日系電子部品メーカー各社の中国・広東省製造拠点は、新年度に向け、事業の高付加価値化と効率向上を軸とした体制拡充に全力を注いでいる。
労務費高騰に対応し、工程の自動化・省力化や生産改善を加速させるとともに、生産品目の見直しやR&D機能拡充などを押し進めることで、より付加価値の高い拠点への進化を目指す。
中国沿海部工場をマザーエ場に、内陸部サテライト工場展開に乗り出すメーカーもみられる。
●喫緊の課題
広東省の日系部品メーカー工場では、年明け後も総じて堅調に生産が推移している工場が多い。
円高対策に加え、中国地場市場開拓に向け製販一体で中岡展開を強化している企業が目立ち、今年も新棟建設を含む積極的な生産能力増強が計画されている。
一方で、最近の中国は沿海部での労働コストの急激な上外とワーカー不足が喫緊の課題となっている。
深圳市では今年2月の賃金改定でワーカーの最低賃金が月1500人民元(従来は1320人民元)に引き上げられ、広州市でもそれに近い額への引き上げが噂されている。
加えて、ローカル系部品企業の台頭により、競争が一層激化している。
各社は、これらを踏まえた競争力強化への体制作りに一段と力を注いでおり、R&D機能を含む現地化促進や工程の自動化・省力化、生産設備内製、部材調達先見直しなどの取り組みが顕著。
生産品目の見直しも進み、従来の民生系主体から車載・産機系の展開強化など、より付加価値の高い製品へのシフトが進展している。
営業面では、中華系完成品・完成車企業の開拓に向け、製販技が一体となった展開が重視され、新規需要創出への体制構築が推し進められている。
●市場変化のスピードに対処
村田製作所の深圳工場「深圳村田科技」(深圳市)は、昨夏に建屋面積約3万2千平方mの新工場棟が完成し、総建屋面積が約5万8千平方mに拡張された。
携帯電話・スマートフォン用の高周波モジュールなどを中心に積極的な増産を進めており、12年度の同法人売上高は前期比約8割増を計画する。
山口勉董事長・総経理は「市場変化のスピードに対処するため、最近はこちらで新製品を垂直に立ち上げるケースも多い。13年3月までに海外生産比率を30%に上昇させるというグループ方針に基づき、今後も改善に力を入れながら生産設備増強を進める」と話す。
SMKの深圳市現地法人「和林電子(深圳)」は、携帯電話・スマートフォン用を中心とするコネクタの大幅な生産能力増強を推進しており、「今年1月から5月くらいまでに計10台程の自動機・省力機を増やす予定」(恵比寿靖雄董事・総経理)。
同工場は、金型、機械、治具などを含め新製品の立ち上げ機能を備え、製造面ではインサート成型の内製のほか、自動機・省力機内製にも力を入れている。
また、中国技術開発センター(CTC)と連携しながら新興国市場向けのボリュームゾーン展開にも力を入れている。
10年に深圳市内にコネクタ販促室を新設し、製販技一体の展開により中国ローカル携帯電話・スマートフォン市場で実績を拡大している。
●一層の生産性向上
オータックスの中国法人「欧達可電子(深圳)」(深圳市)は、11年からDMMS(ディベロップメント・メカニズム部品・マニュファクチャリング・サービス)を事業化した。
顧客からコンセプトを受け取り、商品開発から販売後のアフターサービスまでをカバーし、付加価値の高いサービスを提供する。
製造面では、機械化・自動化による一層の生産性向上を図るとともに、深圳一極集中からマレーシア工場や無錫工場(無銅市)の活用による生産の分散化を進め、顧客に近い場所で供給・サービスが行える体制の強化を図る。
【記事引用】 「電波新聞/2012年3月16日(金)/1面」