海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

佐喜眞美術館シンポジウム

2008-06-22 23:47:05 | 沖縄戦/アジア・太平洋戦争
 昨日は午後から佐喜眞美術館でシンポジウムに参加してきた。沖縄戦が15年戦争の最終段階の戦争であり、日本のアジア諸国への侵略の帰結であること。大江・岩波沖縄戦訴訟が靖国応援団を自称する弁護士グループや自由主義史観研究会などによって起こされたこと。同裁判と教科書検定問題の背景にある対中国を想定した沖縄の自衛隊強化の現状。渡嘉敷島の「集団自決」における赤松元隊長の命令についてなどを話す。映画「それは島」からシンポジウムまで四時間余、参加者が集中して話を聞いてくれたので助かった。
 終了後の交流会のなかで、県内の小学校が「慰霊の日」に向けて「集団自決」をテーマにした劇にとりくんだところ、県外からメールやFAXで圧力をかけられたことが話題になる。そうやって個々の学校のとりくみにまで県外から圧力をかけてくるのは誰なのか。推して知るべきなのだろうが、き然とした態度で上演を成功させた生徒達や学校職員、保護者には敬意を表したい。
 明日は「沖縄戦慰霊の日」である。県内各地の慰霊塔には、早朝から遺族が訪れる。あるいは自宅の仏壇に向かって、手を合わせる人も多いだろう。司令官の死を持って設定された「慰霊の日」ではなく、肉親の死んだ日を「慰霊の日」にしている人もいるだろう。米軍再編と自衛隊強化を進める福田総理大臣や仲井真県知事が出席する県の慰霊祭よりも、各地域の慰霊塔や個々の家族で行われる祈りにこそ目を向けたい。

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3 コメント

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Unknown (かむじゃたん)
2008-07-03 08:43:04
遅ればせながら、7月3日の沖縄タイムスに
報告が載った。Y記者のレポートか。

目取真氏、「沖縄戦は15年戦争の帰結」。
ボクは、日本の近代化=富国強兵・脱亜入欧の
帰結といいたい。「明治維新」前より「征韓論」は
あった。そして、沖縄戦の犠牲がありながら、
「日本」という国家は連続している。
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起点について (目取真)
2008-07-03 12:39:36
佐喜眞美術館のシンポジウムでは、「15年戦争の帰結」という言い方のほかに、「日本のアジア侵略の帰結」という言い方もしています。
沖縄戦の起点をどのように設定するかは、沖縄戦の何を問題にし、どのように論じるかという内容との関連で決まるものでしょう。
同シンポジウムでは、満州傀儡国家の建国以降、南京虐殺など中国に侵略を拡大していく日本軍の中に沖縄人もいたこと。沖縄人の加害責任を問うという視点から「15年戦争」を起点として設定しています。
日本の近代化はアジア諸国への侵略=植民地支配をともなっていますから、「琉球処分」=日本国家への統合を起点に沖縄戦を論じることも、もちろん可能でしょう。
シンポジウムでは少しだけ触れましたが、沖縄大学の又吉盛清教授が『台湾支配と日本人』(同時代社)で論じている、アジアへの植民地支配を担った沖縄人の問題が、最近の沖縄戦に関する報道では弱くなっているように思います。
沖縄戦を論じるときにも、アジア諸国に対する加害責任を自らに問う姿勢を持ちたいものです。
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Unknown (Stray-Cat)
2008-07-03 22:01:47
「加害」で思い出したのは、『島くとぅばで語る戦世』の、中国に出征した老人の経験談。彼は、新兵の訓練と称して、多数の中国人(だったと思う)捕虜を生きたまま槍で突くという『百人斬り』そのものの経験をさせられた、いや、した、という。大陸では沖縄人も皇軍の側にいたのは紛れもない事実。目取真氏曰く、沖縄戦でも軍の側に率先して加担した地域のリーダーやスパイを密告するような村人がいた。自ら皇国を内在化してしまう、我々のこの弱さを見つめずして、沖縄戦の教訓はない。これはまた、氏の言う所の、基地強化を率先して引き受けようとする自治体の長をはじめ、基地に依存する生き方をして何ら恥じない気概のない今の沖縄人の精神構造と同じ、我々は戦後も自らの精神の弱さを克服できていないということ。耳が痛い。集団自決など歴史認識問題と、基地問題は切っても切れない関係にあることを改めて思った。これはユタがいうところの、苦揺ブトチ(罪を明らかにして神様に詫びる)ができないと、またんチヂ下りスンドーということ、というと叱られるかしら。        小学校の新指導要領で沖縄戦を教えることになったという報道で、第二次世界大戦おける日本の「被害を教える」といっていた。心配になってきた。

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