ゴッサム・シティは、バットマンことブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)が
ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)の助けを得て犯罪集団をおさえこみ、平和を取り戻したかのように見えた。
しかし、バットマンの登場は「悪」の
バットマンの正体を知るのは、限られた一部の人のみ。
「法の外」でマスクをかぶって闘うことにバットマンことブルースは限界を感じてもいた。
そんな時、ゴッサム・シティに救世主が現れた。
新しく選出された地方検事のハービー・デント(アーロン・エッカート)だ。
すばらしい正義感と行動力を持つ男。
彼は市民に「ホワイト・ナイト」と呼ばれ親しまれ、彼ならマスクをかぶらない真のヒーローになれるのではないかと
バットマンは思い始める。
再び混乱に陥ったゴッサム・シティを救うため、3人の男が動き出す。
今さら説明するまでもない「バットマン・ビギンズ」の続編である。
前作の最後に登場を示唆されたジョーカーという謎の犯罪者が、のっけから大暴れする。
ジョーカーという男、一見ピエロにも見える奇抜なメイクで、その姿から素顔や素性を窺い知ることはできない。
。。。。というか。。本当に人間なのかと疑ってしまうような冷血非道ぶりだ。
仲間でも、用済みになったら眉ひとつ動かさずに消してしまう。
神出鬼没、どこにでも現れ
まるで人の心を読んでいるかのように、なにごとにも裏をかく。
ジョーカーが欲しいのはお金でも権力でもない。
ただただ、人が苦しむのを見るのが楽しいのだ。
その楽しみのためなら、自分の死だって恐れない。
理由や目的のない悪ほど恐ろしいものはないのだ。
もはや悪魔としかいいようのない頭脳のキレと倫理観の欠如が
バットマンやゴッサム・シティの市民を恐怖へと追い込んでいく。
理屈の通じない相手に
いったいどうやって正義を貫くのか。
バットマン、ゴードン警部補、デント検事の闘いは
それぞれの思惑もからんで、ジョーカーに翻弄され、改めて正義の意味を問われることになるのだ。
2時間半という限られた時間の中で次々と起こる事件。
ひと段落ついたと思えば、それは全くの思い違いで
また新たな展開が起こるのだった。
「息をつく間もない」というのは、こういうことを言うのか。。と思うような密度の濃い時間だった。
バットマン
ゴードン警部補
デント検事
ジョーカー
誰が主役なのか混乱するほど、それぞれの個性が際立って見えた。
緊張が続く時間の中で
バットマンの理解者であるアルフレッド執事(マイケル・ケイン)とフォックス社長(モーガン・フリーマン)
がスクリーンに姿を現す時が、唯一、ほっと和める時間なのだった。
この配役の絶妙さが、この映画に厚みと温かさを与えてるのだと思う。
そして。。。やはりジョーカ役のヒース・レジャーのことを思わずにはいられない。
正直、「ヒースの遺作」ということで公開を待ちわびていた。
しかし。。。ヒースの姿はどこにもなかった。。
後姿、背格好。。ああ。。あれはヒースだ。。と思う一瞬はあったものの
スクリーンの中にいたのは、最強の犯罪者ジョーカーだった。
過去にジャック・ニコルソンが演じたというジョーカーを観ていないのでなんとも言えないのだが
たぶん今回のジョーカーは、ヒースが一から考えて作り上げたものなのだろう。
ヒースが作って演じたジョーカーは、底知れない恐ろしさをまきちらし
ヒースの演技は、大成功を収めたのだと思う。
ただ。。私には、なんだかジョーカーが。。ヒースを連れ去ってしまったような気がして仕方がないのだ。
なにがヒースの命を奪ってしまったのか、私にはわかる術もないけど
エンドロールに流れる
「ヒース・レジャーに捧ぐ」のクレジットを見ながら、泣けて泣けてしようがなかった。
涙をこらえて
ツンツンする鼻をすすりながら外に出ると
もうとっぷりと日は暮れていた。
夏の週末の夜は、どことなく華やいでいたのだけど
夜の暗さが、いつもよりも身に沁みた。