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(推奨) 古典SFサスペンスの名作!『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』

前々から買いたいと思っていた映画があった。それは1956年に米国で公開されたモノクロ映画、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(ボディ・スナッチャー 原題:Invasion of the Body Snatchers)である。

ご存知の方も少ないかもしれないが、この作品は古典SFサスペンス映画の名作であり、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された作品。後の“宇宙人侵略系映画”の先駆けであり、金字塔である。僕はまだ幼かった頃、アメリカのテレビで放送されているものを観たのだと思うが、その時の衝撃がずっと残っており、久しぶりにまた観たいと長年思っていたが、今回ついにDVDを購入した。

原作はジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街』(原題:The Body Snatchers)で、『ダーティーハリー』の監督として知られるドン・シーゲル監督が映画化した。当時、日本では劇場未公開だったらしい。ちなみに、この映画はその後3度リメイクされているほど後世にも影響を与えた作品である(リメイク作: 『SF/ボディ・スナッチャー』、『ボディ・スナッチャーズ』、『インベージョン』)。

モノクロ作品ではあるが、とても画像はキレイで、1956年の作品としてはとても良く保存されている。そして、映画全体のトーンはとてもサスペンスフルで、まるで『トワイライト・ゾーン』の1エピソードを映画化したかのようなサスペンスミステリー的な色合いが濃い作品。上映時間は80分なのでそう長くないが、映画全体として全く無駄の無い展開で、観る人を飽きさせない。観る者をグイグイと物語の中に引き込んでいく展開は素晴らしく、脚本が素晴らしいのだろう。ちなみに、脚本は後に『ゲッタウェイ』などで有名になった映画監督のサム・ペキンパーだ。

(物語)

サンフランシスコ近郊の街、サンタ・ミラの医師マイルズは、医師会から街へ戻ってくると奇妙な患者達の現象に出くわす。自らの母親を母親じゃないと泣きじゃくる子供や、叔父が別人になってしまったという女性。集団ヒステリーではないかと疑うマイルズであったが、ある時、巨大なサヤから人間そっくりな複製が生み出される瞬間を目撃する。そう、既にサンタ・ミラはこの宇宙からの侵略者によって大半の人間が入れ替えられていたのであった。恐るべき事実を知ったマイルズは恋人のベッキーと共に街を脱出しようとするが・・・。

物語の設定として、睡眠時に入れ替わりが完成するため、「寝てはならない」という人間にとって極限の状況が何とも恐ろしい。それが故に侵略者達は強制的に入れ替わろうとはしない。ただ、相手が疲れて眠るのを待つだけなのである。この設定がまた不気味でリアリティもあり、秀逸な侵略方法である。

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(下記セクションはネタバレになるので、これから映画を観たい人は読まないでください・・・)

結局、マイルズと一緒に逃げていたベッキーも睡魔に勝てず、洞窟の中で一瞬寝てしまうが、この為最後に最愛のベッキーまでも侵略者になってしまう。失意と恐怖の中で何とかハイウェイまで逃げて、隣の街までたどり着き、人類の危機を訴えるマイルズであったが、警察や精神科医も彼の言うことを取り合ってくれず、精神的な疾患で片付けようとする。しかし、このマイルズの恐ろしい話を裏付けるような死体が病院に運び込まれた時、ようやく本当の出来事だとみな気が付くのである。最後は侵略者と戦って行こうとする人類への微かな希望と余韻を残して、物語は終わるのである。

このような“微かな希望“を残した終わり方は、同じく僕が大好きな古典SFスリラーの傑作『ハエ男の恐怖』や、これまた大好きなヒッチコック監督の傑作『鳥』のラストにも似ており、既に1956年当時から、このパターンは見事なまでの完成度で映画となっていることに思わず感動してしまう。

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映画のもう1つの楽しみは、主人公のマイルズとベッキーのカップル。スリリングな展開や逃亡劇の中で、この2人のラブストーリーも描かれるが、ケビン・マッカーシーという俳優が演じるマイルズはアメリカ人らしいなかなかのイケメンだし、ベッキーを演じたダナ・ウィンターという女優がなんと言っても美しい!ヒッチコックが好みそうなクールで品格のある美女で、どこかティッピー・ヘドレンや若い頃のエリザベス・テイラーにも似た美人である。この2人を含め、出演陣はみんな特別日本で有名な俳優ではないが、とても品のある俳優陣を揃えており、また当時のアメリカのライフスタイル(家や車など)も含めて楽しめるところが最高にいい。ある意味アメリカの良き時代を捉えた作品としても貴重で、改めてこの映画の総合的な素晴らしさを痛感した。

久しぶりにこの映画をじっくり観賞したが、子供の時に初めて観た時の衝撃は薄れたかもしれないが、大人になって改めて観ると、如何にレベルの高い傑作であるかをじっくり確認することが出来たように思う。やっぱりいい映画は何年経っても色褪せないものである。これは間違いなく、SF/サスペンスファンは一度絶対に観るべき傑作である。

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