元プロテニスプレイヤーのクリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、コーチを務める高級テニスクラブで資産家の息子トムと知り合う。
野心家のクリスはトムの妹のクロエとの交際をきっかけに、上流社会への仲間入りをしようとする。
しかしクリスの心は、トムの婚約者で女優の卵のノラ(スカーレット・ヨハンソン)に強く惹かれていく。
自分の気持ちを偽って、クロエと結婚するクリス。
トムとノラは破局。
ノラはクリスの前から姿を消してしまう。
切れたかに見えたクリスとノラを結ぶ糸だったが、思いがけなく再会した二人は。。。。
映画はテニスコートから始まる。
勝負を決める大事なボールがネットにあたってしまう。
ボールがどちらのコートに落ちるかで勝負は決まってしまう。
最後は運。
誰を恨むことも出来ない。
ここで、すでにウディ・アレン監督の罠にはまってしまった。
ここにさりげなく仕掛けられた罠は最後に威力を発揮する。
おまけに私ときたら罠にはまっただけでなく、勘違いまでしてしまった。
「テニスプレイヤーの悲恋物語」だと。
ところが進むにつれ、出てくる人間が誰も彼も嫌なやつばかりで悲恋物語もいつの間にか泥沼化。
「不倫物か」と思った矢先にサスペンスに変わる。
どんな映画にでも、たとえ悪役でも魅力的な登場人物がいるものなのだが、
今回は見事に見当たらなかったような。
人間の持つ「黒くて嫌な部分」をクローズアップして見せてくれたのでしょうか。
ノラとクリス。貧しく育った二人が、とにかく成り上がろうとしてやっとその手がかりをつかむ。
しかし、憧れ続けた上流社会の中では居心地の悪さを感じている。
そんなときに出会った二人は瞬時にお互いの中に「同じ匂い」を感じたのだろう。
人目を避けて会い続けるうちに、同類だったはずの二人の境遇はどんどん変わっていく。
流されるままのノラと
流されながらも、自分の地位だけは手放すまいとするクリス。
二人の明暗を分けたのは握力の強さなのか。
その握力の強さを「運」と呼ぶのだろうか。
それにしても、この結末を「運」で片付けてしまっていいものなのだろうか。
最後に観客席からもれたどよめきのようなため息のような声。
これをウディ・アレンが聴いたら嬉しいだろうなぁと思ったりして。
結局、一番運が強かったのは誰だったのだろう。
クリスだろう。とは思っても、この先のクリスの人生を考えるととても幸せとは思えない。
心の底に絶対消えることのない罪悪感を抱えて、妻の一族の顔色を窺いながら暮らす一生。
彼が望んだ生活とはいえ、
最後に映し出された彼の顔は、まるで「運に見放された男」のように情けない顔だった。