ビター☆チョコ

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蛇イチゴ

2006-09-24 | 邦画



明智家。どこにでもありそうな平凡な家庭。
小学校の教師をしている娘の倫子(つみきみほ)は同僚の鎌田(手塚とおる)との結婚を考えている。
母(大谷直子)は痴呆症の祖父(笑福亭松之助)の介護と家事を一人でこなすしっかり者。
父(平泉成)はまじめな会社員。
しかし突然の祖父の死で、平凡な家庭の秘密が浮かびあがる。
祖父の葬式に10年ぶりに現れた放蕩息子の周冶(宮迫博之)が事態を収めようとするのだが。。。

先週観た「ゆれる」の西川美和監督の監督第1作。
ホームドラマというにはシニカルで、コメディというには毒がある。
見た目は赤くて可愛い実をつける「蛇イチゴ」。
見かけとはあまりにも違う名前は「毒イチゴ」を思わせる。
でも実際には毒はないそうだ。
食べるとかなりまずいらしいけど。

明智家もそんな家庭だ。
勘当した放蕩息子がいることは、倫子の恋人の鎌田に隠している。
父は仕事人間の振りをしてるけど、リストラされて巨額の借金を抱えている。
母は痴呆の義父を優しく介護してるように見えるが、実は疎ましく思ってる。
そして消極的な殺人。まで犯してしまう。
放蕩息子の口八丁はいかにも胡散臭い人生を送ってきた人間に見える。

誰でも少しは持ってるだろう表と裏。2面性。
家庭という本来暖かいはずの場所で見せ付けられる人間のずるさや弱さ、見栄や欲にちょっと怖くなる。
役者の淡々とした演技があまりにもリアルな感じで、
自分が襖の隙間から覗き見でもしているような気になってしまう。

家庭の平和を守るために,隠さなければいけないものがあるとしたら家庭ってなんだろう。
そう思った時,さて,自分はどうなんだ。と考える。
胸の中にあること全部ぶちまけてる?
さすがにヤミ金に借金は抱えてないけど,言っていいこと悪いこと,そんな選択を無意識にしながら暮らしているんじゃないかい?
。。。。だってそのほうが絶対平和だもの。

その無意識の選択が不意に崩れたとき,家庭は崩壊してしまうのだろうか,
見えないものを信じることは出来るのだろうか、と映画は問いかける。
問いかけられた質問の重さに応えあぐねているうちに、映画は軽やかに幕をおろしてしまう。
監督がラストシーンに残した余韻は,観ている私にどこまでも答えを考えさせる。

すったもんだしながらも家庭は再生して,何もなかったように朝ごはんなんか食べてるんじゃないのかな。
家族って,家庭って,たぶんすごくしぶといものなのだと思うから。