■旅の初日は福島県「いやさかの湯」と「あゆり温泉」
2024年10月3日、福島県矢吹町の食堂「いやさか」に来てしまった。
ここの自家温泉、「いやさかの湯」がお目当てだ。何だかすっかり気に入ってしまい、今回でかれこれ3回目の入浴である。
食事をすれば無料で入れるサービスがうれしい。
生姜焼き定食を食べて、さっそく温泉へ。
まずは露天風呂へ直行した。
先客はおじさんがひとり。
10月だというのに冷たい風が肌を射す。
暖かい湯が体に沁みる。
思わず、フ~と声が漏れる。
露天風呂がきもちいい
内 湯
食堂裏の駐車場からみた温泉施設 この寂れた感じがいい
生姜焼き定食 うまかった
店内のチラシ 食事すると入浴無料サービスが書いてある
「いやさか温泉」の前に、矢吹町の「三十三観音摩崖仏群」に立ち寄った。
隈戸川左岸の約10メートルの断崖に計37体の摩崖仏が彫られている。
薬師如来、阿弥陀如来、千手観音などが勢ぞろい。摩崖仏の風化と傷みは時が創ったものだ。
福島県内には摩崖仏が数多くみられる。
翌日行った福島市の「岩谷三十三観音摩崖仏群」もそうだが、
この辺り一帯の岩質がやわらかくて彫りやすいせいなのかもしれない。
もちろん信仰心の篤い人たちがいたからでもある。
矢吹町で新しい温泉施設をひとつ発掘した。
町営の「あゆり温泉」(入浴料400円)である。
地元の人たちに大事にされているのだろう、380万人達成とある。
温泉は無色透明で43度くらいの熱い湯だった。
広い畳の休憩部屋に客が5人ほど。座布団を枕にゴロリと昼寝。
昨夜は21時に自宅を出て、東北自動車道の上河内SAで車中泊(175キロ走行)。
そのせいで眠い。最近は車中泊がきつくなってきた。
年齢(とし)かな。
ザリガニがいそうな岸辺
■旅の二日目は赤湯温泉と小野川温泉
福島駅前の東横インを朝9時に出発。曇り。昨夜はよく寝た。
やはりホテル泊は身体が休まる。
まずは松尾芭蕉ゆかりの地、「文知摺観音普門院」へ。
文知摺観音は小倉百人一首の歌枕の地として有名。この地を訪ねた松尾芭蕉は
「早苗とる 手もとや昔しのぶ摺」
と詠んだ。
受付のおばちゃんによると、境内の拝観は無料で資料館は200円とのこと。
私のいち番のお気に入りは多宝塔だ。
多宝塔 朱が少しずつ褪せてきた
苔むした文知摺石
続いて岩谷観音・摩崖仏を訪ねる。
福島に来たらどうしても寄りたくなる。どうにも摩崖仏の風化が気になってしまうのだ。
3年前、仏様の顔部分が剥離・落下した現場に遭遇し、とても驚いた。
すぐに福島市教育委員会へ通報した。
現在、接着剤で元の位置に付けてあるけれど不自然さは禁じ得ない。
2024年10月現在の岩谷観音のようすをみると、やはり風化が進んでるように思える。
時のなすまま、それも歴史的遺産のあり方のひとつかも。
3年前に顔部分がすっぽり剥離した 剥離落下した顔面像
修復後の姿 不自然なのが歴然
■赤湯温泉へ
福島から山形米沢方面へ最短で行くには東北中央自動車道(無料区間)を利用するに限る。
大笹ICから入ると米沢北ICまでが無料区間となっている。
今回はその先の南陽高畠ICで降りて赤湯温泉「湯こっと」(400円)を目指す。
お昼の時間なので赤湯溫泉・名物のラーメンを食べに行くことにした。
湯こっとの駐車場から歩いて5分、「吾助」という店に入った。
和風だしの効いたラーメンだった(850円)。
ちなみに昨夜、佐野SAで食べた佐野ラーメンがうまかった。
出汁も太いメンマも焼き豚も縮れ麺も、どれとっても満足の一杯だった。
お腹も満ちたので「湯こっと」に戻る。
赤湯温泉には「烏帽子の湯」、「赤湯元湯」など小さな公衆浴場温泉が4か所あった。
しかし、「とわの湯」、「あずま湯」が老朽化のため閉鎖。
さっきのラーメン店前の「とわの湯」は、まさに解体工事の真っ最中だった。
「湯こっと」に施設集約したということだろう。
湯こっと まだ真新しい温泉施設だ
解体中の旧公衆浴場 とわの湯
■小野川温泉
米沢市に戻り、小野川温泉の外湯「尼湯」(旧滝の湯)を目指す。
ところが雲行きが怪しくなり、土砂降りの中を運転する羽目になってしまった。
風情ある日本旅館の建つ小野川温泉。強い雨のせいか通りに人影がない。
「尼湯」は街の中心にある。
駐車場が見当たらず、尼湯を通り過ぎた先の廃家前にちょっとしたスペースを見つけ、駐車させてもらう。車のドアを開けると、どっと雨が吹き込んできた。風に飛ばされないよう傘をさして尼湯へ向かう。相変わらず強い雨だ。時間は午後3時。
雨の小野川温泉街 ひっそりしている
尼 湯
泥湯に管理人は置いていない。
入り口の自動販売機で入浴料200円を払い、入浴券を脱衣スペースの前に置くようになっている。無銭入浴を防ぐためらしい。
引き戸を開けると、脱衣所、湯舟が目に飛び込んでくる。湯舟は畳み2枚分ほどだ。
足を湯船に入れるとアチチ、とてもじゃないがそのままでは入れない。
44度くらいだろうか。ホースで水道水を引き入れ、どんどん薄めてやっと肩まで入れるようになった。ヤレヤレとホッとした。
そのときである。
引き戸がガラリと開いた。
おばあさんだ。けげんな顔をこっちを見ている。
わたしはおもわず「何かぁ(用ですか)?」と呑気に呼びかけていた。
ここ女湯だども・・
おばあさんの、そのひと声ですべてを理解した。
失礼しましたぁ、と叫びながら
脱いだ衣類で前を隠し、隣の男湯へ駆け込んだ。
よく見れば入り口は女、男と別々になってるのに何も考えずに手前の女湯の方にはいってしまっていたのだ。
混んでるときだったら大騒ぎになっただろうな、
そんなことを想像すると、冷や汗が出る。
誰もいない男湯で、ひとり反省したのだった。
おもえば今日はチョンボばかりだ。
午前に入った「湯こっと」でもウッカリなことが・・。
着替えを持って館内に入り、脱衣場ですっかり脱いで、さぁ、湯舟へ・・というとき、手ぬぐいタオルを持ってきてないことに気が付いた!。
どうしよう、また着なおして車まで取りに行くのも面倒だし・・。というわけでタオルなしで入浴。
なのについウッカリして頭をシャンプーしてしまった。
よく温まってから湯から上がり、脱衣場に戻り、Tシャツでからだを拭くしかなかった。
すべて旅の疲れがなしたことだ、仕方あるまい、と開き直った。
ところで、小野川温泉には無料開放のいい露天風呂があるのだ。
今日は雨なのであきらめたが、
2年前の6月に入らせてもらった。蛍が生息する川沿いの絶好のロケーションだった。
いつかまた晴れてる日に入りに来たい。
小野川温泉の無料開放の露天風呂 上方に見えるのも露天風呂
脱衣場はないし、川向うからは丸見えのロケーションだ