水場に遊びに出かけました
小さな滝の側までゆくと
体を冷気が包み
汗も止りました
冷たい風が時折
かたまりになって顔に当たり
クーラーよりもヒンヤリとします
この滝で禊を済ませて
綺麗になった風でしょう
僕は友人と言葉も無く
滝の前に涼み
体の火照りが消えた頃
来た道を戻りました
水場に遊びに出かけました
小さな滝の側までゆくと
体を冷気が包み
汗も止りました
冷たい風が時折
かたまりになって顔に当たり
クーラーよりもヒンヤリとします
この滝で禊を済ませて
綺麗になった風でしょう
僕は友人と言葉も無く
滝の前に涼み
体の火照りが消えた頃
来た道を戻りました
「初夏の風」
横たわる僕に風の吹く
甘く澄みきった草原の真昼
初夏は涼しさ弾く
透明な指の連弾
まつげも髪も
風の遊び道具に貸し出したまま
頭は涼しい青空で一杯だ
氷河のような白い雲が流れて
木陰にこのまま眠ってしまおうか
眠気を誘う耳の奥の子守唄
風は白樺の森に帰る
眩しさをまた取り戻すために
葡萄の一粒を唇に軽く
噛むような感触を忘れられずに
飛びたてない傷ついた小鳥の
閉じた瞼にしみる陽射しに
にじみ出す涙は昔見た
夢の轍をまたなぞり
物憂い痛みが心に広がっていく
僕が僕であることの
言葉にしっかりと光りを含ませて
愛した人の忘れよう
普段は化粧をしない人が
その日はうっすらと化粧をしていました
二重まぶたの上にうっすらと
ピンクのアイシャドウを入れて
それに合わせたようなルージュをさして
ちょっとした変化なのですが
随分と印象も変わるものですね
その人の周りがとても華やいだ感じがしました
その日は
深夜近くに事務所を後にしました
傘を差すか迷うほどの雨がふり
でも暖かなので寒さは感じません
まだ胸には仕事の
興奮が残ったままだったのですが
柔らかい春雨の闇の中を歩いていると
少しずつ気持ちも落ち着いて
その隠れ家の中で
素の自分に戻るような
感覚を覚えました
「とある風景に」
山間の村は
明るい陽ざしが集まるところ
5月、窓際には赤いゼラニウムを飾る
三角屋根の木造の家、こげ茶色
その隣り合わせた窓、二つ
金色の髪の、女の子の双子
それぞれの窓から顔を出して
何かの会話をしている
ピンクのパジャマ姿
お互いの部屋から見る風景には
まだ雪を頂いた山の連なり
上り切らない太陽の柔らかい日差しが
背の低い草や黄色の花の芽吹いた山肌
ふかふかに見せている
二人の机の上には、昨日の勉強の跡
開かれたノート、その上に転がる消しゴム
消されかけたいくつもの文字、数式
体に入れて行く知識の数だけ
人の思いも複雑になり、陰影を濃くするが
起きたらその人と話がしたくなって
窓の外に顔を出す、と
その人も窓の外に顔を出すような
会話がかみ合うことは嬉しい
話が通じ合うことは楽しい
二人の間には、淡く霞んだ、虹がかかっているようだ
その言葉に気持ちも乗って
二本の足を生やして行き来する、足早に
それが届くと、また嬉しくなって
朝食の食卓には
焼きたてのパンの匂い
もうすぐ、二人の名前が呼ばれる
食事を告げる声
それまでは続いている
心地よい会話を僕も
音楽を聴くように楽しんでいる
風もハミングしている
慌ただしい毎日を繰り返している内に
自分が何をやっているのか
だんだんと分からなくなってきます
ゆっくりと考えている時間もなく
(もっともゆっくりと時間があっても
怠けるだけの自分なのですが)
毎朝上る太陽に
どこか混乱したままの頭で目覚めます
結局、自分の混乱を
治めることはきっとできないのだろうなと思います
ただ、少しでも自分のやっていることに
納得できるように一生懸命に
生きて行くことだけは
放棄しないようにしなければと思います
田舎道を歩いたら
大きな木蔭に
お地蔵さまがいました
大分古いようで
目鼻立ちや顔の輪郭も
少しぼやけた感じです
それが良い味になっていて
優しく微笑むように見えます
年を上手く重ねて来たのでしょう
自分も年を経て
こんな穏やかな良い顔になりたいと
お地蔵さまの顔を胸に刻みました
「雨の土曜日に」
春の強い雨に、目を覚ます土曜日
子供たちの間に挟まれて
さっき、殺気立って、鳴ろうと身構えた
目覚ましも、頭を叩いたら、静かになって
二度寝した
今度は、自然の目覚ましに、起こされたわけだが
今日も家の中で過ごすこととして
あえて、ゆっくりと、三度寝をしようかと思う
子供たちの、静かな寝息
強くなる雨音の、クレシェンド
温かな布団に、体を包んで
安心して、何も考えずに
眠れる場所があることは、嬉しい
その人が交差点で片方の靴紐が解けたと
片膝をついて結び始めました
すると信号が点滅を始めて
その人も慌てたのですが
急ぐ必要もなかったので
次の青信号に変わるまで待つことにして
その人はゆっくりと紐を結びました
思えば人を急かすものは多いですね
もうこれが最後のチャンスとでも言うように
今渡らなければ、二度とこの横断歩道は渡れないよと
赤信号がせせら笑うように
そんな急かすものにつきあっても
結果は良く無いことも多くて
急がば回れという言葉がしっくりと心に寄り添います
その人も少し焦ったような様子に見えたので
僕は焦らなくてもいいといい
願わくば僕がその人の背を
慌てさせるものから守る
木蔭のようなものでありたいと思っていました
子供の日のこと
いつも買い物をするスーパーで
菖蒲が売っていました
菖蒲湯用です
ついつい興味を持って買ってしまいました
それをお湯に入れて子供たちと
お湯につかったのですが
子供たちは葉っぱを入れているのが不思議な様子
ちょっとうんちくを語ったりしていたのですが
自分も思い返せば親に
色々なことをしてもらっていたなと
改めてその恩を感じました
菖蒲湯のせいなのか
胸の内が熱くなったのか
身体の火照りを快く感じていました