海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

普天間基地の燃料流出事故

2009-04-24 14:36:49 | 米軍・自衛隊・基地問題
 4月24日付琉球新報朝刊に〈普天間環境汚染 事故通報3件のみ 99年から今年3月 日本把握、米資料と開き〉という見出しの記事が載っている。〈米軍普天間飛行場で一九九九年ー二〇〇六年の八年間で少なくとも十六回の燃料流出事故が起きていたにもかかわらず、九九年ー〇九年三月までに日本政府に報告された同基地での環境汚染事故の件数はわずか三件だったことが二十三日明らかになった〉という。大妻女子大学非常勤講師(環境経済学)の林公則氏が、米情報自由法で入手した資料から明らかになったとのこと。一九九七年に日米両政府で合意された、〈米軍基地内で公共の安全または環境に影響を及ぼす事件・事故が発生した場合、米軍はできる限り速やかに外務省と沖縄防衛局に通報する〉ということが、まるで守られていない実態が明らかになっている。
 昨日、宜野湾市松田で開かれた環境アセスメント準備書の説明会では、新基地から排出される汚水が、宜野座村海域で養殖されているモズクに影響を与えるのではないか、という懸念が住民から述べられていた。燃料流出事故による海洋汚染も従来から言われてきたことであり、それが現実のものとなる危険性が高いことをこの記事が示している。海洋に面した辺野古新基地での燃料流出事故は、燃料がすぐに海に流れ出し、周辺の藻場やモズクの養殖場などを汚染する。海藻、海草を食べているジュゴンや海亀、そこに生息している魚介類、そして漁民の生活に壊滅的な打撃を与えかねない。
 事故発生の通報すらろくに行われていないのだから、基地内で米軍がどのように事故処理したのかを、日本政府・沖縄防衛局は当然把握できていない。これが普天間基地の運用の実態なのである。中曽根弘文外相は通報が行われていないことに、〈「十六件の事案については現在米側に確認中だが、九七年の日米合意に基づく通報の対象となる事件・事故に該当しない事案であったことから日本側に通報がなかったものであると認識している」〉と述べて、問題視しないことにしているという。要は日米合意といってもすべては米軍まかせであり、通報するかどうかは米軍しだいと言っているに等しい。米軍が〈公共の安全または環境に影響を及ぼ〉さないと判断すればそれまでであり、その判断が適切か否かを日本政府は確かめることもない。
 普天間基地は返還されたあと、土壌汚染の実態が明らかになり、大規模な表土の入れ替えが必要ではないかと言われている。米軍基地が返還されても、PCBや油類で土壌が汚染されていて、その対処に時間がかかり、地主が損失を被ることがこれまでも問題になってきている。基地内の環境汚染の問題は、住民への直接の被害だけでなく、返還後の後利用にも影響を及ぼすものであり、通報がないから小さな事故だったのだろう、と安易に判断してはならないのだ。
 外相からしてこういう姿勢なのだから、役人たちの姿勢も知れている。この二日間の説明会で明らかになっているのは、沖縄防衛局とは沖縄の米軍を防衛し、奉仕する局でしかないということだ。沖縄の住民の生活を守ろうという視点は全くなく、米軍のために最高の基地を造ってさし上げようという、米国に隷従した「属国」の哀れな公僕=下僕の姿をさらしている。
 説明会で司会をしているフクシマ、質疑応答に対応している調査部長カワイ、調査次長ヨシダ、企画部長アカセ(?)、企画次長ササヤマといった面々は、苗字や物言い、風貌からしてヤマトゥンチューだろう。国家公務員の彼らは、新基地ができたとしても、その頃には人事異動で沖縄にはいないはずだ。与えられた仕事をこなして出世することしか頭にはない連中が、舌先三寸でごまかして説明会をのりきり、新基地建設によってもたらされる被害を沖縄県民に押しつけていくのである。
 昨日の松田区の説明会では、会場の後方から、いったーヤマトゥンチューがる、むぬ決みいんなー、と大声で怒鳴っている60歳前後の男性がいた。そういう怒りも、抗議の意志も、表出されて初めて力を持つ。文字化されない肉声が持つ力、意味、大切さがある。優等生の役人たちは文字化された情報の処理には長けていても、そのような肉声の力に対処する能力は低い。だから時間制限をして抑え込むしかないのだ。また、文書ではごまかせる嘘も、肉声にすると表情も含めて露出する。沖縄防衛局の役人たちが説明会を嫌がるのそれが理由だろう。
 普天間基地の燃料流出事故とその通報の実態は、今日の辺野古区の説明会でも問い質すべき重要な問題である。

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