▲切り株に生え、胞子体を伸ばしているナガハシゴケ。若葉のような明るく優しい緑色が美しい。(2012年3月11日鎌倉朝比奈切通し)
あっというまに3月も終わり。
今朝、ベランダに出たら、
遠くに見える住宅街の隙間から
若葉色がのぞいていた。
この冬は寒い日がたくさん続いたけれど、
ようやく木々も芽吹き始めたのだな。
もう少ししたら桜色の木々も現れることだろう。
この季節のベランダは、
毎日発見があってとても楽しい。
さて、もしあなたが地面に顔を
近づけることさえいとわなければ、
春は「苔見(こけみ)」も楽しい季節。
通例ではコケは、他の植物たちが芽吹く前に、
胞子体を出して〝旬〟を迎える。
しかし今年は寒さが厳しかったせいか、
ほうぼうを見て歩いても、わりとコケの成長が遅い。
つまり今年はまさにこれからが苔見の季節。
ぜひ、サクラと共にご覧あれ。
で、話はちょっとさかのぼって。
まだすこし冬の寒さが感じられる3月11日、
1年以上ぶりとなる岡山コケの会関東支部の
コケ観察会が行われた。
場所は鎌倉。主に朝比奈切通しを歩きながらコケたちの様子を観察した。
※切通し(きりとおし):山や丘を切り開いて通した道。
今回は1年以上ぶりの開催ということで、
参加者はみなさん、気合じゅうぶん!
ということはつまり、いつも以上に、
みなそれぞれにコケの世界にどっぷりつかってしまい、
地面にへばりついたら離れられなることうけあいなわけで・・・。
とくに今回は講師を務めてくださったKさんが、
「さぁコケ観察を始めましょう」と山道を一歩踏み出した瞬間から、
気になるコケを見つけて動かれなくなってしまったことから、
「それなら私も~」とみな続々と各自のコケワールドに入り始める。
案の定、今回も予定時間を大幅に過ぎてしまい、
お昼になり空腹でおなかが鳴ってようやく、
「あれ? 私たちもしかしたら全然進んでなくない!?」
と気づくありさまなのだった。
▲壁にはりついたり、採取したコケを回し見したり。なかなか前に進まない私たち。
ちなみに会の世話人&タイムキーパーであるAさんは、
早くからこの時間の遅れに気づいていたのだと思うが、
私たちのコケへの情熱を最優先してくださり、
今回もできる限り自由にさせてくれていた。
毎回のことながら、感謝、感謝である。
▲お昼過ぎ。参加者の先頭を歩く世話人Aさん。でも振り返ると誰もついてきていないので、たぶん愕然とされていたと思う。
時間には限りがあるので、いつまでものんびりはしていられないのだけれど。
そうは言ってもやはり、コケ観察は、焦らず、ゆっくり、が基本。
普段は「風景の中の緑」としてしか認識していないコケでも、
近づいてじっくり見てみると、そこにはいろんな発見がある。
▲コバノチョウチンゴケ。古くなって縮れた濃い緑の葉と色鮮やかな新芽が同居するのが春先恒例の姿。
▲さらに近づいて見てみると・・・雌株から胞子体が出てきてる!
▲こちらは、花のような形をした雄株。春らしいライムグリーン色が美しい。
ちなみに、画像右上に密集している、もっと濃い緑色の花形をしたものは、コツボゴケの雄株。
こんなに小さなものでも少しずつ成長し、季節ごとに姿を変える。
それが、山や森が生きているという証でもある。
そして、その様子を見守る私もちゃっかり生きているわけで。
ときには自分自身を心のルーペで
ぐっと近づいて見てみたり(または引いて見てみたり)すれば、
普段は気づかないいろんな変化が見つけられるのかもなぁ。
なんて。
やはりコケを見るっておもしろいものです。
▲コケも近づいてじっくり見た後は、再び引いて見てみる。
それによってどんな場所にそのコケが生えているのか、種類ごとのコケが好む場所というのがわかってくる。
<今回出会った主なコケ>
1エビゴケ
2オオベニハイゴケ
3カガミゴケ
4キブリナギゴケ
5ギンゴケ
6コガネハイゴケ
7コツボゴケ
8コバノチョウチンゴケ
9シノブゴケ
10ダンダンゴケ
11ツチノウエノコゴケ(かな?)
12ナガハシゴケ
13ノミハニワゴケかコメバキヌゴケのどちらか
14ハリガネゴケ
15ハリゴケ
16ヒダゴケ
17ヒメナギゴケ
18フガゴケ(絶滅危惧種)
19ヤノウエアカゴケ
20極小サイズのホウオウゴケの一種(名前を失念!)
21アズマゼニゴケ(かな?)
22ケゼニゴケ
23ジャゴケ
24ジンガサゴケ
▲こちらがフガゴケ。切通しの岩壁に生えていたのだが、ごらんのとおりあまり状態はよくないようだった。
▲ケゼニゴケとジャゴケが一堂に! どちらもボタンのような雌器托(しきたく)がついている。もう少ししたら胞子を飛ばせるかな!?