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中国内陸部での製造業拡大 日系電子部品各社、拠点設け需要深堀り

2012-03-15 | 電子部品業界



 中国内陸部での製造業が拡大を続けている。

 古くから内陸部を地盤とする中国ローカル企業の躍進に加え、台湾系の大手EMSも量産工場を開設・特に重慶市と西川省成都では自動車産業やPC関連の量産が盛んで、一大集積地を形成している。


●生産移管を後押し

 こうした動きに合わせ、日系電子部品メーカーも多くの企業が営業・マーケティング拠点を開設し、その地に根差した需要の深堀りと細かなサービス提供に取り組む。

 沿岸部の人件費高騰や、人材不足も内陸部への生産移管を後押ししており、内陸部での電子部品需要は今後、さらなる拡大が見込まれる。

 重慶と成都の大きな産業は、台湾系EMSのパソコン量産を中心としたICT産業と自動車産業。

 特に、ICT産業ではパソコンの量産を目的とした製造業が多い重慶に対し、成都ではソフトウエアも含めたR&Dの役割も担い始めている。

 村田製作所は、08年9月に成都に営業拠点を開設。一大市場を形成しているICT産業と同地域に本拠地を置く中国ローカル企業向けの販売・サービス提供を目的に開設された。

 「成都はR&D拠点としての位置付けも年々高まっており、今後、デザインイン活動も積極的に展開していく」と中華圏全体の営業・マーケティングを担当する村田(中国)投資有限公司の丸山英毅副総裁は話す。

 同社は昨年、重慶にも営業拠点を開設、成都と地理的にも近いため連携を取りながらビジネスを展開している。


●PC量産工場の集積地

 重慶市は古くから重工業が盛んで、70-80年代にかけては二輪および自動車産業が勃興した。そうした流れもあり、現在は自動車産業のみならず、様々な製造業が盛ん。

 特に、2010年に米ヒューレット・パッカード(HP)がパソコン工場を設立したことを契機に台湾系大手EMS・富士康科技集団(Foxconn)が進出し、サプライチェーンが形成された。

 その後、エイサーやASUSTeKなどの台湾PCメーカーや広達電脳(Quanta)や、英業達公司(Inventec)などのEMSが進出し、パソコン量産工場の集積地へと発展した。

 成都にも同様に、富士康料技集団(Foxconn)や仁宝集団(Compal)などの大手EMSが工場を設立。ノートPCやタブレット端末などを量産している。

 EMSの量産工場以外にも欧米、中国ローカルの通信・ネットワーク関連企業も工場やR&D拠点を持ちICT産業の集積地として拡大を続けている。

 この動きに合わせ、日系電子部品メーカーの多くが昨年、成都、重慶の2都市に営業拠点を開設した。

 アルプス電気は初の中の内陸部拠点として「成都事務所」を開設、PC関連のOEM/ODMのサポートを行っている。ニチコンは新興市場に合わせた戦略展開と海外販売の拡大を目指し開設した。


●自動車の一大生産地

 重慶の自動車産業は歴史が古く、長安汽車や力帆といった中国ローカル企業が重慶に本拠地を構えるほかスズキや、いすゞ、フォードなどが合弁企業を設立し、自動車の製造を行っている。

 成都にはトヨタ自動車やフォルクスワーゲンも合弁企業を設立。生産工場は重慶、成都にまたがり、同地域は内陸部における自動車産業の一大生産地となっている。

 周辺では日欧米、中国ローカルのティアワン企業も計器や電装品を生産し、サプライチェーンを形成している。

 日本電産は10年9月に重慶事務所を開設。自動車やPC関連など幅広い分野の情報収集、マーケティング活動に力を入れる。特に、自動車産業では中国ローカル企業の開拓を中心に取り組んでいる。

 「中国ローカル企業は勢いがある。これからはローカルを中心に取り込んでいきたい。グループ会社も増え、提案できる製品が増えた。幅広い分野に製品を供給し、ビジネス拡大を図る」と日電産貿易(深圳)有限公司重慶分公司の久保田琢副部長は話す。

 重慶、成都ともに市政府がさらなる経済発展を目指し、工業団地のインフラ整備、積極的な誘致活動を展開している。

 重慶では上海の浦東新区、天津の濱海新区に次ぐ国家級の開発開放新区「両江(リャンジャン)新区」も10年に完成。大手外資企業の進出も噂され、さらなる産業集積が進む見込み。


●沿岸部より低賃金

 深圳で1500元、上海で1459元(12年4月から)、深圳以外の広東省で1300元という沿岸部の最低労働賃金に比べ、四川省は1050元、重慶は870元とやや低め。

 こうした背景もあり、今後さらに内陸部での製造業は拡大が予想される。





【記事引用】 「電波新聞/2012年3月15日(木)/1面」


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