犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ホンオフェ~究極の悪臭料理

2006-09-20 06:45:37 | 食べる
 昔,よく通っていた焼肉屋があります。

 安くて旨い。だから偉い。

 世に高くて旨い店は多いですが、それは当たり前なのでちっとも偉くない。旨いだけでなく,安くなければえばる資格はない。

 さて、その店の主力メニューが「アンチャンサル」。
 日本でハラミと呼ばれている部位で、解剖学的には横隔膜だそうです。アメリカでは横隔膜は内臓に分類され、食べ物とみなされない。それで日本や韓国に廉価で輸出されているとのことです。
 10年前当時,カルビが1万5千ウォン,サムギョプサル(豚のバラ肉)が6千ウォンの時代に,この店のアンチャンサルは7千ウォンだった。豚じゃなく牛のハラミが一人前7千ウォン。
 安い。
 旨い。
 ということで,よく通いました。

 そこの主人は全羅道出身。ほとんどの客がこのアンチャンサルを注文しますが,メニューには,アンチャンサルと並んで「ホンオフェ」というものもあった。ホンオ(洪魚)は日本語でエイ。どうも,この店のご主人,アンチャンサルよりはホンオフェを食べてほしかったようですね,全羅道サラムとしては。
 われわれがアンチャンサルを頼むたびに,
「ホンオもおいしいよ」
とそれとなく勧めてくれる。
「ホンオは臭い」ということを本の知識で知っていたので,それまで敬して遠ざけてきました。

 ある日,われわれが5人で12人分ぐらいのアンチャンサルを平らげ,味に満足し,さらには計算(お勘定のこと)して割り勘したときに大満足して店を出ようとするとき,主人が大皿をもって,にこにこしながら出てきた。

「いつも来てくれるから,今日は特別サービスだ。ちょっと口を開けて」。

というなり,われわれ全員の口に順繰りにある物体を押し込んだ。たちまち鼻を刺す強烈なアンモニア臭。脳天までツーンとする刺激。あふれる涙。

 なんだ、なんだ、なんなんだ、これは?!。

 すぐにでも吐き出したかったのですが、普段懇意にしているご主人の手前,我慢してひと噛み,ふた噛み,そしてなんとか嚥下しました。
 しかし,他の四人は口に入れるなり,店の前の地面に吐き出していました。

 そのときの主人のさびしそうな顔。

 私は「この人たち,韓国が初めてで,このおいしさがわからないんですよ」と主人をなぐさめました(ぼくもわかってなかったけど)。

 これが私の、ホンオフェとの出会いでした。

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3 コメント

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Unknown (福岡)
2006-09-20 12:53:59
なんだか寂しい話ですね・・・・
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ホンオフェ (スンドゥプ)
2006-09-20 18:22:22
これは昔の駅のトイレの臭いです。蝿取紙が目に浮かびます。

日本のテレビでも紹介されたそうです。

なんでも悪臭世界一の食品だそうです。

http://www.ntv.co.jp/dash/tetsuwan_new/past/2006/0709/02_pg01.html
返信する
寂しい別れ (犬鍋)
2006-09-20 22:33:23
>寂しい話



ご主人はベトナム帰還兵。

最初,夫婦でやっていましたが,店がひまで奥さんは別の食堂でアルバイトするようになり,しばらくしてひっそりと閉店しました。いまはどこでどうしているかわかりません。

ベトナムの話,いろいろ聞きたかったのに。



>悪臭世界一



スウェーデンのシュールストレミングもすごそうですね。

ホンオフェは続編も予定しています。
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