風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

木陰から木陰へ白の夏衣 【季語:夏衣】

2021年05月29日 | 俳句:夏 人事

お昼どき
食事をとるために外に出たのですが
雲のない空にまぶしい太陽が居座り
強い日差しは肌を刺すよう

準備のいい人はもう
日傘をさしていました

すっかりと茂った木陰
白い夏服の女性は
強い日差しを避けようと
木陰から木陰へと移動していました

涼しげな白い服が木陰には映え
一服の涼しさを感じました


(Haiku)
From shade to shade, white,
Dress flits through towering trees—
Dodging summer's glare.


もう僕は何も 【詩】

2021年05月27日 | 

「もう僕は何も」

もう僕は 何も耳にしたくはなかった
新しいこと 何一つ知りたくはなかった
その度ごとに体の芯から
ドギマギとしてしまうから

僕の心臓が新しい出来事に
どれだけ青白く波打って
恐怖に震えるのか
まるで陸に捨てられた小魚の
最後の痙攣のようにピクピクとして

僕は緑の翡翠に閉じ込められた
小さな泡粒のように
いつまでも目覚めることの無い
カンブリア紀の夢まどろんでいたかった

僕をそこから呼び起こすのは誰
どうしてそんな暴力で僕を苦しめるの
僕の奥歯がきりきりと軋むのは
万力のような力が
僕の顔を押しつぶそうとするから

僕は林檎ではない
僕が真っ赤になって押しつぶされたとして
搾り出されるのは断末魔の絶叫と
真っ赤な血しぶきだけだ

したり顔をして僕を諭そうとする
青白い肌をしたものが確かにうなずく
気味の悪い歯並びの
白い馬のような口が笑っている
血走った玉子の黄身のような目が
僕の恐怖を見透かすようにすり寄ってくる

僕はもう繰り返す
昼と夜との鬩ぎ合いの合間

僕を静かには放っておかない
周りのすべてに
すっかりとすり減らされてしまい

細り行く神経に小さな出来事の一つ一つさえ
ますます過敏に感じとっている


空からの落下部隊や子のジャンプ落ちては上り上りては落ち 【短歌】

2021年05月26日 | 短歌
熱の下がった上の子供ですが
外に出ることは差し控えて
しばらく家に閉じこもった生活が続きました

もともと外で遊ぶのが好きな子供たち
家での遊びは限定されており
ただでさえ体力を持て余して
ソファーからジャンプを始めました

止めろと怒るのですが
余計に調子付いて
交互にソファーから飛び降りてきます

下には布団も敷いてあるのですが
それでもうるさいので
ジャンプを座って受け止めていたのですが
それにも限界があり

最後は半分脅して
止めさせました

恐ろしい落下部隊です

川とんぼ金の瀬縫い継ぐ裁縫士 【季語:川蜻蛉】

2021年05月22日 | 俳句:夏 動物
子供たちを連れて
近場の自然と触れ合える
施設に出かけたときのこと

ウサギに触れたりポニーに乗れたりと
小さい子供にとっては十分に
遊び甲斐のある場所でした

その施設の中に
川で遊べる場所もありました
川の浅瀬の部分を遊び場としていたのですが

木漏れ日が落ちて
金色になって流れる川の瀬を縫うように
川トンボが飛んでいました

おしりの部分が青く光り輝き
とても不思議な色をしていました

その飛び方もどこか儚げな感じで
こんな綺麗な川のほとりでしか
きっと生きられないのだろうなと思わせます

もっとその川トンボの
様子を眺めていたいと思ったのですが
抱いていた子供が騒ぎ出し

結局携帯で写真を一枚撮って
その場所を離れました

毒入れて毒に抗する注射針受け入れ難いか泣いて暴れて 【短歌】

2021年05月19日 | 短歌
インフルエンザの注射を打ちに行き
大泣きだった下の子供

体にウイルスを入れて
免疫をつけるというのは
体の不思議な
メカニズムだなと思ってしまいます

体のみならず
人は生きて行くうえでは
否が応でも
少しの毒は必要ということでしょうか

泣いている子供が
注射を怖がっているというよりも
無理やりウイルスを入れられることに
抵抗をして泣いているようで

毒を必要とする
人の生の入り口に立つ子を
切なく思い見ていました

新緑や風一つドンとぶっかって 【季語:新緑】

2021年05月15日 | 俳句:夏 植物
家の近くの公園の木々が
随分と葉を茂らせていました

冬の間は
陽射しがそのままに落ちていた公園は
今では柔らかな影につつまれて
木陰の合間に太陽も零れるばかりです

まだ青々とした木々の葉を見ていると
気分も高ぶってきます

そうして見上げていた木の一つに
意地悪な風が体当たりをしました

驚いたように大きく枝と葉っぱが揺れ

その横暴な風は
僕と力比べをするかのように
僕の体にも体当たりをして
僕を持ち上げようとしました

夜の目 【詩】

2021年05月13日 | 

「夜の目」

夜は幾千もの
目を持っている

その沢山の目の前では
心の深みまで晒される
暗がりは裸でいる恥ずかしさ
隠してくれる

素直になればいいと
見通す夜の目
不安や後悔に混ざって
砂金のように輝く
愛してくれた人の面影

出て来る言葉は素直で
膨らんでいく
今さらながらのありがとう

人を大切に思うこと
心を砕くこと
それは誰かの心に
いつの間に忍び込んでいる

僕も誰かの砂金になって
誰かの心に
沈み込むことがあるのかしら
いつの日にか
誰かを愛しく思って

胸が波打つ
闇も波打ち
沢山の目はやがて
温かな毛布のように
僕を包んでいた


胸の内草笛の音だ不安げな少年か細く咽び呼ぶよな 【短歌】

2021年05月12日 | 短歌
目を閉じて
静かにしていると
胸の内から草笛のような
か細い音色が聞こえてくる時があります

まるで不安一杯の少年が
すすり泣いているような
そんな悲しげな音色で僕を呼ぶもの

それはいつしか僕が置き忘れてきた
思いや気持ちでしょうか

生きることに精一杯になると
思わず忘れてしまう
胸の中の音色に
時折は耳を傾けなければと思います

盃に若葉の美味を飲み干せり 【季語:若葉】

2021年05月08日 | 俳句:夏 植物

友人と山間の酒蔵を訪ねました

広い中庭で
日本酒を買って試飲ができるので
それが目的です

沢山の人で賑わっていたのですが
タイミング良く席が空いて座れました

早速、小さな盃とお酒
それから簡単なおつまみを買って
酒を酌み交わしました

頭の上には若葉が茂り
程よい眩しさの木陰

近くには大きな川が流れ
涼しい風が吹きます
カヌーの練習もしています

手にした盃の面には
若葉の柔らかな緑が映えて
若々しい味わいを添えてくれるよう

ひといきで飲み干すと
初夏の賑わいが
口一杯に広がるようでした

 

(Haiku)
Empty my sakazuki,
Green leaves reflected within,
Taste of early summer.