チェンジ大好き人間の集まった会社は、短期業績を上げやすい。
新しいものは良いものと思い込んで飛びつく、大勢の人びとがお客さんになってくれるから。
パソコンのソフトも、新しく、新しくと躍起になって作られる。
しっかり作ってだいじに使ってもらおうなどと考えていたのでは、ソフト屋さんは商売にならない。
作るほうは専門家なのだから、ここをこうすればよいというのはわかっている。
だが、一度に改めることはしない。少しずつ改良しながらバージョンアップを呼びかける。
変わり映えがしなくなって売れ行きが鈍れば、見た目をガラッと変えて売り出す。
買い替えが足踏みを始めれば、古いバージョンのサポートを打ち切る。
いまいましいからと、古いバージョンにこだわるユーザーもいる。こだわりが強いから新しいバージョンの機能も確かめることもしない。
新しいバージョンは、実際に使ってみなければ、どこがどう変わったのかわからない。
Web の宣伝記事や印刷物では実感はつかめない。
ベータ版というのがある。使ってみてください、試用は無料ですというもの。
それならと Office 2010 を使ってみた。
手始めに Wodr を起動する。いかにもぐずいので早く起きろと言いたくなる。
はじめに開かれる文書のファイル名は「文書1-Microsoft Word(ライセンスのない製品)」と嫌味たらしい。
たびたび使うわけではないから、1ヶ月の試用期間はすぐ終わる。
その後はまったく使えないかというとそうでもない。
編集操作なしのデータの書き消しぐらいはできる。しかし、ワードなら図の編集、エクセルならマクロぐらいはできなければ、持っている価値がない。それが一切できないのである。
忌々しく思って説明をよーく読むと、こういうことが書いてある。
「試用期間が終わりに近づいていることが表示され、完全製品版に変換するかどうかが尋ねられます。試用版の期間が終了するまでに完全製品版に変換しない場合、ソフトウェアは機能限定モードで実行されます。」
プログラマーの腕は、こういう仕掛けをわかりにくくがっちり作り上げることにあるのではないかなどと、アマチュア・ユーザーはすぐにそねみ心を起こすのである。