平成27年9月7日(月) いちにち雨
徳島駅前東横INN→18番恩山寺→19番立江寺→金子屋旅館(泊)
歩行距離 28.3キロ
朝の5時に目が覚める。窓を開けると雨だ。まぁ仕方がない。
6時30分、ホテルのロビーでパン&コーヒーで朝食。東横INNのいつもの朝食スタイルである。
当初の予定だと、今日は19番立江寺近くの民宿まで15キロを歩き、翌日、山中の難所に建つ20番鶴林寺と21番太龍寺を参拝し、林道を4キロほど下って坂口屋旅館に入るつもりだった。ところが、坂口屋がどうも休業らしいという情報を聞き、計画を変更する必要が生じてしまった。
坂口屋がダメだと、さらに12キロ先の22番平等寺まで行かないと旅館がない。立江寺から平等寺までは30キロほどもある。その間には二つの山と一つの峠が待ち構えている。これではちょっときつい。
ということで今日は、少々の無理をしてでも鶴林寺への登り口にある宿まで行くことにした。宿の名は「金子屋」。ネットではイマイチ評判がよくないが仕方がない。
6時45分ホテル出発。雨の中、思い切って飛び出す。国道55号線に出て道なりに進む。通勤の車やらトラックの交通量が多い。さっきから左足首が痛み始めた。
だましだまし歩く。勝浦川とJR牟岐線の跨線橋をわたって小松島市に入る。去年、ここらで大学生の遍路3人組に追い抜かれた場所だなぁ、と想い出す。
気がつくと1年前の記憶を辿っていることが多くなっている。頭ではなく足が覚えている。国道のごつごつ、ざらざらした足裏の感触や遍路道に点在する家並みなどがまだらな旧い記憶に輪郭を与え、懐かしい感覚を呼び覚ます。楽しくて嬉しい気分に満たされる。
10時10分、18番恩山寺に到着。
11時25分、無料休憩所で一服する。建設会社が提供している小さなプレハブ小屋はエアコンが入っていて涼しい。去年もお世話になった施設だ。高速道路の建設が続いてる間は大丈夫だろう。
12時、19番立江寺に到着。雨がやまない。こんな天気なので参拝客も少ない。大師堂でおにぎり2個を食べる。再び歩き始めると、左の足首は相変わらず痛むし、寒い。
恩山寺
立江寺
ふと、田圃のむこうにうどんと書いた旗を発見。黄色い回転灯がチカチカしている。営業中というサインだ。足を休めたいし暖かいものも食べたくなった。「みぽりん」という店。昼を過ぎているので客は私ひとり。やはり温かいうどんを注文。
「よかったらこのチラシ寿司いかがですか、お接待しますが」
とおばちゃんがいってくれた。でも、さっきおにぎりを食べたばかりだ。申し訳ないけれど食べきる自信がないので・・と云って辞退させてもらうことに。
熱いうどんをすすると身体が温まってくる。食べ終わると、おばちゃんがcoffeeを出してくれた。これもお接待だという。ありがたいお接待に感謝、感謝である。店内になんか見覚えのある写真がいくつも飾ってある。よく見ると利尻島だ。桃岩荘も写っている。おかみさんが厨房から出て来たのでお礼をいい、写真のことを訊いてみると、毎年夏に利尻島へ遊びに行ってるとのこと。
身体も温まり休憩したおかげで足が少し軽くなった気がする。県道を歩き続けるが、雨が止まない。むしろ強い雨脚になってきたようだ。車が来るたびに立ち止まってやり過ごす。
雨具を着け傘をさしても足下がどうしても濡れてしまう。足首が再び悲鳴を上げ始めて、なかなかペースが上がらない。ふと、うしろを振り返ると菅笠とポンチョをかぶった二人がすごい勢いで歩いて来た。
こんにちわぁ、とこちらに一声かけると、二人はあっという間に抜き去っていった。あの歩きはたぶん時速6キロくらいだろうな。
すげぇなぁ~と感心していたら、軽自動車がすっと停まり、「これ、ひと口羊羹ですがどうぞ」と、助手席から女性が声をかけた。反射的にありがとうございます、とお礼をいいありがたく頂戴した。
16時 道の駅「ひなの里かつうら」に到着。果物が食べたくて入ってみたが見当たらない。店番のお姉さんに訊くとここにはないけど、この先の果物店で売ってる。でも味はどうかな、という。
ついでに宿のことも訊くと奥からいろいろとパンフレット取り出してきて詳しく説明してくれた。坂口屋は7月の大雨で裏山が崩れて休業中とのことだ(その後に知ったのだが廃業となった)。遍路する者にとっては丁度いい場所にある宿だったのに残念。
今日は「金子屋」に予約していると話すと、最近リニューアルしたらしいですけど・・と言ってお姉さんは微妙な表情を浮かべた。評判はどうも今ひとつの様子である。
むしろ、その先の「ふれあいの里さかもと」がいいですよ、という。
金子屋の評判の悪さはネットで調べて分かってはいたが、駄目を押されたようで少々がっかり。そしてそのことをまもなく実感することになる。
16時45分 金子屋到着。
きのう電話に出て来たらしい男主人(といっても40前後)が現れ、料金は前払いだと云う。でも財布がザックの奥に入ってるのでちょっと部屋に荷物を置いてから届けに来るから、というと、ではすぐに持ってきてくれ、と実に横柄な態度。
案内された部屋も粗末(夜中に電気をつけたらごきぶりがいた)。これまでいろんな宿に泊まってきたがここは間違いなくWorst1といってよい。
まぁ、こういう宿にぶち当たるのも修行だと思ってあきらめるしかない。
あとで地元の人に訊いた話によると、先代の女主人は、雪の寒い日に遍路人が宿に早く着いても玄関を開けずに午後3時まで待たせ続けたからねぇ、そんな傲慢な殿様商売ぶりを見て育ったから、と今の主人のことをいう。
要は旅館業の基本的な接客態度とか迎え方、ホスピタリティーが感じられない、そんな宿も遍路宿の中にはあるというお話しである。
夕方、近くのコンビニで夕食の焼きそば、野菜ジュース、金麦を購入。ついでに氷も買ってふくらはぎ、足首を冷やす。結局、今日は雨の中を28キロ歩いてしまった。これは今回の遍路旅で最長の歩きだった。