ビター☆チョコ

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やわらかい手 (DVD観賞)

2008-09-08 | 洋画【や】行

ロンドン郊外に住むマギー(マリアンヌ・フェイスフル)。
夫には7年前に先立たれ、近くに息子夫婦はいるものの、嫁との折り合いはあまりよくない。
友達。
これを友達と呼べるのか。。そんな微妙な関係の女達がマギーの回りに3人。
そんなマギーの生きがいは、孫のオリーだけだ。
だが、マギーの宝物オリーは、難病にかかっていて
すぐにでもオーストラリアの病院で治療しなければ、命が助かるみこみはないのだという。
それなのに、長引くオリーの闘病生活で、息子夫婦には渡航費用を工面する力もないのだった。

マギー自身もオリーのために家を手放し、資産と呼べるものはなにもない。
なんの資格もない初老の女に世間の風は冷たく、ローンは断られ、職の紹介すらもしてもらえない有り様だった。
呆然と街をさまようマギー。
そんなマギーの目に「接客業募集」の張り紙が飛び込んできた。
迷わず、店に入るマギー。
しかし、その「接客業」とは。。。

いわゆる。。風俗店。。だったんですね。
ラッキーホール。。という。。日本生まれのシステムらしいのですが。。。
壁にあいた穴
その穴越しに。。なんですか。。その。。男をイカせる(大汗)。。そういう接客業だったんですね。

ことの真相を知って、しり込みするマギー。
そりゃ、そうですよね。だってフツーのおばちゃんなんだもん。
でも、オーナーのミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)は、
マギーのすべすべした手が、ゴットハンド(笑)であることに気がついて、
普通なら門前払いしそうなおばちゃんに、この仕事を強く勧めるんですね。

ミキの狙いは当たって、マギーは店の売れっ子になっていきます。
売れっ子になったために、店の同僚との間に誤解が生まれたり
けっしていいことばかりではないのですが
そのたびにマギーは傷つきながらも、強く、優しく、なっていきます。

オリーのためのお金も、なんとか工面できそう。
仕事の内容はともかく。。
売れっ子になったマギーには、以前のおどおどしてる感じが消えて
どこか自信がついてきたようにも見えます。

いざとなれば、男よりも女のほうが思い切ったことができる。。というのは
本当のことなのかもしれませんね。
マギーの息子は、母親の仕事を知って激怒するやら大泣きするやらで(苦笑)
ちょっぴり情けないのですが
折り合いの悪かったはずの嫁は、マギーに素直に感謝します。
「お義母さんは、私がやるべきことを代わりにやってくれた。」と、そういう気持ちだったのでしょうね。

ロンドン郊外の小さな村。
そこに暮らすのは初老の女。
映像は、どこか薄暗く、話は淡々と進むのだけど
最後は、ほのぼのした想いが残ります。
いくつになっても道は開けるものだし、
また。。新しい恋に出会ったりもするものなのですね。

さて、この映画の主演女優のマリアンヌ・フェイスフル。
この映画で彼女の声を初めて聴いたとき、そのハスキーな声に驚きました。
ワタシは知らなかったのですが、若い頃はミック・ジャガーの恋人だったり
アラン・ドロンとも共演したりで、大変な人気だったようです。
その共演作品で演じた役が、あのルパン3世の峰不二子のモデルになったそうで、
こう言っちゃ悪いけど、このマギー役からは、想像も出来ないことです。

でも、そんな時代は長く続かず
ドラックに溺れ、酒とドラックで天使のようだった声をつぶし
一時はホームレス寸前まで落ち込んだこともあったようです。

それでも、こうしてまた復活していることを思うと
いくつになっても、道というものは開けるんだなぁ~と、強く納得させられてしまいます。

可愛い声の昔の彼女の歌よりも
ワタシは、今の彼女の歌のほうが好きです。








イタリアン続き

2008-07-25 | 洋画【や】行

前菜。
小さいグラスの中は
桃の冷たいスープ。




うん。。。桃だ。
スープですよって教えてもらわなかったら
ジュースだと思ってたかも~
焼きリゾット(パンの下になってて写ってません)というものも
初めて食べた。

アスパラと鶏肉のビアンコソース。



りっぱなアスパラの歯ざわりがとってもいい。
さすが、果樹園さん(アスパラもたしか作ってたような)のレストラン。
すこうし。。ワタシには味が濃い目かな。。と。
そう思いながら、パンにソースをつけて、おいしく完食。(笑)

デザート。



キウィのシャーベットもかぼちゃのプリンも
素材の味がしっかりと濃い。
デザートはいつだって別腹です。

さて、食べてる途中で気がついた。

昨日のお昼もイタリアンだった。。。



こんなことめったあることじゃないけど
明日の夜もイタリアンの予定だし。(汗)

。。。にわかイタリア人。。だと思おう。






善き人のためのソナタ

2007-09-03 | 洋画【や】行

すっかり映画館から遠ざかったこの夏。
見逃した映画をDVDで観て暮らしました。

「善き人のためのソナタ」
アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した作品です。
今はない、東ドイツが舞台だということしか知らなかったので
きっと、この東ドイツの「彼」が、ふとしたことで「西側」の音楽に触れて
そこから何か感動的な物語が始まるのだと思っていました。
とんだ勘違いでした。
「彼」がヘッドフォンで聴いているのは音楽ではありません。
「彼」は盗聴しているのです。

「彼」の名前はヴィスラー(ウィルリッヒ・ミューエ)。
東ドイツのシュタージ(国家保安局)の忠実な局員です。
家族がいるのか、友達はいるのか、
彼の周りには温かな人の気配は感じられず、ただただ国家の体制を守るために
働く日々です。

当時、東ドイツでは「国家の体制」にそむくものは、徹底的な処罰を受けました。
軽いジョークさえも、運が悪ければ命取りになります。
「反体制」を疑われると、極秘にシュタージの監視がつけられます。
優秀な局員のヴィスラーは、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)の監視を命じられます。

ドライマンと恋人で女優のクリスタ(マルティナ・ケディック)が暮らす家に忍び込み
盗聴器を取り付け、24時間体制の盗聴が始まります。

盗聴するヘッドフォンから聴こえてきたのは
今までヴィスラーが触れたことのない世界でした。
愛の言葉、音楽、熱く語られる文学。
この息苦しい体制の中で、なんとか自分の言葉を発したいと葛藤する
芸術家達の声でした。

ヴィスラーの内面に少しづつ変化が出てきました。
表情にこそ出しませんが、行動が全てを語ってます。

東西の冷戦の時代は突然の「壁の崩壊」で終わりを告げます。
でも、その終わりはあまりにも唐突で
突然、解放された人々は、戸惑いを隠せないようです。

事故で足を失った人が
失ったはずの足が、まだあるかのような錯覚に陥るように
あの暗黒の時代に失った大切なものを
宙ぶらりんのまま、心の中に住まわせているような状態です。

劇作家のドライマンは、なにも書けなくなり
体制側の人間だったヴィスラーは、今はチラシ配りをしています。
時代に取り残されたような二人に転機をもたらしたのは
過去の記録でした。

ドライマンは、その転機で華々しい再スタートをきりました。
ヴィスラーには、どうだったのでしょう。
相変わらず、はっきりと表情には出しませんが
ラストシーンの言葉が、心の全てを語ってました。

そのひと言は。。。ほんのひと言なんですけど
明かりが灯るような言葉でした。
暗いトンネルの中から出口の光を見つけるような明るさじゃなくて
ぼわっと
心の奥のほうから、にじみでてきたような明るさでした。
その明かりは
余韻になって
長く、続いています。











ユナイテッド93

2006-08-23 | 洋画【や】行



2001年9月11日朝。ユナイテッド93便は何事もなく飛び立った。
くつろいで朝のひと時を過ごす乗客たち。
この飛行機にテロリストが乗っていることなど、誰も知る由もなかった。
そして、あの恐ろしい事件は起こった。

今もあの映像は目に焼きついている。
想像をはるかに超えた現実に、かえってリアリティを感じることが出来なかった。
あれから5年。
「まだ」と言っていいのか、「もう」と言うべきなのか。
月日は流れて、この秋9・11を題材にした映画が相次いで公開されることになった。

ハイジャックされた4機のうち、ユナイテッド93便だけがテロリスト達の目標を遂げることが出来なかった飛行機だ。
乗客もテロリストも全員死亡したわけだけれど、残されたボイスレコーダーや乗客が機内から家族にかけた電話から、機内で起きたであろう事を想像して再現している。
誰にスポットライトを当てるでもなく、機内で起こったであろう事をカメラが淡々と追っていく。
飛行機が急降下すると映像は激しく揺れ、観ているこちらまで恐怖に陥る。

ハイジャックされた当初は楽観的に考えていた乗客たちも、電話で他のハイジャックされた飛行機がワールドトレードセンターに突っ込んだことを知ってからは、自分達の運命を知ることになる。
一か八か。
犯人に奪われた操縦桿を自分達で取り戻そうと捨て身で犯人に立ち向かう。
誰も英雄になりたかったわけではない。
愛する家族の元に生きて帰りたい一心からの行動だったのだろう。
立ち向かう乗客たちはキリストに祈り、乗客の反撃を受けたテロリストはアラーの神に祈った。
そしてどちらも最後に残した言葉は「I Love You」のひと言だった。

テロリストも私達も求めるものは同じなのだ。

「あなたの立場で考えればあなたが正しい。私の立場で考えれば私が正しい。」
いつかどこかで読んだ言葉だけど、
そんな勝手な人間達がひしめきあって暮らす世界で、もう少しお互いの立場について想像力があれば
いがみ合うことも減るのではないかと思うのは、甘すぎる考えだろうか。

帰り道、運転しながら鉄の塊とは思えないほど軽くゆったりと飛ぶ飛行機を見る。
晴れた空に銀色に光りながら軽く飛ぶ飛行機が胸に痛かった。