ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET CHAPTER 6  PART.1

2010年08月25日 10時22分43秒 | 創作小品
 突レポの余波というか影響というか、アイツのお陰?というかはまだ続く…。やっぱテレビって恐ろしい…。

 その人がやって来たのはマキが来た数日後。立て続けに二人が飛び込んできたけれど、今度のヒトは静かに、普通にやって来た。…また涼香に突っ込まれそうだが今度も女性。ただ少し違うのは、テツもちょっとだけ知っている人で、この近くに住む人だということ。そして、静かな人だということも、違いといえば違いだろうか。
 「こんにちは…、ご無沙汰しました。」
と、まず言うところからして違う。涼香が不信感を抱くような登場の仕方ではない。
「リサ…さん、しばらく。」
俺もちょっと驚いて彼女を見つめ返した。涼香は当然知らないので、今回は不審そうではないけれど、好奇心いっぱいの顔で彼女を迎えた。
「…いらっしゃいませ…。」
「こんにちは。」
リサ――一応『さん』をつけようか――さんは涼香ににこっとして挨拶をした。そしてカウンターに腰掛けながら
「最近入ったバイトさん?」
と尋ねた。涼香は微笑み返して答える。
「あ、いえ、1年くらいになりますけど…。」
「そうなの。ごめんなさい。私がずいぶん久しぶりなのね。ほんと、何年ぶりかしら? ちょっと懐かしい…。」
と、店内を見回し、同じく店員の格好をした清司にも会釈した。
「でも、カズちゃんはあまりかわってないかな?」
…涼香の視線がまたちょっと厳しくなった気がする…。俺はそっぽを向いた。
「ご注文は?」
声がちょっと怒ってる? 何故か涼香は俺の知り合いの女性が来ると少々不機嫌になる。別に俺のこと意識してるとかそういうんじゃないくせに。なんでだ? 息子の彼女が気になる母親的了見?
だがリサさんは何も気に掛けず
「レモンティーください。」
と答えた。
 涼香は俺に、このヒトとはどういう関係?と聞きたそうなカオを向けた。はいはい、いちいちめんどくさい奴だ…。
「先代マスターの担当看護師さんだよ。」
「え? 看護師さん?」
涼香はちょっと意外そうに返した。
「ええ、そう。ずっとお世話させていただいてたんですよ。ここへもよく来たし…。」
「先代のマスターさんって…入院とかされてたんですか? あ、そっか、亡くなったってことは…最期はだいたい病院で亡くなりますもんね…。そのときの。」
とりあえず涼香は納得したらしく、俺に不信そうな目を向けるのはやめた。……だからなんでなの? 涼香ちゃん?
 リサさんは小首をかしげて答える。
「ん…まあ、そうですけど…もっと前からですね。マスターは亡くなる前はちょっと長く入院されてましたから。」
「そうなんですか。そういえばアタシマスターさんのことはほとんど知らないなあ…。店長、どんな方だったんですか?」
「ん~~~~…一言で言えば変人。」
「変人?!」
「もっと言えば頑固親父、意地っ張りで子どもみたい、気分屋、怒りっぽい、喧嘩っ早い、口が悪い…。」

「カズちゃん、だめよ悪口ばっかり言っちゃ…。」
リサさんが俺をたしなめて軽く睨んだ。けど、すぐに笑って
「その通りだったけど。でもホントは照れ屋でお人よしで寂しがり屋で親切で優しくて涙もろくて…、オトナなのか子どもなのかわからなくて…そうね、カズちゃんが歳をとったらきっとそっくりよ。」
「やめてくれ…。」
俺は辟易して言ったが、涼香は何故か大きく頷いてやがる。
「なんとなくわかりました!」
「おい…。」
 その時テーブル席にいた初老の客――マスター以来の常連客のひとりである美作さんが、こっちへ向かって声をかけてきた。
「リサちゃん! 随分久しぶりだねえ、元気でやってる?」
リサさんは振り返ると初めて気づいたらしく、ぱっと笑顔になった。
「あら、美作さん! お久しぶりです。ごめんなさい、気づかなくって。ええ、おかげさまでなんとかやってます。」
「病院勤務もたいへんだろ? 主任くらいにはなったのかな?」
「いえ、まだ副主任です。」
「嫁には行った?」
「残念ながらまだなんですよ~。いい人いません?」
冗談めかして言うリサさんに、美作さんはニヤニヤして俺の方を指差して
「ナニ言ってるの、カズちゃんがいるだろうが!」
「そ…そんな!」
リサさんはあわてて手を振る。
「私なんて相手になりませんって。ねえ! 好みじゃないでしょ?」
「たきつけないで下さいよ、美作さん! 私はまだそういう身分じゃありません。」
俺も苦笑いしながら首を振る。美作さんは更にからかうように
「身分なんてあるかい! さっさともらってあげな。」
「イヤイヤ、私に彼女はもったいなさすぎますよ。」
俺はさらっと流した…。
「そうかい? 似合いだと思うぞ~?」
「からかわないで下さいな。だいいち私の方がカズちゃんよりだいぶ年上ですもん。」
リサさんはなんとかいじわるじいさんの追及を逃れようと試みている。
「歳なんか関係ないだろ? どっちが上で、どんだけ離れてても。愛があればってやつさ。」
まったく、じいさんはしつこいぜ…。
 涼香がそこで助け舟を出すように(ホントはこの話を続けさせたくなかったのか?)、話をそらすように尋ねた。
「あの、その…マスターさんですけど、結構お年だったんですよね? そんな年配の方が現役で喫茶店やってらしたって凄いですね。」
「ああ、いや、年はそんなに…カズちゃん、マスターいくつで亡くなったんだったかね?」
「享年58歳でしたよ。実年齢なら57…でしたかね。」
「そうですわ。まだ…五十代でいらっしゃったもの…。」
「ええーっ、ずいぶん若くて亡くなられたんですね…。」
涼香はトレーを胸に抱えて、ちょっとしんみりした顔になった。
「ウチのお父さんで50歳だから…。…やっぱ若すぎます! よほど重いご病気だったんですね。」
リサさんが頷いて答えた。
「ええ…。胃がんでしたの。胃がんは発見が早ければ治癒率はかなり高いのですけれど…。一度は治られたんですが、再発してとうとう…。」
「そうだったなあ…。」
みんなしんみりしだした。無理もない。俺だって…ものすごく悲しんだからな…。

 と、いうわけでここの昔話でもしようか。

・・・TO BE CONNTINUED.

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« KAIGO.介護 巻の四十 VS... | トップ | KAIGO.介護 巻の四十一 心... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

創作小品」カテゴリの最新記事