歴史歪曲

　韓国出張時、独立門のそばのトガニ専門店に行ったことを書きました。

　独立門は、ソウル駐在時代、日本から遊びに来た友人とともにソウルシティーツアーという巡回観光バスに乗って独立公園に行ったとき、ついでに寄ったことがあります。

　独立門は、朝鮮が清から独立したことを記念して立てられた歴史的建造物。

　朝鮮王朝は、１７世紀に二度にわたる清（後金）の侵略を受け、清に服従、以後清の冊封体制に組み込まれ属国の地位に甘んじていました。１９世紀末、日本が日清戦争で清を破ったあと下関条約で朝鮮の独立を勝ち取り、それまで清の使臣を迎えるために作られていた迎恩門を取り壊して、その代わりに独立門を作ったのですね。

　私が訪れたとき、門の前にあった説明文には、高速道路の建設にともなって移築されたこととともに、上の歴史的意義が正しく記されていました。

　ところが、このような経緯を多くの韓国人は知らない。独立門の「独立」とは、日本の植民地支配からの独立であると思い込んでいる人が多いようです。

　それというのも、移動後の独立門は西大門刑務所跡地と隣接する独立公園のはずれにあり、独立公園のほうは日本からの独立と関係のある公園だからです。

　西大門刑務所は、３．１独立運動を主導した韓国のジャンヌダルク、柳寛順（ユガンスン）が収監され、拷問の末に獄死したとされる刑務所です。刑務所内には、拷問場面を再現した蝋人形が展示され、ソウルの小学生の社会科見学先になっています。

　なお、韓国ではユガンスンが八つ裂きならぬ１６分割されて石油缶の中に放置されていたという伝説がありますが、これについては韓国の市井の研究者が作り話であることを明らかにしています。それによれば、ユガンスンの年齢も、よく言われる１６歳ではなく１８歳、裁判で検事に椅子を投げつけたので７年の刑を言い渡されたのではなく、３年の刑、四肢切断という事実もなかったとのこと（→リンク）。

　また、拷問死とされているも疑わしく、インフルエンザによる病死だったという資料を見たことがあります。

　なお、西大門刑務所は韓国独立後、韓国の刑務所として使用され、政治犯に対する拷問が行われたそうですが、そのようなことは現在の展示には説明がありません。

　現在の韓国の歴史観は、韓国は、日帝によって強制占領された時期（これを日帝強占期といいます）を除いて、一貫して独立国だったというもの。

　朝鮮が清に従属していたこと、日清戦争後の下関条約で独立を回復したことなどは、秘匿されています。高校の歴史教科書にも、下関条約の内容は書かれていません（私が参照したのは２０００年頃の版で現在のものは知りませんが）。韓国が行っている「歴史歪曲」の一つです。

　独立門と独立公園は２００９年にリニューアルされたそうですから、もしかすると独立門にあった解説文もリューアルされたかもしれません。