ビター☆チョコ

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お江戸でござる 杉浦日向子著

2006-09-04 | 日々のこと



昨年急逝した杉浦日向子さんの本が、先月3冊文庫になったので読んでみた。

もともと時代小説好きなので、江戸時代の生活には興味があった。
歴史の授業で習った江戸は「士農工商」という身分の格差があって、やけに堅苦しい世界のように思っていた。
でも、小説に描かれる江戸はちょっと違うんじゃないの?
この本がそんな疑問をさらっと解いてくれた。

17世紀の世界3大都市はロンドン、パリ、江戸。
そしてその中で水道が整備されていたり、庶民が旅をしたり安全に生活できて最も洗練されていたのが江戸。
儲かってる商店は社会に還元しないと非難され、
弱いものの面倒をみない町は、他の町の人に馬鹿にされ、
いたずらっ子はよその子でも叱り飛ばし、
使えるものは徹底的にリサイクルして使う。

江戸の人々は物に価値を置くのではなく、生きている時間に価値を置いた。
「人間一生、物見遊山」
生まれてきたのは、この世をあちこちより寄り道しながら見物するため。
生きてる間に見聞を広めて友達を増やし、死んでいけばいい。という考え方。
物に固執せず、自分の身の丈で楽しむ人生。

もしかしたら、時代は退行してるんじゃないか。
情報があふれ、便利にはなっているけど、ちょっと停電になったりすれば全く機能しなくなる生活。
自分のまったく手の届かないところでいろいろなことが動いてる不気味さも感じる。
自分の身の丈で生きる。
そんな江戸の人々がのびのびと見えて、複雑な機械を操る私達よりもずっと賢く思えて
なぜかうらやましい気がしてしまうのだ。