ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

KAIGO.介護 巻の百二十五 ま~たまた来たぜOS病院

2011年11月17日 21時21分08秒 | 介護な日々
2010年4月13日

今日から久しぶりのOS病院暮らし。勝手知ったる・・・とはいえ、環境が変わります。
昼前に病室(結局やっぱり個室)に入り、お昼ご飯に。
完全にすりつぶしたドロドロ食のこのごろでしたが、これまた久しぶりに固形の食事です。
しかもしょっぱなハンバーグ、これまた久しぶりなメニューです。

・・・と、結構よく食べました。

食後はお昼寝タイム。そのうちシャワー浴のために起こされましたがご機嫌はよろしい。
それから心電図の検査へ。このあたりはまだまだご機嫌でした。
が・・・私が帰って交代で付き添いに来たちい兄によると、夕食タイムに入ると

たちまち不機嫌になったそうです。

「夜景(10階病棟なので)はきれいけど旅行(?)はこりごりや、早よ帰ろ」と何度も言いました。
歩かれへんのに・・・というと「なんで歩けんようになったんやろ」、
’07年後半から腰が曲がって直腸脱になって(「ウェー」と言った)
手首を骨折して(「覚えてる」と言った)
父の具合も悪くなって・・・・その後に肝臓が悪くなって昏睡がちになり
歩くどころやなくなった・・・と順を追っておさらいするとようやく納得したようです。
(いろいろあってんなあ~)
でも、しばらくしたらまた「帰ろ」の連発・・・・・
その後は主婦の会の話を中心に

「あんたに主婦の会の心配までさしてすまんねェ」とも。
10時の消灯時刻の前ごろには少し大人しくなったけれど
付き添いお泊りのちい兄に「あんたも早よ寝え」と言ってはまたおしゃべり。
ベッドの横には横になれる大きなソファやクッションマットが置いてあり
(おそらく付き添いさんが仮眠くらい取れるように
ゆったりした大きさの物をおいているのだろうと思われます。)
ちい兄もそこに寝転がったりしてたみたいですが
母が頻繁に首をもたげて見ようとするので落着かず
CDラジカセで音楽を掛けてちい兄はいったん廊下へ。
10時半ごろに覗くとようやく寝入ったようで、やれやれとほっと一息だったようです。

さあて、明日はカテーテル手術ですなあ。無事うまくいきますように。
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木枯し紋次郎~くわえた楊枝に憧れた・・・イマドキのアニメも??

2011年11月14日 06時52分27秒 | 気になるヒトビト
木枯し紋次郎 上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれたと言う
10歳の時 故郷を捨て その後一家は離散したと伝えられ 
天涯孤独の紋次郎が 何故 無宿渡世の世界に入ったかは定かでない
(嗚呼、芥川隆行さんのナレーションは素晴しかった!!)

いやあ・・・懐かしいですねえ。
ちゃちゃめは小学生でありながら大好きでした、紋次郎。
だってカッコいいもんなあ~クールでニヒルで”オトコマエ”やん?
「かかわりない」とか言いながら、結局悪い奴嫌な奴をやっつけちゃうわけやし。


1972年第一回放送の演出はなんと市川昆監督ですよ。
あの独特のカメラワークを駆使したオープニングの演出も市川監督ですよ。

主題歌は有名な「誰かが風の中で」、上条恒彦さんの歌ですが、
作曲はフォークシンガーというかシンガーソングライターの小室等さんです。
当時はフォークっぽい歌が時代劇の主題歌だなんて度肝を抜く出来事だったとも言われています。
ちなみに作詞の和田夏十(なっと)さんは脚本家で、何を隠そう市川監督の奥様その人です。

主役の中村敦夫さんのはまり役であり代表作であり、
ていうか紋次郎は中村さんでなきゃと言うくらいの一体感、
コロンボ役はピーターフォークしかありえない、と同じくらいのはまりようでしたよね。

もともとは演出家を目指していて、自身も俳優業をこなすようになりつつあった頃だそうです。
なんか、この作品の演出にも携わろうとしていて、
そして当初は別の俳優(田宮二郎さんだったとか)に配役をふるつもりだったけど、
なんだかんだとスタッフみんなでもめにもめた挙句「君がやれ!」という偉いさん(市川監督)の鶴的一言で
思いがけず中村さん自身が主人公をする”破目”になったのだという話です。
(中村さん自身のそんなお話をどこかで読みました)
・・・さっすが偉いさんはエライ!!
 
とにかくいろんな意味で画期的な作品で、時代の流れにも乗った偉大な作品でありました。


で、主人公の紋次郎ですが・・・

基本的には自閉的で他人に気を許さず、誰も信じない。昨日もなければ明日もない。
もちろん夢も希望も持っていないし、目指すものも愛するものも守るものや守りたいものもない。
イデオロギーもなければ生きがいもない。そして・・・だけれど絶望もない。
ただ、そういうポリシーやアイデンティティーはあるのかも知れませんが。
ある意味達観しているのか、それとも悟りきっているともいえなくないですね。

でも、時々何かを信じてみようという気になるみたいで、
少しばかり誰かのために動いたり守ろうとしたりしますが・・・
結果、その行動と思いは裏切られ「やっぱりそんなものだったのか」と再び心を閉ざして
また何も信じない日常に還っていくという感じでした。
脱サラ、無関心、シラケ世代なんていう世相を映したこの作品はまさにこの時代の鑑だったのでしょう。
でも、裏切られてもまた信じてみようと思うんですねえ、これが。
そのあたりにわずかな希望があったといえるのでしょうか。
時代背景の影響と言うのは大きく、その後同じ中村さん主演で続編というか
「新・木枯し紋次郎」が1997年に製作されましたがやっぱりイマイチでした。
安保闘争の時代だったからこその紋次郎だったのかもしれません。

ま、ちゃちゃめは単純にクールでカッコイイから好きと思ってただけでしたが!!〈小学生やし)

ところで・・・↓これを覚えておいででしょうか、皆様。

桃屋さんのノリの佃煮「江戸むらさき」の人気アニメCMでしたね。
キャラはご存知三木のり平さんのアニメ化。
いろんなシリーズ作品がありましたが、ちゃちゃめはこれだけはしっかりはっきり覚えてます。

『縞の合羽に三度笠 ニヒルな男もお昼になれば おなかの虫がぐうと鳴く・・・』
木に吊るされた娘「紋ちゃーん、たすけてー!」
のり平紋次郎「あっしにはかかわりのないこと」
娘がおにぎり(ごはんを盛ったお茶碗だったかも)と江戸むらさきを差し出して見せる
のり平紋次郎「・・・ではないようで」
『楊枝くわえた紋次郎・・・』
楊枝を飛ばして縄を切ってやる・・・落ちる娘、紋次郎が受け止めたのはおにぎりと江戸むらさき。
のり平紋次郎「ヨウジがあるのは・・これ!」

・・・オヤジギャグかい!・・・


てことでさてやっとお題の話。

パロCMはともかく、あのラストシーンの楊枝飛ばしは特に人気でした。
毎回今回は何を的にするのかな・・・と、楽しみに見たものでした。
時代考証的には、実際にその時代の楊枝は15センチくらいはあったものらしいです。
ドラマでは演出のためにさらに長い物をくわえていましたが、さほどおかしな長さでもなかったそうな。
ま、人間、なんか口にくわえるのは好きなもんですよね。
いまだにどこか紋次郎を引きずってるのかな、というアニメキャラクターがちらほらいたりします。
常にくわえ煙草のキャラはその最たるものではないですか? 「銀魂」の土方十四郎とか。

「ONE PIECE」のサンジとか。

煙草じゃないけど千本と言う忍具を常にくわえている「NARUTO」の不知火ゲンマとか。

・・・あ、中の人、サンジと同じだ(平田広明さん)。
「封神演義」の黄天化(こうてんか)なんかも・・・

ホンマは原作では煙草なんですがアニメでは大人の事情で小枝になってます。

他、アニメ化はされてないですが、石ノ森章太郎先生作品の「鉄面探偵ゲン」のゲンは
探偵業のかたわら屋台のおでん屋を営んでいたから、タコの足を常にくわえていましたわ。
(・・・なんやそら)


「ドカベン」の岩城も常に葉っぱのついた小枝をくわえていましたし、
「銀魂」の銀八先生はれろれろキャンディー、
「スケット・ダンス」のヒメコはペロキャン・・・
おお、「ぬらりひょんの孫」の天邪鬼・淡島がくわえているのはもしかして楊枝では?


くわえた物を吹き飛ばすのは紋次郎とゲンマくらいですけど。
・・・てことは紋次郎を最も引きずっているのはゲンマですか???

・・・・そらいくらなんでも牽強付会ですわね。
コメント (2)
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創作小説 SUNSET CHAPTER11 PART.4

2011年11月13日 00時31分12秒 | 創作小品
 結局私は夜になって兄さんに電話をかけた。もう何を話していいかわからないけれど、じっとしていられなかったから・・・
「もしもし、兄さん? 私…和佳菜です。」
――ああ…今年もヨロシクな。
あ、すっかり忘れてた・・・いろいろあったから…今日元日なのよね。あれ? 兄さん、声が少し変? 気のせい?
「あ、あの、こちらこそ…。それでその、えっと…。」
――・・・あの人、来たか?
「うん。あ、ありがとう、兄さんが行ってやってくれって言ってくれたんでしょう? お父さんを通して。」
――ああ、まあ。・・・ゆっくりしてったか?
「うん。久しぶりに…。兄さん、お母さんにメッセージ送ったよね。」
――まあ…。お父さんに頼んだんだけど、渡してくださったんだな。
「うん。お母さん、すごく喜んでたよ。ホント…泣いて喜んでた。きっと行くって。兄さんにそう伝えてって。」
――そっか。わかった…。
「兄さん、大丈夫? あの・・・私・・・。」
――ん?
「私も…そっちへ行きたいんだけど…。」
――お父さんに行くなって言われなかったか?
「それは…。でも兄さん、話を向けただけで気分が悪くなったりしてたでしょ。だから…もし何かあったら…。」
――大丈夫だよ。心配してくれるのは嬉しいけど、来なくていい。てか、来るんじゃないぞ。
「でも…兄さん、あの…兄さん、前に・・・10年前だっけ…お母さんに会った時、大変なことになったんでしょ? またそんなことになったら…。」
――聞いたのか? そのこと…
「うん…。お母さんに…全部聞いたの…お母さんと兄さんの間にあったこと、全部…。」
 兄さんはすぐには答えなかった。話を聞いただけの私ですら重苦しさに息が詰まりそうになったその真実に、当事者である兄さんはどんな思いを抱いてきたのか、そして、兄さんにどう声をかけていいのか、…私にはわからない。
 でも、兄さんは淡々と
――そうか…。まあいい…。いや…大丈夫だよ。とにかく来るなよ。
「でも…。」
――いいから! 約束だぞ、絶対来るな。これは俺の問題なんだ。
「兄さん! 私は関係ないって言うの? 私は妹よ、半分しか血はつながってなくっても、お母さんは同じじゃない。そのお母さんとのことなんだから、関係なくないわ。」
私は思わずそう言ってしまった。でも、本当に心配だったのだ…。兄さんは少し語調を弱めて
――…そうだけど…そうじゃないんだ…。…とにかく来るんじゃないぞ…。
「兄さん…!」
――約束したからな…。…それがすんだら一度お前のところへ顔出すよ。お父さんによろしくな。じゃあ…
「待って! 兄さん!」
――…まだ何か用か?
え…?? 兄さん、何だか今日は冷たい気がする? …のは気のせいかしら…
「あ、えっと…ごめんなさい、何か私…兄さんを怒らせるようなこと言っちゃったかしら? なんだかいつもの兄さんじゃないみたいな…。」
――悪い、そんなつもりはないんだけど。そう感じたなら謝る。悪かったな。
「ううん! 私のほうこそ変なこと言っちゃったかな…。なんか声の調子が違うように思ったから…。」
――何でもないよ。大丈夫。また連絡するよ。…切るぞ…。お休み。
「う、うん…。お休みなさい。」
 私はそれ以上何も言えなかった…。でも、やっぱり兄さんは私がすべて聞いてしまったと知って、心穏やかではいられなくなったみたいだ。やっぱり私は兄さんを放っておけないと思った…。


 電話を切って俺は深くため息をついた。理由はいろいろ。あの人が要請にこたえて和佳菜たちと一緒に正月を過ごせたのにちょっと安堵したのと、和佳菜が――当然お父さんもだろうが――すべて知ってしまったと聞いて気分が重いのと、それからまだ下がりきらない熱のせいと…。
 掛かってきたのはケータイ、ここは店の奥のキッチン。時刻は午後7時半。傍にはまだみゆ希がいて、俺が和佳菜と話しているのをに聞いていた。
「今のもしかして妹さん?」
「ああ。」
俺は短く答えた。
「かわいい? お兄ちゃん的に。」
「そりゃまあ…。うん、いい子だよ。」
「そう。それは良かったね。でも、お兄ちゃん何だか冷たいぞ~!」
「そうかな…。」
「だって、来るな、来るなって。心配させといてそれはないでしょ~?!」
「それはそうかもだけど…。」
「…会うの? お母さんに。」
「……まあ…。」
みゆ希は今の電話でだいたいのことを察したようだ。
「そっか。でも、ダイジョブだよ、きっと。カズなら。今度はきっと絶対大丈夫だよ。」
「そう思う?」
「もっちろん!! 大丈夫、カズは強いよ。あたしが保証したげる。」
「…俺はヘタレだよ…。現にお前に頼りきりだ。」
「なあにをおっしゃいますやら! でなきゃ向き合う覚悟なんて決めらんないって。でも、万一へこみまくったら、あたしが後で慰めに来たげるからね。ぶつかっといで~!」
 まったく、みゆ希は俺が言わないうちにそういって自分の元気を分けてくれる。コイツの元気玉は一人でいったい何人分の大きさがあるのやら、だ。でも、その心遣いが俺には本当に嬉しくありがたい。
「なんとか頑張るよ…。それよか、ごめんな。せっかく来てくれたのに、俺ってばこんな体調で、ろくすっぽ相手にならなくて…。看病だけさせて。」
「ホントだよ~!! 今回こそ! 勝負パンツだったのにい~!! せっかく一晩二人っきりだったのにい~!! 悔しい!! この次いつチャンスあるのかわかんないよお~!」
と、みゆ希はあからさまにいやみったらしく言った…。イヤ、確かにめちゃめちゃ惜しい。でも…
「ごめん。ホントふがいない…。今度は…俺がお前んち行くかな。…いいのかな?」
「うお!! その手があった!! うんうん! ぜひ来てよね!! こうなりゃ毎日勝負パンツだわ」
「おいおい…。」
そう言っていただいて喜ぶべきか、引くべきか…。ああ、コイツって…。

 「んじゃあ、あたしそろそろ帰るね。大人しく寝てるんだよ。」
「うん。ありがとな…。そうそう、明けましておめでとう、今年もよろしく。」
俺はバカ丁寧にそう言って頭を下げた。みゆ希も姿勢を正して
「あ~! おめでとうございます! こちらこそもっとヨロシク!! あはは、忘れてた、お正月だったんだよね~。」
「そうだ、年賀状…。ポストのぞくのも忘れてた…。」
「はなからお正月気分ヌキだったね…。」
 まったく。苦笑いしながら店に出て、ポストをのぞいたら、輪ゴムでくくられた葉書の束が見つかった。結構な量で・・・。
「あらら、いっぱい来るんだ~。これも人徳だねえ~!」
「それほどでもないけど…律儀な人が多いんだよ。」
「すみませ~ん!! あたし出してないかも~!」
「いいよ、本人が来てんだから。」
「イヤイヤイヤ! 帰ったら書くわ、絶対。…うん? カズはあたしに出してくれたの?」
「ああ、一応。」
「すみませ~ん!! ごめんなさあい!」
みゆ希は45度の角度でアタマを下げた。大げさなんだから。
「じゃあまあ、楽しみにしとく。」
「うん! それじゃあね。」
「ごめんな、送ってもやれなくて。」
「いいからいいから! あたしは十分楽しかったよ。また来るね。皆さんにもヨロシク!」
「ああ。」
 でも…俺は帰りかけるみゆ希の肩をつかんで引き寄せ、抱きしめて唇をあわせた。みゆ希もすぐに応えてきて、何度も向きをかえ、離れては求め合い、名残を惜しんだ。やっと離れてからみゆ希はいたずらっぽく笑って
「うん、ちょっと熱下がったみたいだね。良かった。熱いのもそれはそれでよかったけどさ。文字通りの熱~いキスでね。」
「…ナニ言ってんの、お前…。」
恥ずかしげもなく…こっちが恥ずい…。
「じゃね。」
最後に満面の笑顔でみゆ希は帰って行った。俺はドアのところで見送りながら、心の中でもう一度ありがとう、と礼を言った。



・・・TO BE CONNTINUED.
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創作小説 SUNSET CHAPTER11 PART.3

2011年11月12日 21時31分05秒 | 創作小品
<しばらくアップするの忘れてました・・・ずいぶん間があいてしまってすんまっせーん(謝)
 前回は10月3日アップでした。・・・続けてアップしますのでよろしくです。>


 何てことなの…・
私は何も言うべき言葉が見つからなかった。今まで、兄さんは一言もそんな話はしてくれなかった。ううん、少し違う。きっと兄さんも話せなかったんだ・・・。口にすることがとてもじゃないけど出来なかったんだ。
 お母さんはすべて話してくれた。兄さんのこと――兄さんの父親は誰だったのか、何があって生まれたのか・・・どうして兄さんを施設に預けて…しかも一度も訪ねなかったのか・・・それから兄さんが放浪していた理由――これはお母さんも知らなかったことだけど、その原因はほぼ間違いなく知ることが出来た――。とにかく、全部。そしてわかった。兄さんが言ってた、身体が全身で拒絶すると言った意味。あれはたとえなんかじゃなかった、本当のことだったんだ…。
 私はもう悲しいやら辛いやら、何に対してかわからない悔しさや怒りや…そういったすべての負の感情でいっぱいになってしまった。とにかく…とにかく兄さんはなんてすさまじいものを背負っているのだろう?! なんてまがまがしく重い荷物を背負っているのだろう? ・・・それなのに、どうしてあんなに優しいんだろう・・・。私は何も知らずに兄さんに甘えているばかり。兄さんはきっと、今も苦しんでいるの違いないのに…。
 父さんは――父さんももちろん、この話は初めて聞いたに違いない。難しい顔で腕を組んでうつむいている。でも、私が涙ぐんだのに気づいて、そっと腕をほどいて肩を抱いてくれた。それから父さんはかすかに微笑んで口を開いた。
「大変だったね、美和さん。いや、よく話してくれた。」
お母さんは驚いた顔を上げた。お母さんも涙を浮かべていて、顔を上げた拍子にそれが転がり落ちた。父さんは優しい笑みを浮かべている。
「確かに・・・僕もそれはひどいことをしてしまったなと言わざるをえない。でも、過ぎたことは悔やんでも仕方がないよ。それにあなたはそれを背負い込んでるんだよね。逃げないで、ずっと忘れずに背負って生きる覚悟でいるんだろう? ・・・僕は思うのだけれど、美和さん、和行君はそれをきっとわかっていると思う。あなたの覚悟はとっくに知っているよ。僕も知った。ワカも知った。こういうのは一人で持つとホントに重い。でも、皆で持てばきっとそうでもないよ。…あなたも自分ひとりで抱えるのはやめて、僕たちにも任せてみないか?」
それから父さんは私に言った。
「いいよね、ワカ。今の話でワカはお母さんが嫌いになったか?」
私はもちろん激しく首を横に振る。
「だよね? 僕たちは美和さんの味方だよ。ずーっと辛い思いをし続けていたんだよね、美和さん。僕が気づいてあげるべきだったのに申し訳ない。」
「いいえ! いいえ、そんな・・・あなたが謝ることじゃないのに・・・。」
「いや、夫のクセに、あなたに強引に結婚を申し込んだクセにわかっていなかったのは失格に等しいよ。だからこれからは何でも話してよね。だから…はい、これ。」
 父さんは胸のポケットからさっきの紙切れ――兄さんからのメッセージを取り出してお母さんに渡した。お母さんはそれをこわごわ開いた――
 みるみるうちにまた涙がわいて流れた。それが悲しいものではないことは私にもすぐわかった。お母さんはハンカチを取り出して目を抑えその紙をテーブルに置いた。
「私も見ていいの?」
「ああ。いいと思うよ。」
父さんはそう言ってその紙をとって私に見せた。そこに書かれているのは――
 『あなたと会って話がしたい。
  良ければ1月4日午後1時、湘南海岸の西側にある小さな浜へ来てください。
  江ノ島の前の海岸通を西にまっすぐ、駅から20分ほど歩いたところです。
  道沿いにSUNSETという名の喫茶店があります。そこが私の店です・
  そのすぐ前に浜に下りる階段があります。私はそこであなたを待っています。
  ずっと待っています。』
 メッセージはそれだけだったけれど…兄さんの気持ちは何も書かれていないけれど、それだけで十分にお母さんには嬉しいものだということは明らかだった。
「兄さん・・・! お母さん、良かったね! 兄さんが会いたいって! こないだは会いたくないって言ってたけど、今度は自分から会いたいって言ってくれたじゃない!」
私は本当に嬉しくなった。兄さんのどういう心境の変化かはわからないけど、やっぱり兄さんはいろいろ考えてくれてたんだ。お母さんも何度も頷いた。
「ええ、ええ・・・。」
「良かった・・・。父さん!」
「うん、良かったよ・・・。」
父さんも嬉しそうだ。
 でも・・・私も思わず喜んだけど、本当に大丈夫なんだろうか? あれほど強く拒否した兄さんが・・・理屈じゃなく身体の不調まで引き起こされるんだと言ってた兄さんが・・・。こないだ話していた時も、確かに少し気分が悪そうだった。私が相手で、話題にしただけでも辛そうだったのに、いきなりお母さん本人と話が出来るんだろうか・・・。私はにわかに心配になった。
「父さん、私もお母さんについて一緒に行くわ。」
私は兄さんが心配だったし、それにお母さんのことも心配になったのでそう言った。しかい、父さんは首を横に振った。
「ワカ、気持ちはわかるけど行っちゃだめだ。」
「どうして? 私、兄さんの邪魔をしようっていうんじゃないのよ、ただ――」
「行くだけで邪魔になるんだよ。和行君もね、きっとワカがついて来たがるだろうけど来させないでくれと言ってきたよ。」
「ええっ…。」
兄さんが…。大丈夫なんだろうか・・・いろんな意味で。それともそうして自分を追い込んでいるんじゃないのかしら…。
「いいかい、心配なのはわかるけど、ここは和行君に任せなさい。絶対行っちゃダメだよ。」
「うん…。」
 大丈夫? ホントに・・・?

 それから後、私たちは久しぶりに親子三人夕食の鍋を囲んだ。ここに兄さんが加わってくれる日がもしかしたら近いのかな? それとも兄さんは…やっぱりお母さんを受け入れてはあげないんだろうか。あの状態では何とも言えない。それに、今日初めて聞いた真実の話…。
 私は何とか気を取り直して笑おうとしたけれど、やっぱりその話が重くのしかかって、胸がつかえて仕方がなかった。兄さんはこんな辛い思いをずっと抱えてきているんだ。それなのに私には・・・ううん、きっと兄さんは誰にも優しいと思う。それはそういう辛さを知っているから、苦労して生きてきたからなんだろう。そういう人ほど、ヒトには優しいっていうもの。
 お母さんは久しぶりに楽しかったと言って、満面とはいかないけれど一応笑顔で帰って行った。今、お母さんは埼玉県の熊谷市に住んでいる。ここ、佐久市と以前兄さんがいた横浜市と、中間に位置するところにいたいということだった。熊谷なら長野新幹線に乗れば案外近い。佐久平で降りてここまでは路線バスですぐ来れる。そういうと、お母さんは私たちのことも十分気にかけてくれているのは確かだ。兄さんは横浜じゃなく藤沢市だからもう少し遠かったわけだけれど、お母さんとしては横浜がよりどころだったんだ。
 今日の話じゃ、10年前に兄さんを訪ねてから一度も会っていないみたいだし、その後も兄さんが今どこにいるのか知ることも出来ず、ただ、私たちの話を聞いて、元気で暮らしているということだけを支えにしていたのだと思う。
 可哀相と言っていいのかどうかわからないけれど・・・お母さんも可哀相だ…。もし私がお母さんの立場だったらどうだろう…。
確かにお母さんは兄さんにひどいことをしたかもしれないけれど、無理もないとも思える。もちろん、何の罪もない兄さんにしてみれば理不尽この上ないことなのだけれど。では、だからって、その…兄さんの父親に当たる人を非難してすべてその人が悪いんだと否定することも完全には出来ないように思う。だって、その人がいなければ兄さんも存在していないのだから。兄さんの一番の苦悩はそこにある。その人を非難することは自分の存在を非難することにもなってしまうのだから…。私なら…私ならどうしただろう、どう思っただろう…。
 ダメだ、想像もつかない…。
 私は本当に心配でたまらなくなった。兄さん、大丈夫かな…お母さんとする話って、すごく重く辛いことだろう。心が引き裂かれるようなことだろう。壊れないよね・・・お母さんも平気ではいられないだろうに・・・。どうしよう、どうすれば…。


・・・TO BE CONNTINUED.
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ダァホ!なPC・・・

2011年11月09日 22時12分10秒 | 徒然雑記&連絡帳
いや! も~、このパソコンのあほ~~~~!!

古いのよ、ぼろいのよ!!!!
おかし~のよ!!!!!!!!!!!!!!

重いのよ、立ち上がるのがめちゃめちゃ遅いし変換は変やし、
せっかく書いた記事もコメントも勝手に飛ぶし!!!

嗚呼、はよ買い替えたい・・・・・。

最近忙しいです、更新したいのにできません、4949。

もう少しこのPCの動作が速ければちゃちゃっとできるんやけど、
なにしろ立ち上がるのに15分以上かかる、
なんやと思うたらなんか更新をインストールしとるけど、
これがまためちゃめちゃ時間かかるし、
バックグランドでやってるうちオモテの動作もめちゃ遅いし・・・
で、時間がかかっているうちにもうこんな時間かよ!になってます・・・。

ぷぎゃ~~~~!!!!

オマケに最近病院通いしております・・2週間おきに検査ばっかし受けてますねん。
たいしたことはなさそうなんですが・・・・

と、書いてるそばから、またPCの調子がおかしいよ~~~~!!!
もう、このPCめ!

「廊下にたってなさい!(By銀八先生)」


ぐだぐだな記事ですんません(今のちゃちゃのアタマのなかと同等です)
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