風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

子育てや日記の果てる感もなし 【季語:日記果つ】

2019年12月28日 | 俳句:冬 人事
その年も一年間
何とか日記を続けることが出来ました

忙しくて二週間分をまとめてつけたりと
記憶が虫食い状態になっている部分もあるのですが
続けることに意義があるものと
言い訳をしながらやっていました

その年の日記には
子供たちの成長の記録も
大分記載されています

半年前まではハイハイもできなかった子供たちが
いまや歩き始め
ますます目が離せなくなっています

一年の終わりをそっと振り返る
そんな内容で一年を締めくくりたかったのですが
そんなことを考えている暇も
もらえそうにありませんでした

Haiku 寒戻り

2019年12月27日 | Haiku
色とりどりの花が咲き
軒先の賑やかな花屋

ついつい手に取り
家の狭いベランダに置いてみたくなります
いつも枯らしてしまうのですが

───☆

冬の寒さが戻り
華やいでいた花々がしょげたように見えて


☆-- Haiku --------------------------------------------------☆

freezing cold return
bouquets lose cheer
unlit flower shop

☆-- 俳   句 --------------------------------------------------☆

鉢植えはしょげて花屋の寒戻り

Hachiue-wa shogete hanaya-no kanmodori


寒い日は寒さが嫌になり
暑い日には暑さを嫌がる
人は我儘ですね

冬の夜に 【詩】

2019年12月26日 | 
「冬の夜に」

冬の夜の胸の内は深く冷たいがらんどう
助けを求めている僕のうつろな言葉が
寂しい木枯らしのようにか細く高く鳴っている

冬の夜の胸の内には冷たい粉雪も舞い込んで
真っ白に視界が閉ざされてしまう
僕の思いはその中に埋もれた小さな石礫
誰も拾い上げるものはいなくて

冬の夜の胸の内は細かく震える
白い溜息以外には
許されているものはない僕は
当て所も無い視線を暗闇に泳がせるだけ

冬の夜の胸の中から染み出す冷たさは
手の先も足の先も凍えさせる
例えばこの部屋で一人
僕が明日の朝冷たくなっていたとしても
それはきっと不思議ではないこと

だから僕はきつい蒸留酒を呷って
内側から胸を焼こうとしている
その酒の匂いに咽ている
冬の夜の僕の赤い顔

冬の夜の部屋に一人
飽きられて捨てられた玩具のように
救われることのない僕の

冬の夜の胸の内はしんしんとしんしんと冷え
涙もつららのように伸びる
誰かの傍らに眠ることの
温もりを心から求めている

霜柱射抜いた足の小ささよ気色ばむ顔浮かんで可笑し 【短歌】

2019年12月25日 | 短歌
立派に育った霜柱を
勢い良く踏み抜いた
小さな足跡が残っていました

自分も小学校の頃
通学路に霜柱を見つけた日には
勢いよくそれを
踏みつけていたことを覚えています

地面が沈む感じが何とも楽しく
何故か自分がとても力のあるもののように感じられて
一人興奮して何度も足を踏みおろしていました

そんな自分の思い出と
その足型が重なったのでしょうか

霜柱の小さな足跡を眺めていたら
気色ばむ子供の顔が浮かんできて
可笑しさがこみ上げてきました

我侭を叱る甲斐なく暮早し 【季語:暮早し】

2019年12月21日 | 俳句:冬 時候
一人の子供が
自分の好きなものしか食べようとしません
嫌いなものは口からこっそり吐き出したり
手にとっては床に投げつけたりします

その見事な投げっぷりには
笑いがこみ上げてくるときもあるのですが
毎回の食事がそれということで
注意をするのですが
一向に聞くそぶりもありません

食事が終わったら終わったらで
ニヤニヤしながら悪戯をしています

たしなめたりするのですが
すべてが徒労

結局こちらだけが疲れて
冬の短い日が暮れていきました

雪の降る街で 【詩】

2019年12月19日 | 
「雪の降る街で」

昨日からの雪はまだ止まない

真っ白になった屋根や公園
動かない車や電車
文明の利器も雪にはかなわない
花屋の軒さき
小さな植木は真綿を咲かせたようだ

輪郭を柔らかくした街は
白い毛の動物 その背中の丸み
胃の中の人々も
手なずけられて従順だ

やむ気配もなく雪は
静かにおりてくる
わけ隔てもなく
真っ白なまま
えらぶることもなく

今日のやることを諦めると
心も静かになった
ぽっかりと空いた時間に
子供の頃に好きだった童話の
ほこりを払いページを開く
好きだった主人公
その姿にはいつでも心は温まる

みんなは何をしているのかしら
街は静けさを深める
雪の癒しの力
不快な音を吸いこむ沈黙
今日を静かにふりかえる
深いところからの教えに思い巡らす

窓の外からは
争うような声もしない
どれだけうるさいのか
普段の暮し

人の騒がしさが眠ったままならば
このまま雪の下に
街ごと埋もれてしまえば
いいのにと思っている

オリオンが腹ばいでおる冴えた空欅は並ぶ枯葉の鎮魂 【短歌】

2019年12月18日 | 短歌
帰りがけ晴れた空を眺めていると
一目でわかるオリオン座が
空に横たわっていました

随分低いところにななめにあって
まるで腹ばいをしているような姿です

その寒々と冴えた空の下には
欅が並んでいました

まるでどんどんと枝を離れて
足元に集う枯葉の
まだ落ち着かない魂が鎮まるまで
沈痛な面持ちで見守っている姿のようでした

風呂吹や父異郷から戻り来て 【季語:風呂吹】

2019年12月14日 | 俳句:冬 人事
仕事でカンボジアに出かけていた父が
一週間ぶりに帰って来ました

きっと和風の料理が食べたいだろうなと思い
その日の夜の献立を考えながら
買物をしていたのですが

大根が目についたので
一品は風呂吹大根を作ろうと思い立ちました

早い時間から圧力鍋も使って
仕込んだせいでしょうか
美味しくできたようで
評判も良かったのでホッと一安心

久しぶりの和食だったので
なおさらだったと思うのですが

冬の夕日に 【詩】

2019年12月12日 | 
「冬の夕日に」

ビルを真っ赤に濡らして
落ちて行く冬の夕日
どんなに悔しいことがあったの
何を我慢しているの
こんな色合いをしているなんて

僕の顔も全部が真っ赤だ
手も足も夕日に染められて
胸が締め付けられてしまう
家の明かりが恋しくなってくる

交差点を歩く人たちの姿も
どこか寂しげに見える
逆立てたコートの襟で顔を隠して
イライラとした自動車も
声高にクラクションを鳴らしている

クリスマスのイルミネーションだけが
一人楽しげに輝きを増して行くけれど
今の気持ちにはそぐわない
よそよそしい限りだから
誰も振り返りはしないんだ

吐く息もいつの間にか白くなり
その向こうには輝き始めた青白い星
冷たく凍えて行く手の先が
少し痛いと悲鳴をあげている

僕も悔しいことが多いよ
僕も我慢をすることだらけだよ
冬の夕日がそっとベールで隠してくれるから

もう笑顔を飾る必要もなくなって
ぐったりとした心を
奮い立たせる必要もなくなって
重たい足で家へ帰るよ
せめて冷たい風に意地悪されないように
寂しさをこれ以上募らせないように

今日はもう眠ってしまおう
心配した満月には合わせる顔もないから
カーテンをしっかりと閉めて
夢と現実の間にうなされながらも

襟を立て目線落として道を行く温きことのみ頭をよぎる 【短歌】

2019年12月11日 | 短歌
その日は随分と寒い日でした
薄暗い空からは乾いた雪が落ちていました

僕は首をすくめ
マフラー代わりにコートの襟をたて
両手をポケットの中に突っ込んでいました

目線はどうしても下にばかり行き
行き交う人々と目線が合うこともありません

動物の本能なのでしょうか
こんな時は暖かいものにしか思いが行かず
夜の食べ物のこと風呂のことなど
そんなことばかりが
頭をよぎっていきました

足だけがまるで別の生き物のように
僕を乗せて家路へと急いでいました