半導体用ウエハーの直径450mmへの大型化が先延ばしになりそうだ。
東芝は今秋にも決断すると見られていた450mm化に向けた開発を先送りする公算が大きくなった。これまで450mm化推進を表明していたサムスン電子も業績低迷で慎重な姿勢に転じたもよう。
2015年の量産に向けて動きだすはずだった大型投資の判断は12年以降にずれ込む見通し。
●投資縮小に方向転換
半導体ウエハーの直径の最大サイズが現行の300mmから450mmに拡大すれば、1枚のウエハーからとれるチップ数は倍増する。
回路線幅を細くして一つのウエハーに多くの回路を描く微細化技術と並び、大口径ウエハーの導入は低コスト化の切り札と位置づけられてきた。
このため米インテル、韓国サムスン電子、台湾TSMCの上位3社は03年以降、中下位メーカーの突き放しを狙って大口径化を探ってきた。
日本で半導体首位の東芝は微細化技術で先行していることもあり、大口径への態度を保留してきた。ただ主力のNAND型フラッシュメモリーで競合するサムスンが450mm化を決断すれば対抗せざるを得ない。
今秋にも具体的な導入への準備を始めるかが業界で注視されていた。こうした中でサムスンが最近、投資縮小に方向転換。このため東芝は、微細化が順調な現状ではあえて大きな投資に踏み切る局面ではないとの判断に傾いている。
ただ、微細化が行き詰まれば一転して大口径化へと進む可能性がある。半導体の微細化は現在の線幅20nm近辺から、10nm台半ばまではめどがついている。
回路形成に既存の手法と異なる極紫外線(EUV)技術を使った装置の利用が必須と見られる。複数の企業がこのEUV技術を搭載した試作機を利用しているが性能評価に苦戦。
「EUVが使えなければ微細化ではなくウエハーサイズの大型化に向かうしかない。そうなれば450mmウエハーの量産時期が15年だとしても決して早くない」(半導体大手幹部)と見る向きがある。
●開発費用負担重く
450mm化は当初、12年の量産を目指していたものの難航。装置業界にとって最大1000億ドルとも言われる開発費用の負担が重い。
11年1月にはTSMCが13―14年に試験ラインを稼働させる方針を世界で初めて公表。
インテルも13年に完成予定の研究開発拠点に450mm対応設備を導入する意向を示した。サムスン、東芝と続けば大口径化が進むはずだった。
【記事引用】 「日刊工業新聞/2011年7月19日(火)/1面」