犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

北朝鮮から贈られた豊山犬の末路 その4

2022-11-30 22:30:27 | 犬のいる生活

写真:2018年11月、コミとソンガンイから生まれた6匹の子犬たち。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が政府に返した二匹の豊山犬が、動物園送りになることが決まったそうです。

 それに対し、動物愛護団体は「動物福祉上、問題あり」と批判しています。

 以下、ハンギョレ 2022年11月16日付記事を拙訳で紹介します。

豊山犬は捨てられた。返還であれ離縁であれ

養育費、法改正の議論で、コミ、ソンガンイの福祉は後回し
「人との心の通い合いが大切な犬の性質上、動物園での飼育は不適切」


 文在寅前大統領が飼っていて、政府に返還した豊山犬「コミ」、「ソンガンイ」が、光州市のウチ動物園に行く可能性が高まった。伴侶動物である犬を国家首脳が贈り物としてやり取りし、これを国家記録物として管理するプロセスにおいて動物福祉に対する考慮と議論が抜け落ちているという指摘が出ている。

 11月14日、光州ウチ動物園管理事務所は、大統領記録館がコミとソンガンイの間の仔犬を入養した(引き取った)ソウル市、仁川市、大田市、光州市と市が運営する動物園に、親犬の引き取りの意思を尋ねたことを明らかにした。ウチ動物園は引き取りの意思を伝えた。光州市が運営するウチ動物園は、コミとソンガンイの子である「ビョル(星)」を2019年8月「委託」形式で引き取り、育てている。ウチ公園管理事務所は、大統領記録館が最終決定を下せば5~7日の準備期間を経て犬たちを引き取る計画だ。

「豊山犬離縁」騒動が持ち上がった11月7日から一週間、犬たちの居所がやっと決まりそうだ。しかしこのプロセスで実際の「当事者」である犬たちの福祉に関する議論は後回しにされたかっこうだ。大統領記録物管理法施行令の改正、約250万ウォン(約26万円)の管理費など委託協約問題、政界でのさまざまな言い争いだけが出たり引っ込んだりしている。

豊山犬には責任ある伴侶人(飼い主)が必要だ

 動物保護団体ビーグル救助ネットワークは14日、「今日の国民感情にまったくそぐわない現在の政界の動物虐待の旧態依然の状況が嘆かわしい」、「今からでも政界は法改正を通じて問題の豊山犬2匹と、現在大統領記録物として動物園で飼われている犬たちを家庭に入養して(引き取って)もらう努力をすべきだ」と主張している。

 文在寅氏が大統領在任中に生まれた豊山犬は計13匹。そのうち12匹が動物園や自治体機関で飼育されている。ウチ動物園にいるビョル(星)をはじめ、2018年11月、コミとソンガンイの間で生まれたサン(山)、ヘニム(お日様)、トゥル(野)、タル(月)、カン(川)は現在、ソウル市(ソウル大公園)、仁川市(仁川大公園、延坪島平和安保修練館)、大田市(大田オーワールド)で飼育されている。

 6匹のうち、ヘニム、トゥルの2匹を除く4匹は動物園で展示の形で飼育されている。犬は動物園の他の動物のように展示され、飼育士が時間になると散歩をするが、ほとんどの時間を犬舎の中で一人ぼっちで過ごしている。

 昨年6月、文前大統領の伴侶犬のマルとコミの間に生まれた7頭も事情は似たようなもの。アルム、ダウン、カンサン(江川)、ポム(春)、ヨルム(夏)、カウル(秋)、キョウル(冬)の7匹は、コソン統一展望台、スンチョン(順天)万国家庭園、オサン(烏山)伴侶動物テーマパークなどに分散されている。当時、健康状態が良くなかったダウンだけが大統領府に残り、ヤンサン(梁山)の私邸に連れていかれた。ダウンは当初、大統領記録館と文前大統領秘書室との間で作成された協約書では委託対象に含まれていたが、コミ、ソンガンイが「大統領記録物」として返された後、父親(マル)が異なるという理由で大統領記録物に含まれないことになったため、現在も梁山に残っている。

 国家記録物という理由で伴侶動物である犬を品物のように扱うやり方に対する動物保護団体の批判は、これが初めてではない。2019年8月、コミが生んだ6匹の子犬の分養(引き取り)公告が出たとき、緑の党は「コミとソンガンイが南北平和の念願を込めた象徴的な存在であることを勘案しても、人間と心が通い合い、親密な関係を結ぶ「犬」の性質を考慮すると、子犬を動物園に送ることは反生命的、反動物権的」と批判した。動物が品物のように見なされている状況は、3年後の現在も変わっていない。

突然の動物園行は遺棄と同じ

 専門家は、人との絆が重要な犬の性質上、動物園での飼育は適切ではないと言う。獣医師のクォン・ヒョクホ氏は「コミとソンガンイはすでに伴侶犬として人と過ごし、心を通い合わせた動物だ。突然の動物園生活は、豊山犬に遺棄と同様の心理的ストレスを与えることになる」と語った。AAATのイ・スンヨン代表も、「犬を組織で管理するのは、居住環境や管理者が頻繁に変わる可能性があるため、犬にとって不安要因となる可能性がある。犬の福祉水準は管理する人によって大きく変わる」と述べた。

 ビーグル救助ネットワークは「これまで政府が推進してきた「動物は品物ではない」ことを規定した民法改正案は、この問題を解決する重要な鍵になりうる」と付け加えた。△国家首脳間の「動物の贈り物」禁止、△豊山犬の家庭入養(引き取り)推進、△国家所有の特殊目的犬(軍犬、警察犬、麻薬探知犬など)の待遇改善、△「動物は物ではない」ことなどを規定する民法改正案通過を促した。


 犬は特別な動物なので動物園での展示、飼育はよくないという主張です。ならば、動物園のほかの動物たちは「動物福祉上」問題ないんでしょうか。

 サル、イルカ、クジラなど知能の高い動物もいっぱいいます。

 まあ、私も孫を連れて動物園に「展示」されている動物たちを見て、楽しんでいるわけですが…。

 記事を読んで、昔、中学校の教科書にあった高村光太郎の詩を思い出しました。

ぼろぼろな駝鳥

何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半のぬかるみの中では、
脚が大股すぎるぢやないか。
頸があんまり長過ぎるぢやないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢやないか。
腹がへるから堅パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかり見てゐるぢやないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢやないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢやないか。
あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆まいてゐるぢやないか。
これはもう駝鳥ぢやないぢやないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。
(新潮文庫『高村光太郎詩集』昭和25年発行)


北朝鮮から贈られた豊山犬の末路 その3

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 旭日旗に関する韓国の報道、二つ | トップ | 巨人殺し、再び »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

犬のいる生活」カテゴリの最新記事