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大真空、生産量拡大と省エネ両立 1円・1秒のムダ追放で生き残り

2010-01-27 | 電子部品業界



 水晶デバイス大手の大真空が危機感をバネに主力の鳥取事業所(鳥取市)で生産改革に取り組んでいる。

 個人レベルのきめ細かな改善活動や、長期間のデータ収集に頼らない工程管理の手法を導入した。この結果、生産量拡大とエネルギー使用の削減を両立させることができた。

 価格下落が激しい電子部品は円高もあって海外生産比率は高まるばかり。生産技術をリードするマザー工場として生き残りをかける。


●ちりも積もれば山

 鳥取事業所は水晶振動子や水晶発振器など水晶デバイスの主力工場。今、スマートフォン用の需要が拡大し、生産現場は活気づく。

 携帯の電波を受発信したり、全地球測位システム(GPS)で衛星からの信号を受信したりするのに必要な部品で、昨秋に生産能力を2割増強。月産1500万個のフル稼働が続く。

 工場全体でも金融危機の影響で需要が急減した2009年3月期に比べ、足元の生産数量は5割増と回復基調にある。

 にもかかわらず、電気や水などのエネルギー使用料金は前期よりも2割程度少ない。地道な改善活動によるコスト削減効果は年間数千万円とみられる。

 「ちりも積もれば山となる」。青柳進事業所長は胸を張る。同事業所では06年から「ムダエフ活動」という従業員が個人単位で取り組む改善活動を実施。

 こまめに電気を消すことはもちろん、倉庫のレイアウト変更や製造装置の配置換えによる移動距離の短縮など、「1円、1秒のムダ取りでも活動として認定する」という徹底ぶりで、従業員の意識改革につなげてきた。

 個人の改善提案が大きな成果を生み出した事例がある。

 ICチップの切断工程でチップの欠けが問題になった際、会社が最新設備に入れ替えて解決してしまおうとした矢先、その工程を担当する従業員が切断速度を従来の1.6倍に速めると問題が生じないという解決策を導き出した。

 2000万円の新設備導入をしないで済み、生産効率も高まった。科学的な手法も取り入れる。品質工学を導入し、設計や生産条件の最適化に役立てている。

 例えば、水晶部品に使う水晶片の洗浄工程では、水量や温度、洗浄液の種類、時間など様々な要因によって洗浄結果が左右される。

 通常なら無数の実験を繰り返さないと最適条件は見つからない。

 しかし、品質工学の手法を使うと結果を統計的に類推できるため、「数年かかる分析を2、3カ月でできる」(岸本幸一副技師)。工程の生産性は4割高まったという。


●終わりなき生産革新

 同事業所では様々な生産改革を通じ、10年間で生産数量が25%拡大し、従業員数は半分になった。背中を押すのは「手を打たなければ仕事がなくなる」(青柳事業所長)との危機感。

 水晶部品は価格の下落が年率2ケタ%は当たり前という商品。日々の生産性向上なくしては事業は成り立たない。コスト競争力確保のため、大真空でも海外生産を推し進めている。

 今年3月までに神崎工場(兵庫県市川町)での水晶光学部品の生産が終了し、中国での生産に切り替わる。

 同社では現在5割程度の海外生産比率を将来的には7割程度にまで高める方針で、鳥取事業所とて安泰ではない。「水晶業界ナンバーワンを目指せ」。青柳事業所長は現場に激を飛ばす。

 昨年からは、工程ごとに5チームに分かれて「PF活動」という新しい改善活動を始めた。

 各チームは「現状」から生産性が業界1位の「あるべき姿」に向け、課題や制約条件の克服を目指す。新興国のもの作りの力が高まる中、生産革新には終わりがない。





【記事引用】 「日経産業新聞/2010年1月27日(水)/5面


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