テイッシュが底をつく。えっと…新しいテイッシュ箱は? キョロキョロと見回すが無い。洗面所の引き出しをあちこち開けるが…無い。そういう間にも血がボタボタと。 僕の頭によぎったのは汚いトイレの床に繁殖するばい菌。大腸菌・緑膿菌・エンテロバクター・破傷風菌・ノロウイルス・カビ・カンジタ…。とちあえず可能止めを。そうだ、薬箱にゲンタシン軟膏の残りがあったっけ。あれって消費期限ないよな。とりあえずゲンタシンを塗り込める…が…塗ってる傍から血がボタボタと。強引に塗りこんでガーゼで押さえて。
ま、まてよ...ばい菌と血にまみれた足の裏…まずやるべき処置は…流水で洗い流す事。いつだったかTVで応急処置の対処方法で見た記憶が。冷静な僕の頭が記憶を呼び戻した。あわてて足を洗面台のボールに…のっけ…のっ…乗っからない!足が上がらない!老化とメタボと運動不足と酒飲みすぎの反省が一挙に頭をよぎる。だが、あきらめない。1㎝…あと1センチ…ジリジリと足をひっぱりあげて…ついに足首が洗面ボールの中へ!やったあああ!歩夢並みの柔軟さだと自画自賛。
さっそく強い流水で傷口を洗う。洗面ボールが赤く染まっていく。美しい…。しばし流水で血を流してからゲンタシン軟膏をたっぷりと塗りこみ、厚いガーゼを押し付けて…お~~い、お茶! じゃなくって、お~~~い、包帯持ってきてーー!って叫ぶんだけど、家内、動けないし…ベッドの中で心配の声をあげてるんだけど…うっうっ…・
じ・ジロー、何ポカンとしたデカ顔で見てんだよ。しかも正座しちゃってデカ顔かたむけちゃってさ。目なんか真ん丸にしちゃって。お、おまえ、なに食ってるんだ?ジロー、お前、駄目、それ、ガーゼが入ってたビニール袋じゃん。そ、そんなもん飲み込んだら腸につまって…バカ!やめろ。あっ!ガーゼが剥がれた!血が…ジロー、くううううう、役に立たないねぇ猫の手は…。
洗面ボールに足を突っ込んだまま、ジローに向かって訳のわからぬ事を言いつける男。ボケっとデカ顔をかしげて見上げるジロー。笑える光景だわさ。笑えん…いったいどうなっちゃうんだろ。
オレ、シランモンネー、
その知らんふりして冷たく見下げるお前のポーズが気に入らないのよ。主人がえらいことになっているっていうのに、よくお前はそういう冷静な態度でいられるな。もうぜったいマグロの刺身なんかやらんもんね。