初日は移動のみで仕事はありません。夜は旧友たちに連絡をして、夕食につきあっていただきました。
「最近見つけたいい店があるんですよ」
ソウル在住のKさんが紹介してくれたのが、ナグォンサンガ(楽園商街)の近くにあるホンオ(洪魚)の専門店。
ナグォンサンガと言えば、楽器の卸売市場として有名ですが、その周辺にはアグッチム(鮟鱇の辛味炒め)やモリコギ(豚の頭の肉)などの飲食店が並んでいます。それらにはさまれて、ひっそりと営業しているのがホンオの店。
ホンオ(洪魚)とは、ガンギエイのことで、生のエイを発酵させ、強烈なアンモニア臭を発するまで熟成させた、世界三大悪臭料理の一つ。韓国料理の中で、ひときわ異彩(異臭?)を放っています。
私もこれまで数回にわたりホンオの牙城を突き崩すべく挑戦してきましたが、あえなく返り討ちにあってきました。(リンク①)
狭い店で、テーブル席が六つほど。奥には、まあまあ若い6人組がいたのが意外でした。それ以外の席は、年配の人が多い。
職場の人たち(30歳前後が多い)に聞くと、「あれはダメ!」とか「食べたことがない」という人が多い。なので、ホンオは年配の、それも全羅道出身の人々にのみ愛される食べ物だという印象がありました。
大皿に出てきたのは、ホンオと煮豚(ポッサムキムチで出てくるのと同じもの)、そして古漬けキムチです。豚、キムチといっしょにホンオフェ(さしみ)を食べるのを、ホンオサマプ(洪魚三合)と称します。ほかに、分葱のような細いネギ、チョンニョンコチュ(激辛の青唐辛子)、生ニンニクのスライス。ヤンニョム(タレ)は、チョコチュジャン(唐辛子酢味噌)、テンジャン(味噌)、チョッカル(小海老の塩辛)をお好みで。酒はもちろんマッコルリです。
「昔、焼き肉屋で食べましたよね」
「なつかしいなあ。あそこもうつぶれちゃったよ」
全羅道出身の主人が経営する小さな焼き肉屋さんで食べたのが、私のホンオとの邂逅でした(→リンク②)。
「ここのホンオはマイルドで、なかなかイケますよ」
それで、私が先陣を切って、ホンオに豚肉、キムチ、生ニンニクをのせ、チョッカルにつけて口に放り込みました。
「ほんとだ。それほど臭みがないね」
「あんまりホンオらしくないわね」
Sさんが物足りなそうに言います。もともとホンオが好物ということで、もっと強烈なホンオがお好みのようです。
マイルドとはいえ、ホンオだけを単独で噛みしめると、アンモニア臭が鼻から脳天につきぬけます。豚やキムチなどの強い味でごまかさないと辛い。
「いや、これでもけっこう来るよ」
前に挑戦した店は、チュンムロ(忠武路)にあった店ですが、この三倍ぐらい強烈でした。
メニューを見ると、我々が頼んだサマプ以外にサシミ(フェ)があり、ホンゴタン(湯、鍋のこと)もありました。
「ホンオに関しては、ほとんど諦めかけてたけど、これならまた食べてみたいと思えるね」
「それはよかった。紹介した甲斐がありました」
次に向かったのが、この店にほど近いワサドゥン(瓦斯灯)というマッコルリチプ。ここも思い出のつまった店です。かなり広い店だったのですが、一度火事で半焼し、半分ぐらいの広さになっていました。主人のおばあさんは健在。壁一面の落書きもそのままです。
洗面器のような器に満たされたマッコルリに、注文せずとも出てくるイミョンス(日本のホッケに似た魚)。それを塩で食べます。
この店の魅力の一つは安さにありました。しかし、韓国の経済成長に合わせて徐々に値段があがり、マッコルリの量も少なくなってきたのは仕方がないところ。今回は三人で1万7000ウォンでした。(→リンク③)
「最後にコーヒーでもいかが?」
Sさんに促されて向かったのが、ハリスコーヒー。
韓国におけるコーヒーショップの歴史も、波瀾に満ちています。20年前、韓国のコーヒーの主流はインスタントでした。コーヒーショップでもインスタントコーヒーで最初から砂糖はたっぷりと入っていました。その後、豆を挽くコーヒー、ウォンドゥ(原豆)コーヒーというものが登場しましたが、最初は透き通るようなアメリカンコーヒー、それもヘーゼルナッツという得体のしれないフレーバーが添加されていた。
その後、今世紀に入ってスターバックスの一号店がミョンドンにオープンすると、本格コーヒーが韓国中を席巻します。一回の食事代よりも高いコーヒーをファッション感覚で飲む若者が増えました。
最近増えているのが、巨大コーヒーショップ。五階建てで上から下まで全部一軒のコーヒーショップになったりしています。
ハリスコーヒーも、そのような巨大店の一つ。こんな一等地で、コーヒーだけ売ってて採算が合うのか気になります。
喫煙席は4F。エレベーターがないので息が切れます。どうも、長居をする人が多いらしく、PC持参で何時間も勉強する大学生や、お仕事をするクリエイティブ系の人が席をしめています。
時間はすでに12時を回ろうとしている。ちょうど酔いがさめてきたところで散会しました。
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たとえ臭いがマイルドでも、あれは私にとって悪臭に変わらず、美味しいとは思いません。
出されれば食べられますが、どちらかと言うと、子供の頃の苦いピーマンみたいな感覚です。
どちらも齢を重ねるにつれ、好きになりました。
ホンオとアボガドは「好き」になれるかどうか。