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犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

フランダースの犬

2025-06-16 06:23:52 | 

写真:『フランダースの犬』(世界文化社、1966年。古本屋サイトより)


 東野圭吾は『あの頃ぼくらはアホでした』という自伝的エッセイの中で、自分が子どもの頃、読書が嫌いだったと書いています。

 我が母親の頭には、「本を読む子は賢い子」という定義が出来上がっていたらしく、なんとか息子にも本を読ませようとした。その第一弾が忘れもしない、『フランダースの犬』だった。
 母親がうるさいので、いやいや読みだしたわけだが、はっきりいって『フランダースの犬』は、僕には全然面白いとは思えなかった。粗筋など、今ではすっかり忘れているが、唯一覚えているのが、「かわいそうな少年が、かわいそうな愛犬と共に、結局なーんもいいことがなく死んでしまう話」ということである。


 私はいつ本を自分で読みだしたのか、はっきりと覚えていませんが、『フランダースの犬』のことはよく覚えています。

『ABCブック』というシリーズの一冊で、子ども用の絵本でした。

 幼稚園に通っていたときで、最初は母親に読み聞かせてもらったんだと思います。

 最初にアルファベット1文字と、その文字で始まる英単語が挿絵とともに載っていて、そのうちの1単語にかかわりのある童話、お話が始まるという構成です。

『フランダースの犬』は「D」(dog)の巻でした。

 当時、小学校では3年生からローマ字を習っていたはず。もしかしたら、4歳年上の兄のために母が買ったのかもしれません。

 しかし外遊びが好きな兄は見向きもせず、もっぱら私が読むことになりました。

 あらすじは以下。

 ベルギー・アントワープの農村で、祖父、老犬のパトラッシェと暮らす牛乳配達の少年ネロ。画家になることを夢見ていたが、生活は貧しい。風車小屋の一人娘、アロアに好意を寄せていたが、アロアの父コゼットは、貧乏人のネロを嫌っている。冬のある日、風車小屋で火事があり、ネロは放火の疑いをかけられ、牛乳配達を頼む農家もなくなる。クリスマスを数日後に控えた日、祖父が亡くなり、家賃が払えなかったため、家からも追い出される。ネロは街の絵画コンクールに、消し炭で描いた「木に座った祖父」の絵を出品していた。クリスマス前日、絵画コンクールの結果発表があったが、別の金持ちの息子の絵が選ばれ、ネロは賞金を得る望みも絶たれる。雪が降りしきる中、村へ向かう道でパトラッシェが財布を見つける。それはアロアの父、コゼットの財布で、家の全財産が入っていた。ネロは財布を風車小屋に届け、パトラッシェの世話を頼んで、ふたたび雪の中を歩きだす。夜、財布が見つからないまま帰宅したコゼットは、ネロが届けてくれたことを知り、これまでのネロにたいして行ってきた仕打ちを後悔。翌日、ネロの身元を引き受ける決心をする。それとも知らず、自分の将来に絶望したネロは、吹雪の中、最後の力を振り絞って、村の大聖堂へ向かった。ここには、死ぬまでに一度は見たいと思っていたが、高い観覧料のために見られなかったルーベンスの祭壇画がかかっていた。パトラッシェも風車小屋から飛び出し、ネロを追って大聖堂へ駆けつける。暗闇の中、雲間から一瞬射した一筋の月光が祭壇画を照らし出した。クリスマスの朝、大聖堂のルーベンスの絵の前で、愛犬を固く抱きしめたまま凍死している少年が発見される。パトラッシェも息絶えていた。村人たちは、教会の特別な計らいの下に、犬と少年を祖父の墓の隣に葬ったのだった。

 私はこの悲しいお話が好きで、ひらがなが読めるようになったあとも、たびたび読み返しては涙を流しました。

『ABCブック』全26巻は、大人になるまで保管していて、韓国赴任時には子どものために持って行った記憶があります。4人の娘たちも読んで、ぼろぼろになったので、帰国時に捨てたか、小学校の図書室に寄付したかしたようです。

 同作品は、明治期よりたくさんの翻訳者によって訳されてきました。東野圭吾が「おもしろくなかった」と思ったのは、どのバージョンかわかりません。『あの頃ぼくらは…』によれば、東野圭吾は読書よりも当時普及が進んでいた白黒テレビにかじりつき、『鉄腕アトム』や『鉄人28号』に「没頭していた」そうです。

 なお、「フランダースの犬」は1975年にテレビアニメ「世界名作劇場」として放映され、知名度が一気にあがりました。

 私は中学生だったので観ませんでしたが、私が読んだ絵本とパトラッシェの犬種が違っていて、違和感を覚えました。

 絵本では、茶色の大型犬で、耳が立っていました。アニメはセントバーナードのようでした。

「フランダースの犬」の原作者は、イギリスの児童文学作家、ウィーダ。1872年に書かれました。舞台になったフランドル地方(ベルギー)では知られておらず、アニメ放映後、「パトラッシェの故郷」を訪ねる日本人観光客が増えて、地元の人たちがとまどった、というエピソードを聞いたことがあります。

 英語版の絵本によれば、パトラッシェはフランドル地方の「ブービエ・デ・フランダース」という犬種だそうです。


写真:ジャパンケネルクラブより

 ぜんぜんイメージが違う…


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