今年のノーベル文学賞が日系イギリス人のカズオ・イシグロ氏に授与されました。
さっそく本屋に行きましたが、売っていない。増刷が追いつかないのでしょう。
経歴を見ると、1954年長崎県生まれ。海洋学者の父について5歳のときに渡英、現地の小学校に通い、そのまま大学も英国で出たそうです。家庭では両親と日本語で話していたそうですが、62歳の現在、日本語はほとんど話さず、当然で、作品もすべて英語。
イシグロ氏の経歴を見て、水村美苗という女流作家を思い出しました。
彼女は1951年生まれですからイシグロ氏と同じような世代。やはり父親の仕事の関係で12歳のときに渡米。その後はアメリカで大学院まで修了(フランス文学専攻)。
私が読んだ唯一の作品は、『續明暗』。夏目漱石の未完の傑作『明暗』の続編で、漱石の表現を真似て、文字遣いも旧かな、旧字を用いるという念の入れよう。漱石が散りばめていたさまざまな伏線をていねいに拾い上げ、「ありそうな結末」に導いた秀作です。水村氏はこの作品で「芸術選奨新人賞」を受賞。その後も小説、評論で野間文芸新人賞、読売文学賞、小林秀雄賞、大佛次郎賞などを受賞するなどし、「日本人作家」として活躍しています。
子どものころに英語圏に移住しながら、かたや英語で作品を書き、日本語はほとんど忘れたイシグロ氏。水村氏は、旧仮名遣い、旧字体を駆使する日本語の達人。この差は何なんだろう。
やはり、日本を離れた年齢が大きいのでしょうか。初等教育を日本で受けた水村氏と入学前にイギリスに渡ったイシグロ氏。
昔、あるロシア文学者が、いくらロシア語を勉強してもプーシキンの韻文をロシア人と同じように味わうことはついにできなかったことを悔やみ、わが子を小学校からインターナショナルスクールに入れて英語で教育を受けさせた結果、息子は日本語が思うようにしゃべれず、親子の間で深いコミュニケーションがとれなくなった。「私の教育法は失敗だったかもしれない」と述懐していました。
イシグロ氏は、両親との間のコミュニケーションギャップ悩むということはなかったのでしょうか。興味のあるところです。
増刷本が書店に並んだら、いちど作品を読んでみようと思います。
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