ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

うま安

2022-10-24 01:34:40 | 食事
うま安とは、愛知県四日市市の居酒屋である。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの一時帰国休暇だ。夕方成田空港に降り立った筆者は、フライト疲れを癒すことなくすぐさま長距離列車を乗り継ぎ四日市へ向かった。2022年7月、日本国内への入国にはアメリカ出国72時間前までのPCR検査によるコロナウイルス陰性証明が必要だ。検査の確認は指定されたアプリで行う。入国審査カウンターへと歩く区間、空港係員が各所に立っており、『アプリの緑の画面を出しておいてくださーい』と声を張り上げていてる。この光景だけを見ると、デジタル化が省人化に寄与しているようには思えない。それでも筆者はそのアプリ確認の行列で、虎舞竜のボーカルのような名の、ハワイでサッカーチームの監督をされている方と少しだけ仲良くなったりもしたので、割と楽しい時間でもあった。



この居酒屋の詳細は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。



①四日市の町
ビジネスホテルでチェックインを済ませた後、疲れた体で酒場を探しに歩く。午後9時をまわった頃の近鉄四日市駅周辺は歓楽街の香りだ。それも若者の町というよりは、中年男のための町の雰囲気だ。中京工業地帯の工場勤務者や出張中のサラリーマン狙いの酒場、スナック、その他の店が並び、客引きがたむろする。だがコロナの影響もあるのだろう、客足は多くなく、筆者のような怪しい30代独身日本式サラリーマン風の男にも客引きは寄ってくる。しかし帰国した当日だ。ついついニッコニコで『NO, Thanks! 』と答えてしまい、パツ金ロン毛の客引きにぎょっとされてしまった。



②居酒屋うま安に入る
30代独身日本式サラリーマンの酒屋選びは自然と裏通りに足が向かう。銀行裏の路地に入り込むとポツポツと酒屋の灯があり、そこでうま安に遭遇した。民家の外壁を白壁風にした昭和の面影残る酒場である。引き戸をあけて暖簾をくぐると、奥のテーブル席にサラリーマングループ1組あるのみで落ち着いた雰囲気だ。L字に仕切られた調理場カウンター内には男性と女性がいて、女性店員に “22時には閉めてしまう” と言われる。ゆっくりはできないが、閉店まで小一時間居座ることにして、手前のカウンター席に腰かけ、瓶ビールを注文する。目の前の生け簀に小さなアジが泳いでいる。



③居酒屋うま安で飲む
もう一人の大将風の男性店員は、注文や支払いなどの客とのコミュニケーションをもっぱら女性店員(おそらく女将さん)に任せているようだし、愛想を振るう様子もなく黙々と調理をしている。女将さんとのやりとりも基本不機嫌そうで、昭和がんこ男の雰囲気が溢れている(この日たまたま機嫌が悪かっただけかも知れない)。日本酒メニューがたいへん豊富で飲みたくなり、カウンターに向かって『すみません、日本酒は1杯から頼めるものですか?』と声をかけても、大将はこちらを見てうなずくだけであった。こういう酒場は好きだ。



④居酒屋うま安でまだ飲む
タイの刺身と甘辛い鶏モツ煮をつつきながら、瓶ビールの次は筆者の地元の酒を飲む。女将さんが優しく「閉店も近いのでメインになるものはいかがですか」と尋ねてくれたので、豆腐ステーキを頼んだ。大将が無言で作り始める。これが山芋入りのフワフワでまた美味であった。筆者は続けて伊勢の酒“宮の雪”を注いでもらう。これもよい酒だと女将さんに伝えると、普段は伊勢の酒をたくさん揃えてあり、飲み比べセットなどもあるのだといろいろと教えてくれた。大将はやはり無言だ。どうやら普段はもっと遅くまで開けているようだが、仕入れのせいなのかコロナのせいなのか、早仕舞いをしている様子だ。こういう趣のある酒場には、頑張って残ってもらいたいと思いつつ会計を済ませた。




店を出てホテルに戻る途中、空いている台湾料理屋を見つけてしまってついつい入り、ラーメンを食べた。隣のテーブルでは飲み会終わりの小学校教師グループがおり、酔った男性教師が大きな声で教育論をぶち上げている。久々に日本に戻って日本語を聞くと、やけにクリアに耳に入ってくる。しかも米国ではなかなか聞けない酒場での酔客の論議に、“あぁ日本に帰ってきたのだな”と実感する。筆者がこれまで四日市市について知っていたのは喘息だけで、三重県なのか愛知県なのかすら知らずにいた。駐在員として長く異国にいると、日本国内の様子に詳しくなる機会が失われてしまうので、できるだけ知らない町に降り立って、知らない町で過ごすのがよいように思う。そんなことを考えながら、台湾料理屋で豚骨ラーメンを注文したことを悔やみつつ、筆者は安宿に戻った。