平成27年9月9日(水) 曇りのち晴れ
山茶花旅館→22番平等寺→月夜御水庵→国道55号線→大浜海岸
23番薬王寺→国民宿舎うみがめ荘(泊) 歩行距離 27.6 キロ
7時40分宿を出発。
同宿だった皆さんはすでに出発し、たぶん私が最後。平等寺へは6時30分の朝食後、参拝を済ませてきた。本堂は修復工事中である。
一時間ほどで月夜御水庵に到着。
ここは去年8月の遍路でタコ焼きを食べた思い出の場所だ。
平等寺の自動販売機の前にいたら、女性がさっと近づいてきて二人分もらったのでこれ食べてください、と熱々のたこ焼きと凍らせたペットボトルをお接待してくれた。
今思うと、くださったのは山茶花旅館の奥さんだったかもしれないなぁ、などど想いを巡らせながら歩いてるうちに国道55号に出た。

トラックの交通量が多くてやかましい歩きになった。すぐにトンネルが現れた。歩道があったのでほっとする。
トンネル内を歩くくらい恐ろしいものはない。軽自動車でもトンネルに入ってくるとトラック並の轟音が耳を襲ってくる。
トンネル内では歩道があれば本当に安心して歩けるが何も無いとこれはもう命がけ。
なので今回は赤色灯が点滅するヘッドランプを用意してきた。ドライバーが気づくように点滅灯を後方に向けて歩いた。
世界遺産登録を目指すのなら、まずこうしたハード整備が必要だろう。外人のお遍路さんもたくさんいるので国交省はじめ関係機関でぜひ進めてもらいたいものだ。

トンネルを抜けると由岐坂峠へ行くルートと国道55号の旧道を行く分かれ道に出た。
どちらも日和佐町へ通じる道である。昨夏は由岐坂峠ルートを歩いたので今回は旧国道をあるくことに決めた。
日和佐へのバイパスがあるのでほとんどの車はそっちへ流れるようだ。山間を抜ける旧国道には車がほとんど通らない。
静かでのんびりした歩きとなった。
そして次第と雲が切れて強い日射しになった。
14時30分、大浜海岸に到着。暑い。
ウミガメの産卵地で有名な浜だ。アイスクリームで一休み。今宵の宿、国民宿舎うめがめ荘に荷物を預けて薬王寺へと向かう。
16時、薬王寺に参拝。ここで昨晩、山茶花旅館で一緒だった新婚旅行で遍路している若夫婦と再会した。
えぇ!?、横浜からですかぁ、オレ、保土ヶ谷が実家です、最寄りの駅は相鉄線の天王町ですよ。高校に入ったんだけど、まわりがガリ勉の頭のよさそうな奴らばっかりで何かなじめなくてオレ、3か月で退学しちゃったんですよ、
それからですか?、
それで焼き肉の牛角で働き始めてたんです、お父さん(私のこと)の住んでる近くの緑園都市の店で店長10年やってました。
でも、さすがに、このままやってても先が見えないっていうかちょっと違うような気がして・・。
なんかもっと自然なライフスタイルというか違う生き方をしたくなったんですよね、そんなときこの女性(ひと)と遭って今の仕事をするようになったんです。
仕事ですかぁ?、ちょっと変わってるんですけど下着づくりです、
自然素材を使ってフンドシを作ってます、藍とか自然のものを使いながら染色してネットで販売してるんです。お腹を締め付けないので身体にもいいようです、女性用のものも作っています。
結婚を機になんでも聞くから、やりたいこといってみて、と彼女にいったら遍路に行きたいっていうんですよ、それで店を休業して遍路に来たったってわけです。なので彼女の発案なんですよ、この遍路は・・。
ここで横浜の身近な話題が飛び出てくるとは思いもよらなかったなぁ。
いろいろと語ってくれた彼の柔軟な頭脳に感心してしまった。そんな彼をにこやかに見あげる若奥さん。
さわやかな若夫婦は見ているだけでこちらも幸せな気分になる。今夜は薬王寺の宿坊に泊まり、明日は宍喰(ししくい)の「道の駅・宍喰温泉」にある宿泊施設にしようかなと考えてるらしい。
昨日、山茶花旅館で中年夫婦遍路のご主人から聞いた話しだ。
私もそこに泊まろうかなと思ってるので、じゃあ、明日そこでまた会うかもね、と会話し、記念の写真を撮った。

しかし翌日、宍喰温泉に二人が現れることはなかった。
なんたってここ薬王寺から宍喰までは34キロもあるからね、そして彼らとはこれが最後だった。
思い返すとこの若夫婦を見かけたのは8番熊谷寺へ向かう遍路道だった。
雨のなか傘もささずに歩く小柄の女性と背の高い彼。チッチとサリーみたいな後ろ姿を見て絵になるなぁと、ついそのシャッターを切っていた。
それが6日前のことだ。
後で聞くと彼らも私と同じく9月1日から遍路を始めたので、ほぼ同じ日程、コースになっていたわけだ。
<追 記>:後日この二人が営むショップのWebページを見つけた。元気な様子である。(2020年5月)

記念写真を撮って二人に別れを告げ、石段を下りて納経所を見ると、あの見慣れた顔の彼がいた。
鴨島温泉の無料宿泊所にいた茨城の若者だ。徳島の観音寺近くの旅館で同宿したとき以来だから5日ぶりくらいか。
彼の茨城弁が妙に懐かしい。ずっと一緒に歩いてた料理人のお兄ちゃん遍路はだいぶ遅れて歩いてるらしい。
写真撮ろうよ、と誘って一緒に記念の一枚を撮った。彼はこれから宿をさがすらしい。

さて、と夕食の買い物だ。日和佐駅前の「道の駅」でミカン、ぶどう、お稲荷さん、金麦を購入。
大浜海岸で金麦を飲む。今日もよく歩いた。

夕暮れの大浜海岸で風に吹かれながら・・・