バーに限ったことではないように感じます。
予約が取れない店が3年で閉店に追い込まれる理由は、大変な思いをして予約を取ってお店に行っても、再度大変な思いをして予約を取ってでも来ようという感動が無いからでもあると思います。
地道な努力で人気が出る店ばかりではありません。
たまたまマスコミに取り上げられたり、SNSで情報が拡散したり、時にお店がそれを仕掛けていることもあるでしょう。
キャパシティーを超えるお客様を文字通り「捌く」中でお客様は自分が大切にされていないことを感じ、話題と中身のバランスが取れていないことを目の当たりにします。
勿論、全ての繁盛店がそうだということではありませんし、期せずしてネットの口コミなどからお客様が殺到してむしろ戸惑っているお店もあると思います。
一方で世の中の繁盛店には長年予約が取り辛く、行列が途切れない店でも繁盛し続けている店も決して少なくありません。
想像するにお客様の中にはネットを初めとする情報を頼りとする繁盛店巡りをモットーとしている人も少なからずいるでしょう。
とはいえ飲食店に限らず、店舗の閉店や分野は異なりますが鉄道の廃止などが報じられると俄かに盛り上がり、口々に聞かれる「惜しい」、「残念」という言葉と最終営業日に向けて殺到する「馴染み客?」に、それまでにその何割かが通っていてくれたら、利用していてくれたらと唇を噛む事業者も少なくないでしょう。
難しいことですが、それもこれも含めてお客様に支持されるかだと思います。
繁盛している時にその理由をしっかりと自覚していることが、お客様にまた来ようと思わせ、実際に来ていただけることに繋がるのではないでしょうか。
だからこそお客様をお迎えするお店側にとって最後の一文が本当に大事だと感じました。
「あなたに良いと思ってもらえるような店をつくれるように、こちらもがんばります。」
外野の戯言でした。<(_ _)>
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<「予約の取れない店」が3年で閉店に追い込まれる理由>
ヤフーニュース cakes配信 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/ 2016年5月25日
東京渋谷のワインバー「bar bossa」の店主・林伸次さんのコラム連載です。飲食不況と言われる昨今、閉店を選んでしまうお店も少なくありません。あなたが大好きなお店がなくなる時、ただ悲しんでいるだけでいいのでしょうか。あなたが本当に大事に思うお店なら、どうすればいいのか。お店側からの視点を林さんが語ります。
●知人のバーが閉店することになって
いらっしゃいませ。
bar bossaにようこそ。
知人のバーが、閉店することになりました。それで、色んなお世話になった方達に連絡をして、ちょっとした閉店パーティみたいなものを開いたそうなんですね。その僕の知人としては、「これからまた何か新しいことを始めるつもりなので、その時はよろしく」という気持ちのパーティだったそうなのですが、ほとんどの人にこう言われたそうです。
「すごく良いお店なのにどうしてやめちゃうの?」
バー経営者として言わせていただきますと、お店を閉める理由はただひとつです。お店にお客さまが来なくなって、売り上げが少なくなって、経営に行き詰まったからです。もちろん「立ち退きで移転」や、「店主が高齢で引退」という場合もありますが、そういう場合はその理由をまず一番最初に説明します。そういった事情がなければ、お店が儲かっているのに閉める人はまずいません。お店を閉める理由は、これ以上続けても赤字だからです。
彼いわく、そのパーティで、「良いお店なのにどうしてやめちゃうんですか?」って言われるたびに、途中から「あなたがお店に来てくれなくなったからです」と言いたくなったということです。
僕は経営者としていつもいつも思うことがあります。
「老舗の○○がついに閉店」とかいう報道があると、必ずツイッターやフェイスブックで「え? すごく残念! あの名店がなくなるなんて!」なんて言う人が出てくるんですね。
そういう人たちを見ると、「それはあなたがそのお店に行かないからです」といつも伝えたくなります。本当にそのお店が魅力的なお店で、みんなが普通に利用していたら、そのお店は閉店するはずがないんです。
僕は飲食店経営者として、新しくて話題のお店ができると、なるべく時間を作ってそのお店に行ってみることにしてるんですね。でも正直に言って、2回目ってまず行かないんです。他にもチェックしなきゃいけないお店はたくさんあるし、まあ1回行けば大体そのお店の雰囲気はわかるし、といった理由です。
そして一般のお客様もほとんどがこの気持ちなのではないでしょうか。新しいお店が開店して、話題になって、たくさんのメディアで取り上げられて、「じゃあ今度一度行ってみようか」ということになり、一度行ってみて、「結構良いお店だ」と感じて、SNSで「行ってきました。すごく美味しくて良いお店でした」と報告して、そしてもう二度と行かなくなりますよね。
そういう話題のお店って、その開店当初は「予約が取れないお店」で話題のお店なのですが、3年もすればいつの間にか誰も行かないお店になってしまうんです。そして、冒頭の僕の知人のお店のように閉店ということになって、「え? どうしてやめちゃうの? すごく良いお店だったのに」という言葉をかけられるわけです。
●あなたが大好きなお店が続くために
老舗有名店でも同じです。有名なお蕎麦屋さんや天ぷら屋さん、お寿司屋さんに行くのって、みなさん1回だけじゃないですか? あるいは1回も行ってないのに、何故か行ったことがあるような気がしているっていう不思議な現象もあります。
そうなんです。有名で良いお店って意外と誰も行ってないってことがよくあるんです。そして誰も行ってなければ、当然ですが閉めるしかないんですよね。
じゃあ「すごく良いお店で閉店して欲しくないお店」を閉めさせないようにするにはどうすれば良いのか? 答えは簡単です。ちゃんと通えば良いんです。
もう少しわかりやすい例でいきますね。
古い商店街のお婆ちゃんがやっていた小さいお店があります。ジュースやお菓子、石鹸やトイレットペーパーなんかを売っています。そしてそのお婆ちゃん自家製のおはぎがとても美味しいんです。あなたはそのおはぎ、年に何回買いますか? そのお店でおはぎ以外のモノを買うと思いますか? もちろんおはぎの売り上げだけではお店は維持できません。おはぎは1個100円程度。月2回買っても1年に2千400円です。おはぎはただの客寄せかもしれません。
そしてやがて、お婆ちゃんのお店は閉店します。そしてその後は24時間営業しているピカピカしたコンビニエンス・ストアができます。もちろんあなたは「残念。お婆ちゃんのおはぎがもう食べられない。どうしてコンビニばっかりできるの? 日本中どこまで行ってもコンビニだらけになっちゃう」と言うでしょう。
でも、考えてみてください。あなたはこの1年間、コンビニでいくらお金を使いましたか? 1日1千円使ったと考えても30万円以上は使ってます。日本中、どこまで行ってもコンビニだらけになる理由は、あなたがコンビニを頻繁に利用しているからです。そしてお婆ちゃんのお店が潰れたのは、あなたがこの1年間、お婆ちゃんのお店で2千400円くらいしか使わなかったからです。
世の中に「不買運動」ってありますよね。それと逆の発想で、「あのお店の存続のため、ちゃんと通おう運動」というのも可能です。
資本主義社会において、あなたの消費活動は投票行為でもあるんです。今日の夜、どこかでお酒を飲もうかなと思ったとき、駅前のチェーン店に入らずに、昔行ってすごく良かったあのバーに足を運んでみてください。あなたに良いと思ってもらえるような店をつくれるように、こちらもがんばります。