いずれ迎える定年後。お金も仕事もない毎日をいかに生きるか。
そんなことに悩んでいるお父さん達に
「定年後のリアル」 (勢古浩爾著/草思社) が人気のようである。
勢子(せこ)氏は1947年、大分県生まれ。明治大学卒業後、洋書輸入会社に勤務しながら本を書き続け、2006年に定年を迎えた。
この本で作者は先ず定年後に直面する次の三つの不安を指摘する。
1. 何をおいてもこれ、「定年後の二十年、ちゃんと喰っていけんのかね」
2. 「おれ、なにするかなあ」。生きがい、やりがいの問題である
3. 最後は「糖も出てるし、血圧も高いからなあ」の健康問題だ
この三つの不安をどう考えたらいいのか。
世には「退職本」や「老後本」は山のように出ていて、夢や希望、
楽しさにあふれたセカンドライフをいっているが、そんな現実にはありそうもない話しを提示するのは詐欺みたいなものだ、と作者は切って捨てる。
さらに、私のこんな本読んだって何の参考にもならないよ、とも。
それどころか何か教えてくれ、というように具体的な方策を他人や本に求める根性が
すでにだめである、有名人や学者や金持ちや偉い人や成功者に訊いても無駄である、と断言する。
そしてさらに、
高齢者の「問題」は、自分で自分をどうにかしなくてはならない「個人の問題」である。
だから他人に訊いても、他人はあなたのことなんかどうでもいいのである。
みんな口では「長生きして下さいね」などと作り笑いはしているけれど、
だれもかれも自分のことで手一杯なのだ。
「自分のリアル」は自分にしか分からないのだ。
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というように著者は徹底したリアリズムの世界を貫いている。
まぁ、定年を迎える(あるいは迎える予定の)人は、一度は読んでみても悪くはないかもしれない"塩味"のする本だ。
私は図書館で予約してから三ヶ月待った。
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この本を読んでみるきっかけは、今年の3月5日、毎日新聞夕刊の連載記事、
「新幸福論」に勢子氏のユニークなインタビュー記事が載っていたから。
「生きがいなんて贅沢。なくても生きていける。」
「辞める前は定年になったら会津や鎌倉を旅行しよう、美術館に行こうなどと考えていたが、別に今日でなくてもいいと思うと結局行かない。」
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ひと筋縄ではいかない団塊世代のいささか偏屈な著者の話しにどこまで付き合いきれるか、あなたの度量と覚悟が試される一冊だ。
「定年オヤジのしつけ方」も面白い。定年オヤジ初心者には必須の本です。
また、「635.ヒマ道楽」もぜひご覧になってください。
ヒマ人であることを認めなさい、そうすれば身も心も軽くなりますよ、という
詩人を紹介している。
毎日新聞から
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