チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

3月28日、具志堅隆松さんらと熊野鉱山開発に伴う戦争遺跡・シーガーアブの崩落を防ぐために沖縄県交渉 --- 県も、厚労省とともに調査に入ることを表明

2023年03月28日 | 沖縄・南部土砂問題//遺骨問題 

 この2年以上、取組を続けてきた糸満市・魂魄の塔横の熊野鉱山の掘採がとうとう始まろうとしている。今日(3月28日・火)は、熊野鉱山開発に伴い崩壊が危惧されるシーガーアブの問題で、沖縄県と交渉した。県からは保護援護課長、自然保護課長、そして教育委員会文化財保護課の担当班長らが対応。私たちは、具志堅隆松さん、ガマフヤー支援者の会の4名が参加した。

 熊野鉱山問題の最近の動きについては、本ブログの昨年12月29日版本年1月4日版等を参照されたい。

 県が、公害等調整委員会の和解案を受諾してしまったので、開発業者は自然公園法に基づく開発届を昨年12月1日に再提出し、県はそれを受理した。自然公園法では、受理から30日経てば事業に着手できる。しかし、糸満市の風景づくり条例の届出、開発行為の協議申請書の差替え手続き等がまだ続いている。これらの手続きが終れば、県の土砂搬送道路の農地一時転用申請の審査が始まる。業者が現地での事業に着手できるのは、知事が農地一時転用申請を許可してからとなる。このままでは4月中にも事業が始まるかもしれない。

 熊野鉱山に隣接して2つのシーガーアブがある。このシーガーアブは、有川中将以下将兵自決の壕とも言われているが、戦争末期には多くの住民も亡くなった戦争遺跡でもある。地元の『米須字誌』には、避難していた地域の住民ら7家族が米軍に焼き殺されたという証言もある。また、戦後には、70柱もの遺骨が収集されたとも報道されている(1961.3.17 沖縄タイムス)。

 

 上図のように、2つのシーガーアブは地下で繋がっている。ところが、熊野鉱山の土砂搬出道路は2つのアブの間に造成されるので、この道路を土砂を満載したダンプトラックが行き来すれば、シーガーアブの地下部分は崩落してしまう。さらに、奥のアブは、鉱山の掘削区域に隣接しており、鉱山の掘採に伴い、影響を受けるおそれもある。

 そのため私たちは、今年2月、知事宛に、①鉱山掘採前にシーガーアブの総合的な調査・遺骨収集を行うこと、②業者に対して、シーガーアブの保存対策を講じさせ、それまでは掘採を始めないよう指導すること、という要請書を提出した(末尾参照)。

 私たちの要請に対して、県は次のように回答した。

「シーガーアブの調査・遺骨収集については、厚労省にも情報は伝えています。県としては、古墓由来の遺骨もある可能性があるので、まず、サンプル的に遺骨を収集して古墓由来のものかどうかを確認してから進めたい。厚労省にもそうった方法でやってほしいと求めていきます。厚労省が本格的に入る前の県の現地確認については、事業者と調整して進めていきます。」

 県は、厚労省とともにシーガーアブの調査に入ることを約束したのは一歩前進だが、それまでに鉱山の掘採が始まり、アブが崩落してしまっては手遅れとなる。私たちは、県や厚労省の調査までは掘採を待つよう業者を指導すべきだと強く求めた。

********************************

<知事宛の要請書>

沖縄県知事 玉城デニー様          2023年2月9日                              

 糸満市・熊野鉱山の掘採前にシーガーアブの総合調査・遺骨収集を行い、

崩落を防ぐ対策を講じさせるよう求める要請書

                                        

       遺骨収集ボランティア・ガマフヤー     具志堅隆松                     

       ガマフヤー支援者の会           谷 大二

                                           

 糸満市・「魂魄の塔」横の熊野鉱山の掘採は、周辺の風景や環境に深刻な影響を与えるだけではなく、沖縄戦戦没者の遺骨が混じり、血が染みこんでいる土砂を掘り起こすことは許されないとして、大きな社会問題となってきました。

 知事は一昨年5月、熊野鉱山の開発届に対して、県民の声を受け入れ、自然公園法に基づく措置命令を出しましたが、昨年6月、公害等調整委員会の「和解」案に応じてしまいました。その後、県は昨年12月1日、業者が提出した「和解」案に基づく新たな開発届を受理しました。以前の開発届は取下げられたため、県の措置命令も無かったことになってしまいました。

 現在、糸満市で、新たな開発届に伴う風景づくり条例の行為届出書や開発行為に基づく協議申請書の審査が行われています。これらの審査が終了し、知事が土砂搬出道路部分の農地一時転用申請を許可すれば、いよいよ熊野鉱山の開発が始まります。

 私たちは昨年12月26日にも知事宛に質問・要請書を提出しましたが、いよいよ開発行為が始まろうとしている今、特に、鉱山に隣接したシーガーアブの問題について再度、下記のとおり要請します。 

                         記 

1.地元の『米須字誌』には、「シーガーアブには7家族ぐらい入っていた。そこに避難していた家族は米軍の再三の呼びかけにも出てこないため、石油を流しこんで燃やした」という証言が掲載されている。

 また、糸満市議会が2021年3月22日に議決した、「糸満市米須地区の土砂採取に関する意見書」でも、「琉球王府時代から地域住民が畏敬の念をもって接するシーガーアブ」と、その重要性を指摘している。戦後、70体もの遺骨が見つかったという報道もされている(1961年3月17日 沖縄タイムス)。

  シーガーアブの全容は未だ調査されておらず、今も、戦没者遺骨が残っている可能性が高い。掘採前に、シーガーアブの総合的な調査・遺骨収集を行うこと。 

2.熊野鉱山の掘採箇所はシーガーアブに隣接しており、さらに、土砂運搬の仮設道路は地下で繋がっている2つのシーガーアブの間を通っている。そのため、鉱山の掘採やダンプトラックの走行によるシーガーアブの崩落が危惧される。

 新たな開発届に対する糸満市の副申書(2022年12月14日)でも、「採掘行為の振動等により隣接するガマが崩落し、周辺環境へ影響を及ぼす可能性がある」、「隣接するガマが採掘行為の振動により崩落する可能性があることなどに鑑みると、-- 工事の際に事業者においてガマの調査を行ったうえで、崩落防止対策を講じるよう求めるべきである」と指摘している。

 業者に対して、シーガーアブの保存対策を講じさせ、それまでは掘採を始めないよう指導すること。

 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月27日、本部塩川港の「... | トップ | 熊野鉱山の開発に伴い、貴重... »
最新の画像もっと見る

沖縄・南部土砂問題//遺骨問題 」カテゴリの最新記事