海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

40年前の叫び

2010-12-26 01:07:42 | 米軍・自衛隊・基地問題
 24日は午後7時半から放映されたNHKの「きんくるスペシャル版/第1部 コザ騒動40年」に出演した。40年前の映像や現在の現場の様子、「コザ騒動」に参加した人々、取材したジャーナリスト、聞き取り調査をしているグループなどの話をまとめたビデオを見ながら、ゲストの一人として話をした。もう一人のゲストは当時、現場で取材したジャーナリストの吉岡攻氏。
 40年前、私は10歳で小学生だった。今帰仁村は当時も今も米軍基地が存在しないので、コザの街とは生活環境がかなり違う。それでもテレビや新聞報道(番組では沖縄タイムスの号外も紹介された)、口づての話を通して、コザで大変なことが起こった、ということは伝わっていた。大人たちの話やテレビのニュースなどを通して、騒然とした時代の雰囲気というのは子どもなりに受けとめるものだ。
 コザ騒動の翌年だと思うが、家族で那覇に行った帰り、中部まできて父親の運転する車が警官に止められた。米軍の毒ガス輸送が行われていて、後部座席からフロントガラス越しに、毒ガスを積んだ米軍のトレーラーが何台も通っていくのを目にした。
 そういう体験はあるにしても、今帰仁で生まれ育った私が、40年前のコザで生活していた人たちの状況を想像することは容易ではない。「コザ騒動」については以前から関心があったので、残された映像や写真、証言、新聞記事やルポルタージュ、小説や映画などを手がかりに自分なりに考えてきたのだが、体験していないウチナンチューが体験した人たちの気持ちをどうくみ取り、今の沖縄の状況と関わらせながら「コザ騒動」が持つ意味を考えていくのか。そういう問題意識を持ちながら参加した。
 番組では、新城卓監督『沖縄の少年』のコザ騒動のシーンが撮影されたときの様子や、パークアベニューの近くに住んでいた1995年頃の様子、今も変わらない米軍や日本政府の傲慢さなど、いろいろ話した。内容への評価は見た人にまかせるとして、40年経った今、「コザ騒動」が沖縄の歴史に占める意味の大きさを改めて認識させられている。
 「コザ騒動」は騒動、暴動、事件、蜂起、決起などいくつもの表現が使われるが、80台以上ともされる米人車両が焼かれ、基地内の学校施設まで放火された事態の大きさを見ると騒動という言葉では軽すぎる。あれほどの騒ぎの中で一定の秩序が保たれていたことを考えると暴動も適切ではない。事前の準備や計画がなく自然発生的に起こったことを見れば蜂起、決起という言葉とも少し違う。既成の言葉ではうまく言い表せない複雑さ、多様性を持っていることが「コザ騒動」の特色であるのだろう。
 「コザ騒動」が起こった1970年前後は、安保・沖縄闘争やベトナム反戦闘争、学園紛争が盛んだった時期であり、全国で激しい闘争が行われていた。それらの闘争の担い手は学生や組織労働者が主であったが、「コザ騒動」は違う。米軍資料で7000名とされる参加者はコザの庶民が主であり、ふだんは米兵を相手に商売をしている飲み屋の店員も多かった。多様なウチナンチューが米軍犯罪や高圧的な支配への怒りと同時に、基地に依存して生活している矛盾を抱えながら、一夜の火柱を噴出させた。
 その時に放たれた火は、今も多くのウチナンチューの心の底に消えずに残っていて、変わらない基地の現実や傲慢な米軍、日本政府の姿勢をにらみながら燻り続けているように思う。「沖縄のマグマ」ということが言われるとき、それが噴出したイメージとして多くの人が抱くのは、やはり「コザ騒動」だろう。
 下の映像は12月20日の沖縄テレビのOTVスーパーニュースのものだが、多くの人に見てほしいので紹介したい。

http://www.youtube.com/watch?v=pT9c220X0xI

 冒頭に出てくる記録映像の青年の叫びは、聞くたびに胸を打たれる。



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6 コメント

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放送「パレスチナ響きあう声」 (京の京太郎)
2010-12-26 09:06:30
 京都では放送されない番組で、見ることが出来ないのが本当に残念です。 

 11月28日、京大の岡研究室主宰の徐京植さんの講演会に参加することが出来ました。
 その講演のなかで、京植さんがラジ・スラーニさん(国際弁護士・パレスチナ人権センター主宰)と沖縄で初めて出会った2003年時に製作されたNHKのドキュメンタリー番組「パレスチナ響きあう声」の再放送(予定)が12月28日(火)22時からNHK衛星ハイビジョンであると紹介されていました。

 土地を・・・奪うものへの闘い、そして継続する植民地主義との闘いをお二人が沖縄の地で語り合われたということでありましたが・・。
 
多くの方に見てほしいと思い投稿しました。
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青年の叫び (京・美ら雑草)
2010-12-27 23:21:50
 沖縄テレビのOTVスーパーニュースを紹介いただき、ありがとうございました。
 目取真さんが胸を打たれたという冒頭の青年の叫びを共有したいと思い、何度も聞きなおしました。
 以下は、不完全ですが、自分なりにメモしたものです。
『・・今日、こちらで・・アメリカ人が沖縄人を引き殺して逃げようとしたところ・・アメリカ人が・・引いた車にね・・やがて あわや沖縄人は死んだかもしれない  このような状態におって 私は悲しい  沖縄はどうしたらいいのか  沖縄県民の・・たたかいを・・・』
 一部聞き取れないところはあっても、あの青年の思いが、その声と抑揚を通して、私の胸に沁みこんでくるのです。
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青年の叫びについて (目取真)
2010-12-28 02:42:14
現場の映像とともに記録されている青年の叫びは、OTVが編集した後にもっと続いています。
「やいびーさ兄さん」と呼応する別の男の声もあります。
MPが威嚇発砲したことにも触れていますので、「コザ騒動」の最初から現場にいたのでしょう。
別編集の同じ映像があるかと思いますから、ユーチューブで探してみたらいいと思います。
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お詫び (京の京太郎)
2010-12-28 08:48:43
今日の新聞のテレビ放送欄を見ましたが、「パレスチナ響きあう声」の放送はないようです。

未確定の情報の投稿、申し訳ないです。





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「パレスチナ響きあう声」の放送 (京の京太郎)
2010-12-28 09:47:14
BS3、NHKハイビジョンで22時より放送のようです。
普段見ないテレビ番組紙面でしたので、見逃していました。申し訳ありません。
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感謝 (kazzuu)
2011-02-07 21:32:38
沖縄テレビのOTVスーパーニュースの紹介ありがとうございました。
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