風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

冬岬フジツボに似た村過ぎて 【季語:冬岬】

2021年01月16日 | 俳句:冬 地理
以前、日本海沿いを走る電車に乗っていた時のこと
その日は随分と風が強く
時折間近に見えた海は激しく波打ち
白く見えていました

電車も強風のために徐行運転をし
車窓の風景はゆっくりと流れていきます

その海の近くには小さな家々が
ふじつぼのようにひしめき合っていました

昔からこの場所にあって
こんな激しい風や寒さから身を守るように
皆で肩を寄せ合い暮らしてきたのでしょう

その生活を勝手に思い描いていたら
それがとても愛しいものに思えて
胸が熱くなるのを感じていました

その村を過ぎると今度は寒々しい冬の岬
その上ではカモメたちが
あてもなく舞っていました

灯台はいつ息絶やす寒の波 【季語:寒の波】

2020年01月31日 | 俳句:冬 地理
秋田県内の日本海に面した
ホテルに宿泊する機会がありました

部屋の窓からちょうど日本海が一望できたのですが
冬の日本海はさぞかし荒れているのだろうという
自分のイメージとは裏腹に
随分と穏やかな海原

ホテルの人いわくその日は
凪いだ状態だったそうです

それでも夜の海は
やはり寒々とした感じがして
遠くの半島の方で点る灯台の灯りは
今にも途絶えてしまいそうに
不安げに見えました

初氷くしゃみする毎鼻だす子 【季語:初氷】

2019年11月23日 | 俳句:冬 地理
仙台に住んでいた時のこと
その年の初めての氷を観測したそうですが
例年よりも一日遅れということで
例年並みの寒さであったのでしょう

その前の週は東京に出かける機会があったのですが
夜に帰って来ると仙台の風は
随分と冷たく感じられました

そんな寒さを小さな体に感じている子供たち
まだ風邪の後遺症が残っているようで
くしゃみをすると鼻水を出しています

放っておくとそのまま遊ぼうとするので
鼻を拭いてやるのですが
最初は怒って抵抗していたものの
だんだんと慣れて
最後はなすがままにされていました

初氷喉元通る風痛し 【季語:初氷】

2019年01月05日 | 俳句:冬 地理
とある朝のことでした
ニュースを眺めていたら西の方でも
初氷が観測されたとの話でした

外を眺めると空も冴え渡り
東京も寒そうです

意を決してドアを開け
家を後にしたのですが

駅へと向う道を歩いていると
無防備な首筋に当たる風が冷たく
少し痛いぐらいです

街路樹の銀杏も葉を落とし尽くして
言葉にならない痛みを訴えているようでした

枯野原手にある暖や丸蜜柑 【季語:枯野原】

2017年12月02日 | 俳句:冬 地理
川べりに沿った
野原を歩いていました
一面が枯草色で覆われて
生命の息吹がほとんど感じられません

そこに冷たい風が吹いてくると
なおさら寂しい気分になります

僕はポケットに手を入れたのですが
その中には昼に食べ残した蜜柑が一つ

そっとその丸い蜜柑を手の中に入れて
取り出したのですが
蜜柑の暖かな色合いに陽射しが一瞬で集まり

手の中が暖かくなったような気分を覚えました

冬の水触れるの嫌で寝起きの手 【季語:冬の水】

2016年01月16日 | 俳句:冬 地理
朝起きると
洗面所で身づくろいをするのですが
顔を洗おうと差し伸べる指先に
まず触れるのが冷たい水

それで目が覚めるといったことを
ここのところ
毎日のように繰り返しています

水の冷たさは
日に日に増していくようで
そのたびに差し出される指先も
どこかおどおどした様子

暖かなお湯も出せるのですが
それまで待つのも歯がゆく
ついつい差し出される指先は
ここのところ水を毛嫌いしています

足元に忍ぶ寒さや古布団【季語:寒さ】

2015年02月14日 | 俳句:冬 地理
ずっと使い続けている
布団だからでしょうか
この季節になると
足元のわずかな隙間から
冷たさが忍び込んで
指先を凍えさせます
足の先が冷たいと
寝つきも悪いようです
冴えたままの頭で
窓の外の気配に耳を傾けていると

皆もう家の中で暖かくしているのでしょう
いつもよりも静かに思われて
夜がとても長いものに感じられました

朝陽にも歯牙を立てたり霜柱 【季語:霜柱】

2015年01月31日 | 俳句:冬 地理
ここのところ寒い朝が続いていたせいか
電車から見える大地に
真っ白な霜柱がひしめきあっています
枯草さえも白く凍てつかせて
ある朝、そんな霜柱が盛り上がり
大地から白い歯を立てていました

それは朝陽に向かって
自分の力強さを自慢しているようにも見えて

その根拠の無い
子供のように無邪気な力強さが
うらやましく思えました