海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

大金がもらえるのか

2009-04-27 15:47:37 | 米軍・自衛隊・基地問題
 沖縄島北部の野山はいま、テッポウユリやグラジオラス、サンニン(月桃)の花があちこちで咲いている。森では相思樹の黄色い花からイジュの白い花に変わりつつある。
 4月22日は薩摩軍により北山城が焼き討ちにあって400年目の日であった。当日は北山城趾の石段にローソクが灯され、400年前に思いをはせる取り組みがなされた、という記事を新聞で読んだ。今帰仁村コミュニティセンターでは講演会も開かれていて、参加したいと思っていたのだが、環境アセスメントの説明会と重なってしまい、城趾にも講演会にも行けなくて残念だった。
 琉球史の研究が進んで、薩摩軍の琉球侵略に関しても、新しい事実や見方が新聞で連載されている。400年前に今帰仁でどのようなことが起こったのか、研究者たちの成果に学んでいきたいと考えている。

 辺野古新基地建設に係る準備書の説明会は、三日間すべてに参加したのだが、建設推進を求める立場からの質問や意見はまったくなかった。24日に辺野古で開かれた説明会には、前の方の席に推進派の人たちが固まって座っていて、積極的に発言するのではないかと思っていたのだが、誰一人手を挙げる人はいなかった。反対の立場から質問する人に、「反対集会じゃないぞ」と野次を飛ばす人も最初はいたが、それもしだいになくなって後は黙って聞いているだけだった。沖縄防衛局からすれば、辺野古では推進派の質問もあるのでは、と期待していたのが、あてが外れた形になったのではなかろうか。
 辺野古の説明会では、辺野古区民の一人から、基地ができたら大金がもらえるという話があるが、本当にもらえるんですか?という質問があった。推進派の人たちは苦笑しながら聞いていたが、これは推進派の人たちが辺野古区民に吹聴してきたことなのだ。新基地を受け入れる条件に、一世帯あたり1億5000万円の補償金を出させ、毎年200万円をずっと支給させる。反対したらその金がもらえなくなるよ、と言って住民を切り崩してきたのである。
 常識的に考えて、そんなことがあり得ないのは、すぐに分かりそうなものだ。しかし、いまでもそれがまことしやかに語られている。辺野古ダムの周辺を切り崩したり、作業ヤードの埋め立て工事が始まったら、すぐに金が入ってくる。そう口にしている推進派の人もいるという。それを聞いて、そんなことはあり得ない、お金がもらえれば基地を建設させていいのか、と批判する区民ももちろんいる。しかし、そのような金の話にからめ取られている人がいるのも事実なのである。
 説明会で沖縄防衛局側は、基地受け入れの負担を考慮して地域に適切に予算措置をはかる、云々と述べていた。当たり前のことであり、一世帯あたりに補償金を出すと言うはずがないし、それができるはずもない。しかし、住民の目をくらまし、不満を解消するための麻薬は色々な形でばらまかれる。
 限られた時間だったとはいえ、説明会の質疑応答を通して準備書の問題点の多さ、沖縄防衛局の対応のでたらめさが、改めて浮き彫りになった。説明会に参加した人たちが新聞その他への投稿やビラ、ブログでの発信などでそれを明らかにし、世論を形成していくことがこれから重要になる。
 説明会で目にした沖縄防衛局の対応は、彼らが沖縄県民のことなど何も考えていないことを示している。彼らが守るのは米軍の利益であり、沖縄米軍防衛局と看板を掛け替えた方がいい。そういう彼らの思い通りにことを進めさせてはならない。

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