ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET CHAPTER11 PART.5

2011年11月22日 23時45分21秒 | 創作小品
 ホントに、来てくれて良かった。思わぬアクシデントというか、一人きりの時にインフルエンザになどかかってしまって参ったから…というのももちろんあるが、それでなくてもちょっとナーバスになっていたからというのもある。病気はしかたないが、ほかのつまらないこだわりは案の定きっちり吹っ飛ばしてくれた。まだからだは回復しきらないけど、なんとかあのヒトと対峙する覚悟はできている。いや、覚悟が出来たから和佳菜のお父さんに頼んだのだけれど…。
いや、やっぱ違うな…頼んでしまえば覚悟を決めざるをえなくなると思ったのだ。だが、頼んだあとも本気で覚悟できたかと聞かれると、実際は微妙だ。そのぐずぐずと決まらない弱気を、みゆ希はわけのわからないパワーで吹き飛ばしてくれた。
 ああ、やっぱ絶対俺は一生アイツの尻に敷かれる。間違いない…。これって惚れた弱味っていうのかな。…いいや、アイツに勝てる男はそうそういない気もする…。
 あれ? それにしても年末年始も仕事で、その合間に俺のところへ来ていて、ついつい俺は自分のことばかりで失念続きだけど、アイツにだって家族はいるはずだ。行かなくていいのかな・・・正月なのに。連絡くらいはするだろうけど。あとで改めてメールででも詫び入れとかなくちゃ。
 さて、ともかく俺は早いとここのインフルエンザを治さなくちゃならない。まったく散々な年末年始になったもんだ…。


 僕が帰ってきたのは1月3日の夕方。今年、こんなに楽しい年末年始が過ごせるなんて思わなかった! 初めはそりゃちょっとびびったけど…人見知りするほうだし、でも、全然心配要らなかった。兄さんのお義父さんお義母さんはものすごく楽しい人たちだったし、実玖ちゃんにはこの前会っている。初めから僕も引き込まれて、なんだかずっと一緒に暮らしてきた錯覚に陥ったほど。僕の実の両親――よく覚えてはいないけど仲良しだったのは確かだ――とはたぶんかなりタイプがちがうと思うけど、でも、懐かしい気がした。実玖ちゃんも、うちではすごくしっかりしていて、まるで実玖ちゃんのほうがお姉さんみたい。その点でも、かつていた実のお姉ちゃんとかぶるところがあって、だから僕も意外にすんなりなじめたのかもしれない。
 でも、考えてみればこれみんな井上さんのお陰だ。あの時僕を拾ってくれたから、今回だって気軽に行ってこいと言ってくれたからだ。僕はどれだけ彼に感謝しなければならないだろうか。お礼のことばなんてもうとっくに思いつかなくなっている。せめてもの気持ちにと、期待された?お土産だけはしっかり買い込んだ。もっとも、三上のお父さんやお母さんからもあれこれ持たされてしまったけれど。
 だけど正月気分以上の浮かれ気分で帰ってきたら…迎えてくれた井上さんはちょっとだるそうで、おまけに咳をしていた。
「あれ? 井上さん、風邪気味なんですか?」
「いや…むしろ治りかけ。大丈夫だよ、咳が少し残ってるだけだから。」
そういったけれど、少々顔色は冴えない気がする。でもそれは置いてまず、
「行ってよかったみたいだな。顔見りゃわかるわ。」
と言ってくれた。
「はい! 向こうのご両親ってすっごく楽しい人たちで、僕もすぐ慣れました。兄さんがあんな風なの、良くわかりましたよ。お正月から親子でテレビゲームで4人対戦大会なんかやるんですよ。Wii使って…。びっくりしましたよ、一番上手なのがお母さんで、一番ヘタなのがお父さんなんですから。」
「へええ、そりゃ面白い。」

「僕もやらせてもらったけど…あんな楽しいお正月は初めてでした。ありがとうございました。」
「はあ? 俺は礼を言われる覚えないけど。」
「だって井上さんが行かせてくださったんですから! もともと井上さんが僕を助けてくれなきゃ兄さんたちに会えることもなかっただろうし…今年こんな風に過ごせるなんて、僕、去年の夏まで夢にも思ってなかったですよ! またどこかで半ホームレス状態だったかもしれないのに、雲泥の差です。みんなそれ井上さんのお陰ですから! だからありがとうございます!」
僕は改めて頭を下げたけれど、井上さんは例によって苦笑いするだけだ。
「よせってば。タマタマだよ、タマタマ。」
「タマタマでも、です。ストレートにお礼言われてください! それからお土産…三上家からもたくさん持たされちゃった…。お目にかかりませんけど、ヨロシクって。」
そう言って僕は、大方はお菓子だと思うけど、お土産の箱を山と積み上げた。重かった~。
「うわ…。よく持って帰れたね。当分うちのコーヒーは正月限定茶菓子つきにしなきゃだな。」
「あはは、それがいいですね。」
「東海大のバカが来たら一瞬て気もするが…。ああ、三上さんに電話でもしとけよ。俺も土産もらって礼を言ってると伝えといてね。」
「はい、夜にでもかけます。」
 夕食の後くつろぎながら、僕は調子に乗って向こうであったいろんなことを話した。みんなで明治神宮に行ったこと、東京の名所を案内して貰ったこと、三上家の親戚の人に会って、みんながみんなびっくりして…でも、親しくしてくれたこと、それから三上家のもう一人…じゃないもう一匹の家族、白ネコの三上さくらちゃん(メス4歳)のことも…。


・・・TO BE CONCLUDED.

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