前々から気になっていた長野県青木村の田沢温泉と沓掛温泉。旅の目的地のひとつである「無言館」へ向かう途中に立ち寄ることにした。
2019年10月4日、中央高速の諏訪南ICを下り、大門街道(国道152号線)から白樺湖、大門峠を経て松本街道(国道143号線)に入り青木村に到着。
■大宝寺の三重塔
先ずは国宝の三重の塔がある大宝寺へ。創建は奈良時代・大宝年間(701~704)というから古いお寺である。パンフレットを読むと国宝三重塔は全国に13か所あり、長野県内には安楽寺(別所温泉)と大宝寺の2か所。あまりに美しいので思わず振り返るため大宝寺の三重塔は見返りの塔とも呼ばれている。
駐車場から緩やかな坂を登っていく。塩田平を見下ろす丘の中腹に建つ大宝寺はなかなかに落ち着いた風情のお寺だ。紅葉に囲まれた三重塔を正面から、横から、そして上からと見て廻る。秋空の下、のんびりと境内で過ごさせてもらった。
■温泉はしご
沓掛温泉と田沢温泉近い距離にある。大宝寺を後にして、まずは沓掛温泉「小倉乃湯」を訪ねる。入浴料金200円は安い。
湯船はふたつあり、いずれも小さい。どちらにも4~5人の先客がいる。窮屈な感じだが、ここはともかく失礼しま~すと湯船に入れさせてもらう。プンとかすかな硫黄臭がする。無色、透明の単純泉だ。平安時代から湧いていたというありがたい古湯を頂戴する。
小倉乃湯 新聞から引用
汗引く間もなく次の田沢温泉へと向かう。8キロほど走って共同湯の有乳湯(うちゆ)に到着。緩やかに続く石畳みの坂道を歩く。旅館は3軒。有乳湯の傍に建つ旅館の玄関をみると立派な松がそびえ老舗らしい雰囲気が漂っている。開湯は飛鳥時代の後半というからここも歴史ある温泉である。入浴料200円。小さな湯船には地元のお父さんたちがいて話に花が咲いている。
なに、酒やめたんかい
うんきっぱり止めただよ、したら誰も付き合ってくれるやつ誰もおらなんでな。だもんで
イヌに走っただよ、犬は服従するでな
酒をやめ、犬と散歩して温泉にはいるほうが健康的だよね・・と勝手におもう。ぬるめの湯は源泉かけ流し。贅沢な湯である。じっとしていると小さな泡が肌にまとわりついている。炭酸泉なのだろう。
田沢温泉、沓掛温泉ともにひなびた農村のいで湯である。そして源泉かけ流しの気持ち良い共同湯だ。毎日、この湯の恵みをいただける村人たちがうらやましい。国民保養温泉地らしい風情ある土地であった。
この日は松本市内のホテル泊の予定。夕闇が迫った有乳湯を16時30分に出発。すっかり暗くなった山道を峠越えしてホテルに着いたのは18時30分だった。
新聞から引用
ひなびた温泉郷らしい雰囲気