大規模な地盤改良工事が不可避です。そのためには、公有水面埋立法に基づき、知事への設計概要変更申請が必要ですから、このようなとんでもない軟弱地盤が見つかったことは防衛局にとってもきわめて深刻な事態だったはずです。


2 今回の公文書公開請求に対する「文書不存在による不開示決定」について
 沖縄防衛局は、調査①及び調査②の地質調査の後も、調査③ないし調査⑦などの地質調査を続けています。
 沖縄県は、2017(H29)年7月25日、沖縄防衛局に対して、それまでの大型調査船、スパッド台船による地質調査の実施個所及びボーリング柱状図と、土層断面図等を提供するよう求めました(甲4)。これらは調査④及び調査⑤の土質調査に関する資料です。
 しかし沖縄防衛局は、同年9月12日、調査地点の図(甲5)を県に提出しましたが、調査結果、土層断面図については、「現在、調査実施業者において作成中であり、当局として未だ受領していないことから、現時点において、お示しすることはできませんが、受領でき次第、提供したいと考えています」として県に提供しませんでした。
 しかし、先にも述べたように、B28地点の調査は2017(H29)年4月には終わっています。県が提出を求めた2017(H29)年7月末には、最終報告書は未だ提出されていないとしても、ボーリング柱状図等は当然、受領していたはずです。
 私は、2018(H30)年3月に開示を受けた調査①の報告書等で軟弱地盤の存在が明かになったことから、その後の土質調査の内容を知りたいと思い、同年5月10日、沖縄防衛局が県に提出した図(甲5)の各調査地点のボーリング柱状図及び土層断面図の開示請求を行いました。
 これに対して沖縄防衛局は、6月8日、「請求に係る文書については、開示請求時点において文書不存在」として、不開示決定をしたのです。そのため私は、この不開示決定を取消し、開示を求める本件訴訟を提訴したのです。


第3 沖縄防衛局が、開示請求時点で本件文書を所持していなかったはずはないこと
1 委託業務の実施中には、発注者の監督員が常に業務の進行状況、内容等を確認しており、工期末に報告書が提出されるまで、業務の内容について知らないことはあり得ない。
 私は、「経歴」にも述べたように、自治体の土木技術職職員として、30年以上にわたって公共土木事業の設計・現場監督・検査等の業務に従事してきました。その経験から、土木工事での発注者と受託業者の関係について説明します。
 工事の委託契約が終ると、発注者は複数の担当職員を工事監督員として指名します。委託業務の実施中には、突発的にいろんなことも起こりますから、工事監督員は、事業の実施中、ほぼ毎日のように現場で立ち合い、状況を監督します。そして、工事・業務が設計図書どおりに実施されているかどうかなどもチェックします。また、受注業者の担当者(現場代理人)も、何か問題が生じた場合は、常に工事監督員に連絡をとり、その指示を仰ぎます。そして工事監督員と現場代理人との間の打合せ内容については、後にトラブルにならないように、双方が押印した工事打合せ簿を作成します。
 本件の場合、「シュワブ(H26)ケーソン新設工事(1工区)」(調査⑤)では、防衛局は甲34のように、統括工事監督官、主任工事監督官各1名と、5~6名の工事監督官を指名し、総数は7~8名にもなっています。
 また、工事監督員は、常に事業の進捗状況などを上司である課長等に報告します。何か問題がある場合は、課長等も現場に赴いて状況を確認したり、受注業者の現場代理人を呼んで報告を求めるのが通常です。
 また、調査⑤の工事打合せ簿(甲23)を見ると、工事が再開された2017(H29)年1月から2018(H30)年12月までの間に、地質調査だけに限っても250回もの工事打合せ簿が作成されています。特に現場での調査が始まった2017(H29)年2月からは、ほぼ連日のように工事打合せ簿が作成されています。2017(H29)年5月8日のように、1日に8回もの工事打合せ簿が作成された日もあります。
 特にボーリング調査については、各地点で削孔長を立ち会って確認したり、出来形検査、調査位置や基準高、掘削完了深度などについて、工事監督員がその都度、確認しています(甲23)。ボーリングに伴う標準貫入試験の結果などについても、工事監督員がその詳細を確認していたのは当然です。
    成果品としての報告書は工期末に発注者に提出されますが、工事の途中であっても発注者は工事の進捗状況や内容について当然、承知しているのです。


2 調査④及び調査⑤でもN値ゼロの軟弱地盤が多くの地点で見つかった。今回の開示請求はそれらの地点の調査の1年後に行われたものだが、調査①及び調査②で軟弱地盤の存在が確認されて大きな問題となっている時期であり、防衛局が1年間も調査結果の内容を知ろうとしなかったことはあり得ない。
 2018(H30)年3月に開示された調査①の報告書で、N値ゼロというような軟弱地盤の存在が確認されたことは、各方面にも大きな反響を呼びました。
同年3月21日には、沖縄タイムス紙が、私が入手した資料をもとに、軟弱地盤問題を大きく報道しました(甲26)。そして4月2日には、沖縄県の謝花副知事が記者会見で軟弱地盤問題に触れ、「(政府とは)辺野古の活断層や軟弱地盤で果たして基地が造れるのかという話をしていきたい」と述べました(甲27)。また、4月6日には、沖縄県が、「これまでも調査結果の情報提供を求めてきたが得られなかった」として、それまでに防衛局が実施した地質調査に関する文書を情報公開法に基づいて開示請求しています(甲28)。
 さらに翁長沖縄県知事(当時)は、4月25日、「軟弱地盤の存在が判明し、専門家から活断層が存在するおそれが指摘されている中で、国が工事を強行していることを『甚だ遺憾』」とし、「(看過できない事態となれば)躊躇することなく(埋立承認)撤回を必ず行う」とのコメントを発表し、大きな反響を呼びました(甲29)。
 そして、野党国会議員らでつくる沖縄等米軍基地問題議員懇談会が、軟弱地盤問題についての調査・検討作業を始めるなど(甲30)、国会でも大きな問題になったのです。
 本件訴訟の対象となる調査④及び⑤の地質調査では、原告第5準備書面の別紙にもまとめたように、2017(H29)年4月から6月にかけての調査でN値ゼロの軟弱地盤が多くの地点で確認されています。本件の開示請求は、それからほぼ1年後ですが、上記のように、軟弱地盤問題が大きな反響を呼んでいる最中ですから、防衛局が他の調査地点のN値を知ろうとしなかったはずはありません。
 

第4 防衛省が政治的な判断で「不存在決定」を行っていることを示す「情報公開査察官」制度
 本件の不存在による不開示決定処分の後、防衛局は次のような文書(甲11)を私に送ってきました。
 「防衛省においては、大臣官房文書課に『情報公開査察官』を新設し、防衛省の保有する行政文書の開示請求について、行政文書を不存在(一部不存在含む)とする決定が行われた場合は、その判断の正当性を厳格に確認することを目的として、査察を行っております。
 本件開示請求に対する行政文書を不存在(一部不存在含む)とする決定につきましても査察を実施いたします。
査察において行政文書が確認された場合は、行政文書を不存在(一部不存在含む)とする当初の決定を変更するなど、適切に対応させていただきます。」
 この「情報公開査察官」制度とは、南スーダンPKO活動に派遣された自衛隊の日報の公開請求に対して、防衛省が「不存在」として隠蔽したのですが、その後、隠しきれなくなって公開した事件が強い批判を浴びたことから、2017(H29)年8月、その是正策として防衛省内に設置せざるを得なくなったものです。
 この「情報公開査察官」は、防衛省が不存在とした全ての文書について査察を行い、査察の結果は定期的に政務三役に報告するというのです。
私が沖縄防衛局に公文書公開請求をした他の事例でも、当初は「不存在」とされたものが、「情報公開査察官」による査察が行われた結果、「追加で行政文書が確認されたため、当初の決定を変更する」として開示されたものが3件もあります(甲12の1ないし12の4)。
 文書の存在、不存在は、単に物理的な問題にすぎないはずです。それを、わざわざ「情報公開査察官」という制度を作って、不存在とした全ての事例について査察が必要になっている。そして査察の結果、不存在決定が取り消される事例がいくつもあるというのは、防衛省のいう存在、不存在が、政治的な判断で行われていることを示しています。

おわりに
 私は、2014年の辺野古新基地建設事業開始後、沖縄防衛局に対して工事の設計図書等の公文書公開請求を続けてきました。
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律、いわゆる情報公開法は、「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」を目的としたものです。
 ところが沖縄防衛局は、情報公開法第11条の「開示決定等の期限の特例」では、「文書が著しく大量である場合」にのみ開示決定を延長することができるとされているとされているにもかかわらず、それを「当該文書が著しく大量であることに該当する」と拡大解釈して開示期限を1年以上にも延長したり、政治的な理由で文書を「不存在」とするなど、情報公開法の趣旨を無視した運用を続けているのです。許されることではありません。
                                   
                                   

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