犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

北朝鮮から贈られた豊山犬の末路

2022-05-02 00:00:32 | 犬のいる生活
写真:仁川市延坪平和安保訓練所の檻の中にいるヘンニム(聯合ニュース)

 2018年の南北首脳会談のとき、金正恩(キム・ジョンウン)総書記から文在寅(ムン・ジェイン)大統領に、二匹の豊山犬、コミとソンガンが贈られました。

 コミはその後、2回出産し、計13匹の子宝に恵まれました。

 2018年に生まれた6匹はソンガンの子どもと推定され、2021年の7匹は、文大統領の飼い犬のマルの子どもだと、大統領府は発表しています。

 最初の6匹の名前は、サン=山、トゥル=野、カン=川、ビョル=星、タル=月、ヘンニム=日。これらは、ソウル、仁川、大田、光州の4自治体に引き取られました。

 そして2回目の7匹の名前は、アルム、ダウン、カンサン=江川、ポム=春、ヨルム=夏、カウル=秋、キョウル=冬。つなげて読むと、「美しい江山、春、夏、秋、冬」になります。

 このうち6匹は、雌雄1対ずつ、それぞれ江原道高城(コソン)郡、全羅南道順天(スンチョン)市、京畿道烏山(オサン)市に引き取られたということです。残りの1匹がまだ青瓦台にいるのか、どこかに引き取られたのかは不明です。

 高城郡に引き取られたのは、 ポム(春)とヨルム(夏)。昨年末の新聞報道(ハンギョレ、韓国語)によると、高城郡はこの2匹を改名し、「ヘラン」と「クムガン」にしたそうです。

 ヘランは日浪で、「波立つ海の昇る朝日を見ながら統一を祈願する」という意味、クムガンは金剛で、金剛山(北朝鮮にある景勝地)に至る要衝、韓国から金剛山に最も近い高城郡を意味しているということです。

 この2匹は、東海岸最北端の統一展望台タワーで飼われているとのこと。

 ところで、北朝鮮から贈られた犬を地方自治体に引き取らせていることには、批判の声もあります。

 以下、2021年10月2日のアジア経済新聞の記事(リンク、韓国語)を拙訳でご紹介します。

 記事中の漢字語は、わざとそのまま漢字表記にした場合があります。

入養:養子を迎えること、転じて犬などを引き取ること
分養(分譲かも):分けること、引き取ってもらうこと
伴侶動物:ペット
伴侶犬:ペットの犬
中性化:避妊・去勢すること

捨て犬を入養した「愛犬家」の文大統領、青瓦台で飼っていた豊山犬の子犬は動物園行き?

文大統領、豊山犬の子犬7匹を自治体に分養すると発表。
2019年にも6匹を分養…一部は動物園で生活中。
市民ら「動物福祉と言いながら、飼い犬の責任はとらないのか」と批判。
専門家「動物を贈り物にする外交は不適切」


 文在寅大統領が、金正恩北朝鮮労働党総書記から贈られた豊山犬「コミ」と自身の伴侶犬「マル」の間に生まれた7匹の子犬を自治体に分養すると発表したことに対し、批判が出ている。青瓦台(大統領府)は2019年にもコミが産んだ6匹の子犬を4つの自治体に分養したが、子犬の一部は動物園に送られ、展示・広報などに利用されているからだ。

 今回分養される7匹の子犬もまた同じようなプロセスを辿るのではないか、と市民は憂慮している。専門家は、人間と情緒的に交感したがる性向が強い犬を動物園に送るのは不適切であり、動物を贈り物としてやりとりする外交のやり方も正しくないと指摘している。

 文大統領は(2021年)9月1日のフェイスブックへの投稿で、「3か月前にマルとコミの間に生まれた豊山犬の子犬7匹はみな元気に育っている」、「希望する自治体に2匹ずつ分養しようと思っている」と発表した。

 青瓦台は2019年8月、コミが産んだ6匹の子犬(サン=山、トゥル=野、カン=川、ビョル=星、タル=月、ヘンニム=日)も、ソウル、仁川、大田、光州の4自治体に分養した。犬は、現在、自治体を通じて動物園・訓練所などに送られている。

 サンは京畿道果川市のソウル大公園で、ヘンニムとトゥル はそれぞれ仁川市延坪平和安保訓練所、仁川大公園で、タルとカンは大田オー!ワールドで、ビョルは光州ウチ動物園にいる。仁川に送られたヘンニムとトゥルを除いた4匹は、動物園で展示目的などに利用されているのだ。

 韓国日報によれば、動物園に送られた犬たちは、ほとんど動物園内に作られた展示室内で過ごし、一日に1、2回ほど飼育員が散歩をさせているという。仁川大公園のトゥルの場合、公開用の展示スペースではなく、非公開のスペースに作られた50平方メートルの飼育場でほかの犬といっしょにおり、午前に一回飼育員が散歩をさせていると公園側は明らかにした。しかし飼育者が帰宅したり休みをとったりして不在のときは、犬たちは面倒を見る人のいない状態で、檻の中に閉じ込められているほかない状況だ。

 ヘンニムの場合、コロナ19事態で延坪平和安保訓練所が長期間休館し、南北関係悪化で観光客が少なくなり、檻に閉じ込められたまま寂しく過ごしているという消息が、昨年6月に報道された。ビョルがいるウチ動物園は、2007年、飼育場の不足で、育てていた6匹の犬をたった5万ウォンで分養し、批判されたことがあった施設だ。

 青瓦台による豊山犬の自治体への分養は、当時、政界でも批判された。緑の党は、2019年9月の論評で、「南北平和の念願をこめた象徴的な存在であることを勘案しても、人間と交感しプライベートは関係を結びたがるという犬の本性を考れば、生まれた子犬を動物園に送ったのは反生命的で反動物権的」、「劣悪な飼育環境と非専門性、管理がいい加減だったなどの理由で、さまざまな動物がかわいそうなことに死んでしまっている」と批判した。

 一部では、文大統領が最近「犬の食用禁止」に言及するなど、伴侶動物福祉と慣例体系を強調したことと矛盾する決定だという指摘も出ている。あるネットユーザーは「責任をとらないなら中性化するなどしたらいいのに、分養後に自治体が最後まで責任をもつという保障があるのか」、「捨て犬、捨て猫政策も急がれるが、まずは飼っている子犬について責任を持つべきではないか」と書き込んだ。

 青瓦台は自治体に分養したとき、管理がいい加減になるのではないかという憂慮に対し、先月の3日、「そのようなことをすべて勘案してどこに送るかを決めれば、ていねいな管理をお願いできるはず」と言って、7匹の豊山犬の動物登録も完了したと発表した。

 専門家は、犬を自治体や動物園に分養するやり方は適切でないと指摘している。イ・ウォンボク韓国動物保護連合代表は「先進国と後進国の違いは、伴侶動物を飼うときの条件をちゃんと守るかどうかであって、育てる動物を中性化することが飼い主の基本」、「昨年だけで13万匹以上の遺棄・遺失動物が発生し、3分の1以上が入養できず安楽死させられている状況」と説明した。

 さらに、「犬たちを展示・広報用に自治体に送るのは、責任ある行動ではない。犬たちは特定の飼い主がいなくて人間とまともに交感できない環境では、情緒的に不安定な状況に置かれるようになる」、「最近、動物は物ではないという民法改正案が通過した。物ではない動物を贈り物としてやりとりする外交のやり方も変わってほしいと願っている」と強調した。そして「青瓦台がどんな行動を見せるかが、多くの人にとってのお手本になる。伴侶動物の分養は慎重に、責任をもって行うべき」と付け加えた。


 文大統領が退任し、後任の尹錫悦次期大統領から不正追及を受けるようになれば、自治体にとって、犬はいよいよ「お荷物」になり、管理がなおざりになるのではないでしょうか。

 南北友好の広報用に利用するのではなく、愛犬家の一般市民に引き取ってもらうほうが、犬たちにとって幸せだと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 文大統領の愛犬マルはギネス級? | トップ | GWの飲み会~その1 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

犬のいる生活」カテゴリの最新記事