分断国家韓国は,暮らしてみると平和そのものですが,実際は「休戦状態」。男性には兵役の義務がかせられています。
女性が嫌う話題の3位がサッカーの話。2位が軍隊の話。そして1位が軍隊でやったサッカーの話という笑い話がありますが、実際,韓国人と飲んでいて軍隊の話になると,急にボルテージがあがり,なかなか話が終わらないので閉口することがあります。
ノ・ムヒョン政権下で,軍隊内のリンチが問題になったり,友達同士の入隊が可能になったり,さまざまな「民主化」が行われているようです。
では,軍隊の実態とはどういうものか。
それを垣間見せてくれるのが,イ・ソンチャン著『オマエラ,軍隊シッテルカ!? 疾風怒涛の入隊編』(バジリコ,2002年)です。ネットで連載されて話題を呼び,本として刊行されました。
厳しい訓練や,不条理な仕打ちに対する怨み節だけじゃなく,ユーモアのある巧みな筆致で一気に読ませる。なかなか感心しました。
軍隊に行っていない男は半人前,とよく言われます。たしかに軍隊は,肉体の鍛練や精神力涵養など,人格形成に大きな影響を与える。でも必ずしもいい面ばかりじゃなさそうです。
例えば,次のような塹壕堀りの訓練で…。
下士(上官)が,命令を下す。
「1時間30分で掘れ。俺が直接,出来具合を確認して点数をつける。出来の悪いのはオル・チャリョ(罰のしごき)! 立派な塹壕を掘ったチームには,それなりの待遇をする。実施!」
4人のチームで掘るのだが,僕らのチームに図体のでかい江原道出身の訓練兵がいた。途中で一服しようと言っても,
「いや,ダメだ。どうせやるなら精一杯やらなくちゃ。中途半端なのは大嫌いだ。無意味な作業でも,やりのけたら爽快な気分になれる。どうせやるなら一等にならんとな」
といって,休まず堀り続ける。
見るからに逞しい筋肉美。その掘り方も「シャベル三段」程度の師範レベルだった。その結果,僕らの塹壕は4人が入っても見えないくらい深く掘ることができた。もう十分すぎるほど掘ったのに,彼はなおも掘りつづけた。掘り出した土で周囲に遮蔽物を作り,偽装用の草木をむしってきては,手当たり次第に植えていった。
汗をダラダラ流しながら完璧な塹壕を作り,ついに検査を受ける時間になった。それまで居眠りしていた下士が,寝ぼけた顔で起き上がった。そして,その場所に立ったまま,辺りを360度見回すと大声をあげた。
「よーし,時間だ。それまで! ご苦労だった。これで,塹壕の掘り方もわかったと思う。では,掘り起こした土で塹壕を埋め,この場所に4列横隊で集合する。二分ですませ。実施!」
バカバカしい一日だった。いい加減なことが大嫌いという江原道の訓練兵は,今まで誰にも見せたこともない脱力感をあらわにし,塹壕を一人で見つめていた。そして,あきらめるようにして塹壕を埋めなおした。
……
こうして,韓国の若者は,正直者が馬鹿を見るということを身を持って知り,職人気質を育てる機会を失っていくわけです。
女性が嫌う話題の3位がサッカーの話。2位が軍隊の話。そして1位が軍隊でやったサッカーの話という笑い話がありますが、実際,韓国人と飲んでいて軍隊の話になると,急にボルテージがあがり,なかなか話が終わらないので閉口することがあります。
ノ・ムヒョン政権下で,軍隊内のリンチが問題になったり,友達同士の入隊が可能になったり,さまざまな「民主化」が行われているようです。
では,軍隊の実態とはどういうものか。
それを垣間見せてくれるのが,イ・ソンチャン著『オマエラ,軍隊シッテルカ!? 疾風怒涛の入隊編』(バジリコ,2002年)です。ネットで連載されて話題を呼び,本として刊行されました。
厳しい訓練や,不条理な仕打ちに対する怨み節だけじゃなく,ユーモアのある巧みな筆致で一気に読ませる。なかなか感心しました。
軍隊に行っていない男は半人前,とよく言われます。たしかに軍隊は,肉体の鍛練や精神力涵養など,人格形成に大きな影響を与える。でも必ずしもいい面ばかりじゃなさそうです。
例えば,次のような塹壕堀りの訓練で…。
下士(上官)が,命令を下す。
「1時間30分で掘れ。俺が直接,出来具合を確認して点数をつける。出来の悪いのはオル・チャリョ(罰のしごき)! 立派な塹壕を掘ったチームには,それなりの待遇をする。実施!」
4人のチームで掘るのだが,僕らのチームに図体のでかい江原道出身の訓練兵がいた。途中で一服しようと言っても,
「いや,ダメだ。どうせやるなら精一杯やらなくちゃ。中途半端なのは大嫌いだ。無意味な作業でも,やりのけたら爽快な気分になれる。どうせやるなら一等にならんとな」
といって,休まず堀り続ける。
見るからに逞しい筋肉美。その掘り方も「シャベル三段」程度の師範レベルだった。その結果,僕らの塹壕は4人が入っても見えないくらい深く掘ることができた。もう十分すぎるほど掘ったのに,彼はなおも掘りつづけた。掘り出した土で周囲に遮蔽物を作り,偽装用の草木をむしってきては,手当たり次第に植えていった。
汗をダラダラ流しながら完璧な塹壕を作り,ついに検査を受ける時間になった。それまで居眠りしていた下士が,寝ぼけた顔で起き上がった。そして,その場所に立ったまま,辺りを360度見回すと大声をあげた。
「よーし,時間だ。それまで! ご苦労だった。これで,塹壕の掘り方もわかったと思う。では,掘り起こした土で塹壕を埋め,この場所に4列横隊で集合する。二分ですませ。実施!」
バカバカしい一日だった。いい加減なことが大嫌いという江原道の訓練兵は,今まで誰にも見せたこともない脱力感をあらわにし,塹壕を一人で見つめていた。そして,あきらめるようにして塹壕を埋めなおした。
……
こうして,韓国の若者は,正直者が馬鹿を見るということを身を持って知り,職人気質を育てる機会を失っていくわけです。
社会とは往々にして不条理なものです。
とりわけ軍隊は不条理が凝縮されているようです。
以来必ずワードで書いてコピペするようにしています。