海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

小林よしのりの盗作問題 2

2008-11-28 23:54:24 | ゴーマニズム批判
 「引用と二重基準に問題」という沖縄タイムスに発表した文章を『沖縄・地を読む 時を見る』に収録する際、追記を付け加えたので以下に紹介したい。単行本では『沖縄の青春 米軍と瀬長亀次郎』の引用部分と比較できるように『新ゴーマニズム宣言SPECIAL沖縄論』の337~338ページを途中に引用してある。関心のある人は実際に小林の漫画と『沖縄の青春』からの引用とを比べてみてほしい。

 [追記]
 小林よしのりの引用の実態については、百聞は一見に如かずで、以下に引用する佐次田勉『沖縄の青春 米軍と瀬長亀次郎』(かもがわ出版)の一節と、小林よしのり『新ゴーマニズム宣言SPECIAL沖縄論』(小学館。カット参照)を比較してみてほしい。
〈また、「瀬長さんを守るには税金を納めることだ」と市民による自主的な納税運動が起こった。カメジローの自宅に顔をだし、「金を借りてでも税金を納めるからね」と声をかけ、妻のフミさんを感激させる人もいた。当時、瀬長市長の秘書を務めた伊波広定元県議は、「税金を収めにきた市民の列が、市役所や首里支所の建物まで約五百メートル続き、みんなでワイワイおしゃべりしながら順番を待っていました。あの光景はいまでも忘れられません。ほんとに感動的でした」と語る。毎日の生活を送るだけでも大変な時代、誇りあふれた表情で税金を納めにくる市民、カメジローは「こんな素晴らしい市民はない」と心底思い、励まされた〉(『沖縄の青春』一四六ページ)。
〈さて、集まった税金は備えつけの金庫には納まらない。かといって銀行に預けると〃凍結〃されかねない。係長が市長室に相談に飛び込んできた。
 係長 市長、外の様子をご存じですか。
 市長 よく見えるよ、ここから。笑顔で税金を納める市民がどこにいるか。われわれは那覇市民に誇りをもとうじゃないか。
 係長 はい。ところで大型金庫が幾つも必要なんです。
 市長 必要なだけ手配しなさい。
 「はい」といって市長室を出かかった係長は、少し照れた、しかし嬉しそうな表情で戻ってきて、「市長、もう一度握手をお願いします。あなたを市長に持てて誇りに思います」とカメジローの手を強く握りかえして言った〉(一四七ページ)。
〈大型金庫が四台運び込まれた。職員が自主的に申し出て徹夜で金庫番することになった。(中略)納められた税金はただちに活用された。「資金凍結」でストップしていた架橋事業、ポートターミナルの建設、通学路にかける橋、区画整理事業などがいっせいに再開され、作業現場ではブルドーザーのエンジン音が勢いよく響き、労働者の活気にみちた声がとびかっていた。那覇市民は、文字通り自分たちの力で街づくりをはじめたのである〉(一四七~一四八ページ)
 ここまであからさまな引き写しは、もはや引用ではなく盗作と言うべきではないか。登場人物の台詞や説明文はもとより、作画から構成まで『沖縄の青春』の文章に基づき、語句をそのまま使うか、わずかに並べ替えたり、切り貼りしているだけなのである。反瀬長派の議員や前市長と癒着した財界人が税金を払っていなかった問題以降の展開も、『沖縄の青春』の要点をまとめたものにすぎない。
 『沖縄論』が発行された後に佐次田勉氏に電話で確認したところ、小林よしのり氏やその事務所から『沖縄の青春』を利用することについて事前の連絡は一切なかったと明言していた。第19章「亀次郎の戦い」の中でも、『沖縄の青春』を引用あるいは利用してことへの言及はまったくない。巻末の参考文献一覧には書名が記されているが、不思議なことに瀬長氏関連の他の著作は四〇六ページにまとめて挙げられているのに、『沖縄の青春』だけが四〇四ページに切り離されて挙げられている。これもかなり不自然だ。
 小林氏は『沖縄論』のあとがきで次のように記している。
〈驚いたのは取材中、肝心の沖縄の若者たちも、いや沖縄のマスコミや言論活動に携わる知識人たちまでもが、沖縄の歴史を知らないという現実に直面することだった〉
 よく言うよ、まったく。『沖縄論』に協力した沖縄大学の宮城能彦教授以外に、小林氏が沖縄の知識人の誰に取材したというのか。「沖縄の歴史を知らない」知識人とは宮城氏のことだろうか。参考文献一覧に挙げられている書物をあらかた読んでいる者なら、小林氏がどれだけ沖縄のマスコミや知識人が執筆・編集した書物に依存しているかが分かる。にわか勉強した自らの知識を誇大に見せるためにはったりをかましているのだろうが、高々一年「取材」(居酒屋でのおしゃべり?)してここまで言えるおめでたさには呆れるしかない。そのゴーマンさが他人の著作の引用にも通用すると思ったら、大きな間違いだろう。

 小林は〈沖縄のマスコミや言論活動に携わる知識人たちまでもが、沖縄の歴史を知らない〉とほざいているのだが、おそらくは佐次田氏の『沖縄の青春』を読んでいる沖縄の知識人などいなくて、ましてや自分の漫画と『沖縄の青春』を照合する者などいない、と高をくくっていたのだろう。沖縄についてしょせんはにわか勉強に過ぎないことを誤魔化すために、ことさら沖縄のマスコミや知識人をこき下ろしているのだが、盗作までやってはおしまいだろう。
 私の指摘が誤っていると小林が思うのなら、ぜひ「誇り」を持って反論してほしいものだ。

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