読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「仕事」を極めた9人の伝説、「サービスの達人たち」(野地秩嘉著/新潮OH文庫)

2007-12-12 03:17:01 | 本;ビジネス
<目次>((年)は初出年、「・・・名前」は本ブログ筆者)
ロールスロイスを売り続ける男(1998年)・・・・・・・・・・飯島弘大
東京っ子が通う「並天丼」の魅力(書き下ろし)・・・・・・・井上孝雄
ナタリー・ウッドの背中を流したかった(1995年)・・・・・・笠原五夫
チーフブレンダーの技と素顔(1997年)・・・・・・・・・・・稲富孝一
伝説のゲイバー、接客の真髄(1994年)・・・・・・・・「お島さん」こと島田正雄
命懸けで届けた被災地への電報(1995年)・・・・・・・・・・大熊松蔵
銀座より新宿を愛したナンバーワン・ホステス(1996年)・・「紅」こと近藤典子
「怪物」と呼ばれた興業師(書き下ろし)・・・・・・・・・・・・康芳夫
ヘップバーンも虜にした靴磨き(1995年)・・・・・・「源ちゃん」こと井上源太郎

本書に登場する9人の達人たちの話はいずれプもロとしての気概に満ちた「職人技」を教えてくれます。本書の初版は2001年で、目次に付記したようにそれぞれがおよそ10年前のものです。ここでは、できる限り彼らの今を追ってみたいと思います。

飯島弘大(ひろお)(昭和31生まれ);(掲載時職業等;コーンズ&カンパニー・リミテッド営業課長)
著者は飯島氏のセールスマンとしての三つの優れた特徴をあげています。
①商品の情報に詳しいこと
②客との距離をうまく取っていること
③長い目で仕事をしていること

飯島氏について、プレジデント社の桂木栄一氏が「Pesident on line」(2003年6月2日)の記事「金持ち父さん、貧乏父さん」の中で、高級車のベントレーに試乗する機会を得た際のエピソードを次ぎのよううに書いています。

「今回の試乗会のアテンドをしてくれたのはベントレー・ジャパンPR担当マネージャー飯島弘大さん。実はこの飯島さんは元営業マンで、日本一ロールスロイスとベントレーを売った男なのである(プレジデント1998年2月号「こんな時期に『超高級車』を売りまくる男」で紹介。その後加筆され、『サービスの達人たち』野地秩嘉著〈新潮OH文庫〉に収録された)。というわけで飯島さんは「日本一、金持ちたちと接しているセールスマン」の一人といって過言ではない」。

「『この前のお客様は<ロールスとベントレーとフェラーリを3台まとめて買うから、いくら負けるんや』と言われていましたが、お金持ちのお客様に限って、細かいお金の話に熱心なところがありますね>飯島さんは控えめに語るが、要するに世のお金持ちはお金持ちほどお金にうるさくケチということだろう。だからお金が貯まるのだ」。Pesident on line2003年6月2日

井上孝雄(昭和26年生まれ);天ぷら屋「天兵」店主
特に最新の情報はありませんが、今も千代田区神田須田町1-2で営業中のようです。

笠原五夫(昭和12年生まれ);三助~複合型銭湯「松の湯」オーナー
笠原五夫さんは「東浴信用組合本店」(平成19年6月25日現在)で理事長から監事を務めておられます。


稲富孝一(昭和11年生まれ);サントリー・チーフブレンダー
稲富さんは現サントリー(株)社友で、現在「[Ballantine's] 稲富博士のスコッチノート」というHPを公開されています。(http://www.ballantines.ne.jp/enjoy/inatomi/)

著者はブレンダーという仕事の根幹、新しい味をイメージする能力、それはどういったトレーニングが必要なのかと稲富氏に問いかけます。稲富氏はソムリエとブレンダーを比べながら、次のように述懐します。

「ソムリエの仕事で大切なのは、私は利き酒の能力じゃないと思う。それはね、お客さんを見ることなんじゃないか。このカップルはどうしてフランス料理を食べに来たのか、誕生日なのか、デートなのか。懐にはいくらくらい持っているのか。若いカップルだからといって、安いワインを薦めたんじゃ男は怒るだろう。男は見栄っぱりだから。そういうことを考えて、料理や懐具合にあわせてお客さんの喜ぶワインを見つけることがソムリエの仕事じゃないか。人間を見るというのが彼らの仕事の本質だよ」

「一人ひとりの顔を見ることじゃないけれど、ウィスキーを飲む人の顔を思い浮かべるとうのがイメージの造形に役立つかもしれない。新しい酒を造ろう、造ろうと製品の方にばかり目がいっても駄目だ。ああ、そうだ、人間を見て人間を面白がることがイメージをつくるのに一番いい、かもしれないなぁ」

島田正雄(大正8年生まれ、平成8年死去。享年76);ゲイバー「やなぎ」オーナー

大熊松蔵(昭和7年生まれ);NTT千代田電報配達所・嘱託勤務
最新の情報は特にありません。

近藤典子(昭和24年生まれ);サパークラブ「紅」オーナー
最新の情報は特にありません。


康芳夫(昭和12年生まれ);
「週刊読書人」2005年5月13日(6日合併)号.康芳夫氏インタビュー/聞き手=坪内祐三」に掲載。康さんは、東京生まれ。東大卒。大学卒業後、興行師・神彰のアートフレンドアソシエーションに入社。「自伝『虚人魁人 康芳夫』(学研)」で語られているように、今や伝説となった数々の興業に携わる。


神彰(1922~1998);1950年代から60年代、日本に呼ぶのは難しいときれていたソ連のポリショイ・バレエ、レニングラード交響楽団、ボリショイ・サーカスなどの公演を実現させ、一世を風靡した、元祖「呼び屋」。


永島達司;「ビートルスを呼んだ男」として名高い。昭和30年代、新会社「協同企画(のちのキョードー東京)を設立し、より積極的に海外アーティストの招聘に乗り出します。


井上源太郎(昭和24年);キャピタル東急ホテル・シューシャイン
~(株)アクエリアス情報研究所 担当 織田直子http://www.aquarius.co.jp/index.html~
特集~「ヘップバーンも虜にした靴磨き」に会った!(2006年08月22日付け記事)
「かつて、レポートで紹介した日本一の靴磨き師『源ちゃん』。大物政治家からオードリー・ヘップバーンやマイケル・ジャクソンらまでも魅了するその技とプロ根性に惹かれ、いつかお目にかかりたいと思うこと7年。うっかりその存在さえも薄らいでしまいそうになった昨今、ひょんな縁でお目通りがかなうことになった」。

「ホテルオークラの地下にある華やかなショッピングアーケードのかたすみ、ワックスの臭いが漂う畳三畳ほどの仕事場で靴と向き合う「源ちゃん」の姿は神々しく見えた。「源さんですか?」おそるおそる尋ねると、人なつこい笑顔で『ハイ』と応えてくれた」。


野地秩嘉(つねよし);
昭和32年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。美術展のプロデューサーを経て、ノンフィクション作家に。美術、食、海外文化評論、人物ルポルタージュなど広範な分野で活躍している。主な著書に、『キャンティ物語』『ビートルズを呼んだ男 伝説の呼び屋・永島達司の生涯』(共に幻冬舎)、『サービスの達人たち』『サービスの天才たち』(共に新潮社)、『皿の上の人生』『ニューヨーク美術案内』[千住博氏との共著](共に光文社)、『もてなしの心 赤坂「津やま」東京の味と人情』(PHP研究所)などがある。

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