「う~ん、うう~ん・・・。うん!! いいや、もう!! 今回だけ!! 伝家の宝刀抜く!!」
・・・なんのことやら。
アタシが茫然と見ていると、みゆ希さんはスマホを取り出して向こうを向くと電話をかけ始めた。
「あ~、モシモシ? 良かった、出てくれて! 今電話いい? あのね、ユウジ来月28日に神奈川でコンサートあるでしょ?・・・え? そうだっけって・・・それくらい覚えときなさいよ!・・・でさあ、チケット、何とかなんないかなあ~・・・。招待券とか手に入んない?」
エッ? 招待券?! みゆ希さん、何てことを・・・。あ、そっか・・・、テレビ局のアナウンサーだから何かとその方面に人脈あるんだ・・・。アタシは期待半分でみゆ希さんを見守った。
「あ~、うん。わ~かってるよ~。ホントはダメなんだろうけど、そこを何とか! こっちもちょっとワケありでね・・・申し訳ないんだけど、今回だけ特別に!! 車イスの人でね、通常の座席はキツイんだよ、だから~!」
みゆ希さんが食い下がっているところへ、店長が美佳ちゃんを抱きかかえて降りてきた。
「ほ~ら、涼香お姉ちゃんだよ。」
と言いながら。アタシは寝起きの美佳ちゃんに微笑みかけて
「こんにちは、美佳ちゃん!」
と声をかけた。美佳ちゃんは人見知りもせずニッと笑うとパパの肩におでこをくっつけた。思わず叫ぶ・・・
「や~ん、か~わ~い~い~~~~!!!」
ハーフである店長に似たのか、天然茶髪のふわふわの髪が揺れる。も~~~、超可愛い~い!!!! いいなああ~、赤ちゃんて・・・和むわあ・・・。どんなゆるキャラも赤ちゃんには勝てっこないない!! ああ・・・やっぱり今日ここに来てよかったよ・・・。だいぶ元気がでてきたもん! てか、ああ・・・アタシってホントに単純・・・。

みゆ希さんの電話はまだ続く。
「うん・・・そう、じゃあ・・・土曜日に。時間はまた連絡するね。うん・・・うん、申し訳ないっ! 恩に着るわ。このカリは絶対返すから! も、なんでも言うこと聞いちゃうから。え? あー、それはナシ、それはダメ、それ以外の方向で。あっはっは!! ハイハイ、よろしくね。・・・ああ、うん、はい、・・・あはは、そだね、あたしも愛してるよ~!」
え・・・?! みゆ希さん? そばにご主人さんいるんですけど~~!? て、みゆ希さんてば店長をチラ見して
「世界で2番目・・・3番目4番目5番目・・・・19番目くらいに!!・・・あはは、冗談だって! じゃね。ホントにありがとうね!! 一生恩に着るよ!」
と、締めくくった。そしてアタシに向き直ってピースサイン。
「よっしゃあ!! 喜べリョウちゃん、ユウジのコンサートチケット、なんとかなりそうだよ!! もち車イスでOK! 専用のブース席、なんとかしてくれるみたい、まだ決定じゃないけどね!」
「ホントですかあ?!」
アタシは思わず席を立つ! 普通でも嬉しいのに、場合が場合なだけに余計嬉しいよ! あ、美佳ちゃんちょっとびっくりしてる・・・。
「あは・・・美佳ちゃん、ごめんごめん! みゆ希さん、ありがとう!」
「イヤイヤイヤ、何の何の。・・・て、タブン、だよ、まだ。でも期待していいと思う!」
「大丈夫なのか? ホントはいけないんだろ?」
店長が尋ねると、みゆ希さんはさすがにちょっと困り顔で首をかしげた。
「ま、ね・・・。確かにホントはダメなんだけどね・・・だけど今回だけってゴリ押ししちゃった。だからリョウちゃん、ゼッタイ誰にも内緒で今回限りだよ。」
と、みゆ希さんは人差し指を唇に立てる。
「はい!! もちろん誰にも言いません!」
アタシは嬉しさ満面でうなずきまくった。ああ、言いたくなりそう・・・でも我慢!
「次、いつここ来る?」
「あ、えっと・・・日曜日です・・よね、店長。」
「ああ、昼から入ってくれることになってたっけ。」
「じゃあちょうどいいや、その時渡せると思うから・・・あたしはいないかもだけど、それならカズに預けとくからもらってね。それで総くんと仲直りしておいで。余計なお世話かもしんないけど、カレシの立ち直りののきっかけくらいは作ったげてもいいっしょ?」
「ハイ!! ホントにありがとうございます。て、カレシじゃないですってば!!・・・でも、マジでいいんですか? なんか・・・悪いですね・・・。」
「ああ、もういいのいいの! まあ・・・アイツにカリ作んの正直ちょっと癪だけどいいわ、リョウちゃんのためだもんね。」
「アイツって・・・どなたに電話してたんですか? 知り合いのイベンターとか・・・まさかチケットの転売するナントカ屋さんじゃないですよね・・・?」
「あー、うん。本人だし。」
「・・・本人?」
「ふん。だから・・・ユウジ本人。ダチなんだよね~、実は。・・・ナイショだけど。」
「・・・へ?」
えええええええ――――――――――――――――??!!!!
思えば――みゆ希さんて局アナだもんね・・・。いくらユウジがテレビにはめったに出ないって言っても、それでもアタシたちパンピーよりは出会う機会は大幅アップだよね。でも、それにしても友達だなんて・・・。今までどうして教えてくれなかったの?!・・・なんて、文句言うわけにはいかないよね。仕事柄多くの有名人と近しいだろうけど、公私混同はできないもん。だから今回は本当に特別扱い中の特別扱い、特例中の特例だ。アタシはつくづく神様に感謝しました。なんてラッキー、ホントに今日ここへ来てよかった。神様ありがとう~!!
日曜日、みゆ希さんは約束通り店長に封筒を預けてくれていた。アタシはそれを三拝九拝して受け取って・・・逸る心を見透かされて早めにバイトを切り上げさせてもらって(正確には切り上げさせられて)取るものも取りあえず総くんの病室へ向かった。
あれから行ってないけれど、もう怒ってないことを期待しつつ・・・でも、怒ってたらこれでお許し願おうと祈る思いで、アタシはドアをノックしてからスライドドアを恐る恐る開き、中をそっと覗いた。
「こ・・・こんにちは・・・。」
「・・・ああ・・・。」
いつもながらの素っ気なさだけど・・・ダイジョブ・・・かな・・・。
「総・・・くん?」
と、アタシは中に滑り込んでまず頭を下げた。
「こないだはごめんなさい! アタシ、余計なこと言って余計なことして! ホントに申し訳なかったです。ごめんなさい!」
「あ・・・いや・・・。」
総くんはちょっと体を起こして
「オレも・・・ゴメン。ついカッとなって・・・悪かった。あのあと母さんに超怒られてさ・・・。」
「え・・・?」
アタシは顔をあげて首をかしげた。総くんは少しバツが悪そうで・・・且つちょっと照れている。
「いや、その・・・涼香がしょんぼりして出ていくの見たらしくて、それからここへ入ったら楽譜が散らばってんじゃん? で、何があったってスッゲー怖い顔で詰め寄るから状況話したら・・・オニ叱られた。『状況はどうあれ心配してくれる女の子を怒鳴る男はサイテーだ』って・・・。」
「お・・・おばさん・・・。」
普段ニコニコ顔が優しいあのおばさんが激怒だなんてちょっと信じられない。
・・・TO BE CONTINUED.
・・・なんのことやら。
アタシが茫然と見ていると、みゆ希さんはスマホを取り出して向こうを向くと電話をかけ始めた。
「あ~、モシモシ? 良かった、出てくれて! 今電話いい? あのね、ユウジ来月28日に神奈川でコンサートあるでしょ?・・・え? そうだっけって・・・それくらい覚えときなさいよ!・・・でさあ、チケット、何とかなんないかなあ~・・・。招待券とか手に入んない?」
エッ? 招待券?! みゆ希さん、何てことを・・・。あ、そっか・・・、テレビ局のアナウンサーだから何かとその方面に人脈あるんだ・・・。アタシは期待半分でみゆ希さんを見守った。
「あ~、うん。わ~かってるよ~。ホントはダメなんだろうけど、そこを何とか! こっちもちょっとワケありでね・・・申し訳ないんだけど、今回だけ特別に!! 車イスの人でね、通常の座席はキツイんだよ、だから~!」
みゆ希さんが食い下がっているところへ、店長が美佳ちゃんを抱きかかえて降りてきた。
「ほ~ら、涼香お姉ちゃんだよ。」
と言いながら。アタシは寝起きの美佳ちゃんに微笑みかけて
「こんにちは、美佳ちゃん!」
と声をかけた。美佳ちゃんは人見知りもせずニッと笑うとパパの肩におでこをくっつけた。思わず叫ぶ・・・
「や~ん、か~わ~い~い~~~~!!!」
ハーフである店長に似たのか、天然茶髪のふわふわの髪が揺れる。も~~~、超可愛い~い!!!! いいなああ~、赤ちゃんて・・・和むわあ・・・。どんなゆるキャラも赤ちゃんには勝てっこないない!! ああ・・・やっぱり今日ここに来てよかったよ・・・。だいぶ元気がでてきたもん! てか、ああ・・・アタシってホントに単純・・・。

みゆ希さんの電話はまだ続く。
「うん・・・そう、じゃあ・・・土曜日に。時間はまた連絡するね。うん・・・うん、申し訳ないっ! 恩に着るわ。このカリは絶対返すから! も、なんでも言うこと聞いちゃうから。え? あー、それはナシ、それはダメ、それ以外の方向で。あっはっは!! ハイハイ、よろしくね。・・・ああ、うん、はい、・・・あはは、そだね、あたしも愛してるよ~!」
え・・・?! みゆ希さん? そばにご主人さんいるんですけど~~!? て、みゆ希さんてば店長をチラ見して
「世界で2番目・・・3番目4番目5番目・・・・19番目くらいに!!・・・あはは、冗談だって! じゃね。ホントにありがとうね!! 一生恩に着るよ!」
と、締めくくった。そしてアタシに向き直ってピースサイン。
「よっしゃあ!! 喜べリョウちゃん、ユウジのコンサートチケット、なんとかなりそうだよ!! もち車イスでOK! 専用のブース席、なんとかしてくれるみたい、まだ決定じゃないけどね!」
「ホントですかあ?!」
アタシは思わず席を立つ! 普通でも嬉しいのに、場合が場合なだけに余計嬉しいよ! あ、美佳ちゃんちょっとびっくりしてる・・・。
「あは・・・美佳ちゃん、ごめんごめん! みゆ希さん、ありがとう!」
「イヤイヤイヤ、何の何の。・・・て、タブン、だよ、まだ。でも期待していいと思う!」
「大丈夫なのか? ホントはいけないんだろ?」
店長が尋ねると、みゆ希さんはさすがにちょっと困り顔で首をかしげた。
「ま、ね・・・。確かにホントはダメなんだけどね・・・だけど今回だけってゴリ押ししちゃった。だからリョウちゃん、ゼッタイ誰にも内緒で今回限りだよ。」
と、みゆ希さんは人差し指を唇に立てる。
「はい!! もちろん誰にも言いません!」
アタシは嬉しさ満面でうなずきまくった。ああ、言いたくなりそう・・・でも我慢!
「次、いつここ来る?」
「あ、えっと・・・日曜日です・・よね、店長。」
「ああ、昼から入ってくれることになってたっけ。」
「じゃあちょうどいいや、その時渡せると思うから・・・あたしはいないかもだけど、それならカズに預けとくからもらってね。それで総くんと仲直りしておいで。余計なお世話かもしんないけど、カレシの立ち直りののきっかけくらいは作ったげてもいいっしょ?」
「ハイ!! ホントにありがとうございます。て、カレシじゃないですってば!!・・・でも、マジでいいんですか? なんか・・・悪いですね・・・。」
「ああ、もういいのいいの! まあ・・・アイツにカリ作んの正直ちょっと癪だけどいいわ、リョウちゃんのためだもんね。」
「アイツって・・・どなたに電話してたんですか? 知り合いのイベンターとか・・・まさかチケットの転売するナントカ屋さんじゃないですよね・・・?」
「あー、うん。本人だし。」
「・・・本人?」
「ふん。だから・・・ユウジ本人。ダチなんだよね~、実は。・・・ナイショだけど。」
「・・・へ?」
えええええええ――――――――――――――――??!!!!
思えば――みゆ希さんて局アナだもんね・・・。いくらユウジがテレビにはめったに出ないって言っても、それでもアタシたちパンピーよりは出会う機会は大幅アップだよね。でも、それにしても友達だなんて・・・。今までどうして教えてくれなかったの?!・・・なんて、文句言うわけにはいかないよね。仕事柄多くの有名人と近しいだろうけど、公私混同はできないもん。だから今回は本当に特別扱い中の特別扱い、特例中の特例だ。アタシはつくづく神様に感謝しました。なんてラッキー、ホントに今日ここへ来てよかった。神様ありがとう~!!
日曜日、みゆ希さんは約束通り店長に封筒を預けてくれていた。アタシはそれを三拝九拝して受け取って・・・逸る心を見透かされて早めにバイトを切り上げさせてもらって(正確には切り上げさせられて)取るものも取りあえず総くんの病室へ向かった。
あれから行ってないけれど、もう怒ってないことを期待しつつ・・・でも、怒ってたらこれでお許し願おうと祈る思いで、アタシはドアをノックしてからスライドドアを恐る恐る開き、中をそっと覗いた。
「こ・・・こんにちは・・・。」
「・・・ああ・・・。」
いつもながらの素っ気なさだけど・・・ダイジョブ・・・かな・・・。
「総・・・くん?」
と、アタシは中に滑り込んでまず頭を下げた。
「こないだはごめんなさい! アタシ、余計なこと言って余計なことして! ホントに申し訳なかったです。ごめんなさい!」
「あ・・・いや・・・。」
総くんはちょっと体を起こして
「オレも・・・ゴメン。ついカッとなって・・・悪かった。あのあと母さんに超怒られてさ・・・。」
「え・・・?」
アタシは顔をあげて首をかしげた。総くんは少しバツが悪そうで・・・且つちょっと照れている。
「いや、その・・・涼香がしょんぼりして出ていくの見たらしくて、それからここへ入ったら楽譜が散らばってんじゃん? で、何があったってスッゲー怖い顔で詰め寄るから状況話したら・・・オニ叱られた。『状況はどうあれ心配してくれる女の子を怒鳴る男はサイテーだ』って・・・。」
「お・・・おばさん・・・。」
普段ニコニコ顔が優しいあのおばさんが激怒だなんてちょっと信じられない。
・・・TO BE CONTINUED.