高齢であるし、足を痛めているから、式は欠礼させていただきます…とのことで、父の古い友人から書留が届いた。お花料とともに、便箋何枚にも渡る、長い手紙が入っていた。
父の高校時代に何人かで親しくしていた、友人のひとりだ。
父は「高校時代の友達は、ちょっと違うんだ。」なんて言って、その友人たちを特別に大切にしているようだった。
青い万年筆で書かれていたその手紙には、二人が知り合ったきっかけや、親しくしていた様子とともに、もう、50年も前の事だからいいですよね、と前置きをして、父は早熟な男だった…思いを寄せる女生徒のことを打ち明けられたり、映画館のなかで、おしゃべりな下級生の女の子の唇をキスでふさいでやった…という話を父から聞いたりして、いいなあ、おれたちもやってみたいなあ…と思ったものでした、などと書かれてあった。
お、おとうちゃん…。そうだったのねん。
わたし、ちょっぴり腰砕けましたぞ。娘の前では、ストイックな父親だったもので。母とは仲良かったけどね。
いやはや、親のそういうの知るのって、びっくりしますなあ…。でも、父親の高校時代の姿を思い浮かべて、興味深くもありました。
さっそくにどまりに話しに行くと、彼は頭を抱えて、「あんた、絶対、おとうさんの血ひいてる。」とビシッと言われましたよ。そ、それはあれですかい、あんたとはじめてふたりで会った日にわたしがあんたに…ゴニョゴニョ…したことを言っておるんですかい。
もきゅー…。遺伝子ってこわいなあ。どこまで染色体上に書き込まれているんだか。
お手紙には、他にもいろいろ書かれてあったんだけど、映画館でのキスの話があんまりキョーレツだったので、他のこと忘れちゃいましたではないですか。
そして、わたしが母に代わって、お返事書いて出しました。高校時代の友人の娘から届く手紙って、割といいんじゃない?なんてね。