村田製作所は、中華圏での営業・マーケティングの統括会社「村田(中国)投資有限公司」を05年に設立し、成長着しい中国市場での販売・マーケティングや技術サポートの強化に努めている。
同法人は業容拡大に伴い、09年6月に新本社ビルを建設、移転し、現在は新本社社屋での業務をスタート。
さらに、新本社の隣接地に村田グループで海外初となる電波暗室を建設中。電波暗室は今年7月の稼働を予定し、現地での技術サポートの一層の強化につなげる。
●中華圏でビジネス拡大
村田(中国)投資の新本社ビル所在地は上海市閘北区永和路。
同ビルには村田(中国)投資および販売会社の「村田電子貿易(上海)有限公司」、さらにグループ会社サイチップの上海R&D拠点も入居。
上海の村田グループの本部、販売、エンジニアリングの各機能が集約され、トータル人員は300人弱を数える。
新社屋建設の目的について竹村董事兼総裁は「グループの各機能を一カ所に集約し、中華圏における長期的な事業運営、ビジネス拡大を図った。
特に、サイチップ社のソフトウエア技術をわれわれの製品に付加していくうえでも、オフィスの一体化は大きなメリット。無線モジュールやセンサーをはじめ、幅広い製品でサービス向上が期待できる」と話す。
建設中の電波暗室は、廷べ床面積1787平方mの4階建てで、3m法電波暗室2基、シールドルーム1基からなる。
「電波暗室建設により、新製品開発や技術資料提供のための測定サポートや、EMI対策コンサルティングなどの活動をより迅速に行えるようにし、顧客とのウィンーウィンの関係構築に結びつける」。
同社は07年頃から、上海で電磁波ノイズ分析装置によるノイズ分析サービスやRF回路向け部品の測定サポートなどを実施してきた。
現在の新本社ビル内にもラボが設けられ、今年1月からはアンテナ特性測定業務も開始した。さらに、電波暗室稼働により、現地での技術サービスを日本でのザ-ビスに一層近付けていく。
竹村董事兼総裁は、電波暗室の活用について「ノイズ関係のソリューションを中心に顧客に役立つサービスを提供したい。最近は欧米系に加え日系企業も中国への設計機能移管が加速しており、顧客のサポート強化に結びつける」と話す。
●中国目線で考える
村田(中国)投資は中華圏販売統括会社として、上海、天津、深圳、香港、台湾の各販社を統括する。
同社の役割について、竹村董事兼総裁は「今後も、日系や欧米系顧客の最先端技術をサポートしながら顧客の投資拡大に合わせた展開を図る。
アジアのメーカーやEMSの存在感も大きくなっていく。価格や品質、サービス面で何が求められるかを把握し、迅速に日本のR&Dにフィードバックする。
特に、台湾EMSなどは、今はローエンド品主体でも、いずれハイエンド品を手掛けるようになる。それらを踏まえたマーケティングを重視する。
「同時に、中国での環境対応を含めた規格制定などの動きをいち早くキャッチする活動にも力を入れる」と説明。
「中国企業は官民一体で他の新興国市場へも進出しており、今後、中国製品が世界に大きく広がる可能性もある。我々も中国目線で考えていく必要がある」と話す。
中国での分野別売上高は、携帯電話関係を主体に、PC関係、AV関係、自動車関係などが中心で、現在は好調な販売が続いている。
「景気刺激策と賃金上昇による購買力アップで、中国の消費地としての力は着実に上がっている。最近は、消費刺激策の対象に日系のセットも認可されはじめており、10年度も引き続き期待できるとみている」。
●現地目線での戦略
今後の展開について竹村董事兼総裁は、「携帯電話やPC市場においても中国現地セットメーカーがいずれ高機能品にシフトしていくと思われ、、今から関係を築くことが次の戦略に結びつく」。
「そのためには、現地の要求レベルに合う品質・価格への対応が重要で、現地目線で考えることが大切」。
「重視するのは、ローカルの人材をいかに育成していくか。そして、今まで培ったノウハウや最新のソリューション提供など、技術面では日本人の役割が大切。その融合をうまく図っていけるよう努める」と話す。
【記事引用】「電波新聞/2010年3月24日(水)/4面」