風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

風雨過ぎ銀杏匂いの落し物 【季語:銀杏】

2022年10月29日 | 俳句:秋 植物
強い雨風が過ぎた日
銀杏並木の通りでは
実をつけていた沢山の銀杏が振り落とされて
地面に無残にも転がっていました

それを沢山の自転車や人が踏みつけて通り
辺りには銀杏の強い匂いが
漂っていました

金木犀も咲いていたのですが
その甘い香りさえも打ち消すような感じで
そこにずっといることもできずに
足早に信号を渡り逃げ出した自分でした

街で 【詩】

2022年10月27日 | 
「街で」

夜の街に繰り出そうと
駅から吐き出される人の群れを
横切り斜めに歩く
人の切れ目は何処にあるのだろう
歩きにくさにはいつまでも慣れないままで

夜遅くまで灯りの灯る高層ビル群
どれだけの人がまだ忙しく働いている
何かを守ろうとして

さっきまでは誰かと一緒だった
細い肩の感触はまだ手に
微かに残っているけれど
それがどんな人だったかは
もう忘れてしまっている

よく見かける顔だったと
もう僕は気にもとめずに歩いてゆけば
高速道路が宙を曲がりくねって走る
街によくある軽い記憶喪失
都合の悪いこと忘れてしまえるという

ラジオからは その人の声が聞こえた気がして
何かを一生懸命に訴えようと
ああ彼女は僕の重たい気持ちを
衣装にして被せた彼女は
その重さに疲れて闇の中に紛れ込んでしまった
軽やかな足取りで
ホテルの回転ドアをくるりくるりと
通り抜けて笑っていた
口元の赤い口紅を思い出す

透き通ったガラス越しの
テーブルに座っている恋人たちを見て
その飴細工のような頼りなさに
うすら寒さを感じる頃

立ち止まる交差点で
僕は思う何処に僕の落ち着ける
椅子があるのだろうかと

それぞれの事ばかりとなる秋になり友の話も漫ろ心に 【短歌】

2022年10月25日 | 短歌
年を取るにつれて
それぞれの事情が出来て
自分のことで精一杯になります

その自分の事情で
頭が一杯になるからでしょうか
友人の身の上話もなかなか集中して
聞くことが出来ません

それはけれどお互い様ということで
昔からの友人は心が通じるようで
お互いの事情を尊重しながら
昔話に花を咲かせたりしています

図書館の前で君待つ金木犀 【季語:金木犀】

2022年10月22日 | 俳句:秋 植物
金木犀の香る季節です

道を歩いていると
遠くの方で咲いている金木犀にも
その香りで気が付くことがあります

図書館の前を通ると
その植木にも金木犀が花をつけていて
思わずその前で立ち止まりました

若かりし頃に
図書館の前で待ち合わせをして
大切な人が来ることを待っていたことを思い出し
金木犀のような甘い香りが
胸に広がりました

毎年、この時期になると
幸せな気分にしてくれるオレンジの花に
今年も感謝していました

あなたが 【詩】

2022年10月20日 | 
「あなたが」

あなたが笑ってくれるから
僕は風になる
明るい風になってあなたの笑顔を
もっと輝かせたいと思うから

あなたが涙を流すから
僕はどしゃぶりの雨になる
あなたの頬の涙が
誰からも見えないように
それ以上に僕も悲しいから

あなたが少しいらいらとするから
僕は一本の高い木になる
あなたが静かにもたれかかり
心落ち着かせられる
大木になれればと思うから

あなたが遠い目をするから
僕はその目線の先に届こうと
一羽の燕になり空を駆けだす
時々は青さに彷徨いながらも

あながた目を閉じると
僕はあなたの瞳には映らなくなって
何になればいいのかまごついて

あなたが思い出し笑いをする
僕以外のあなたを占めるものに
軽い嫉妬を覚えながら

あなたの耳が何かを聞こうと
だから僕は青い波になって
心地よい潮騒を奏でる
気がついてはいるのだけれど
あまりにも深みのない海だとは
その潮騒も息切れて途切れ途切れで

けれどあなたがいてくれるだけで
胸が温かくなる
だから僕は太陽になる
心地よい春の太陽になる

団栗を口にした子も200円 握り駄菓子屋、蹴って団栗 【短歌】

2022年10月18日 | 俳句:春 時候
三男を連れて近くの公園に遊びに行きました
目的はその近くの駄菓子屋です

ちょうど駄菓子屋が開いた頃に行ったので
少し公園で時間をつぶしていたのですが
公園の中では一番大きな部類

兄たちと見比べているので
小さくて可愛いと思うのですが
もう立派なのですね

そうして駄菓子屋さんの準備ができると
お金を握りしめて一目散に走って行きました

その後ろ姿を見守っていた僕の側には
小さな男の子がやってき
地面に落ちていた団栗を拾っていました

三男も団栗を拾い、それを口に入れたりするほど
小さかったのですが、今では団栗には目もくれません
それを成長と言うのかなのですが

いずれにしろ、小さな子供たちと比較してみると
大きくなったのだなと感慨深いものがありました

それでもまだまだ幼稚なので
家の中では兄たちと喧嘩したりと
日々、大騒ぎを繰り返しています

それもやがて嘘のように
落ち着く時がくるのですかね
それはそれで寂しい気もするのですが

子の指の先秋雲の写真撮る 【季語:秋雲】

2022年10月15日 | 俳句:秋 天文
子供と一緒に外に出かけました

秋らしい一日で
肌に当たる風も気持ち良く
子供も走ったり止まったりと
楽しそうに動き回っていました

そうして立ち止まった子供が
空に浮かぶ雲を指さして
写真を撮ってとねだりました

筆で描かれたような繊細な形の雲でした

好きに撮影して良いよと
自分のスマホを子供に貸すと
子供は空に向けてシャッターを切っていました

確かに空は高く
秋らしい色合いで
人の心を引き付けるには十分魅力的でした

笑顔を 【詩】

2022年10月13日 | 

「笑顔を」

# 1

教会の鐘は鳴る
その音に合わせるように
鳩が飛ぶ一羽一羽が
甘い祝福の音色を背に
飛んで行くよう

届けて欲しい
その幸いを
いたるところに

祝福は
何処にあるのだろう
思えば他愛のない話に
木々の生い茂る坂道を
上がる一歩一歩の切れる息に
一緒に目覚める朝日の中に

# 2

あなたが
傍らにいる

温かな人を
腕に包んで
その温もりを
肌に感じる

陽だまりが
そこに
あるように思う

僕の中に
明るい場所が出来る

# 3

人はいつから
知るのだろう
その瞳を眺めることが
楽しいことだと

時間を忘れて
満ち足りる静けさ
自然な微笑の
見飽きぬ造形

僕に向けられた
笑顔は嬉しくて
そのまなざしに
魔法をかけて
鳶色の宝石にして
いつまでも
胸に抱いて
いられるのならば

# 4

不意にその様子
月が覗き込んでいると
背に感じ

僕らの笑顔は
守られるのだろうか
蝕もうとする
多くのものから

抗い続ける
力の無さに
眠りについて
しまいたくもなり

せめてあなたを
笑顔にするもの
一つ一つ拾い上げて

そこに僕らの道が続き
教会の鐘も
祝福してくれますように


幸いは満ち贈られて満開の例えば金木犀の花の香 【短歌】

2022年10月11日 | 短歌
若い時分には
何故か良い事をしなければという
思い入れが強く

けれど人に対して力のなれない自分に
ただ、嫌悪感が増す時がありました

けれど、今考えるとそれは当たり前のことで
自分には力が無かったということ
それに自分が苦しい状態にあっては
なかなか人に対しても
優しい気分にはなれないということ

それに何となく気が付いてからは
自分が楽しくあることに対しても
受け入れられるようになりましたし
むしろ、いつでも心は平穏な状態に保つように
気をつけるようになりました
もちろん、全然できてはいないのですが

金木犀の花が咲くと
辺りの空気まで鮮やかに感じられるように
ただそこにあって匂い立つようであること
そうなれたら良いなと思います

爽やかや夕映え寝た子ら起きもせず 【季語:爽やか】

2022年10月08日 | 俳句:秋 時候
お昼を食べた午後のこと
横になってテレビを見ていた長男と三男が
いつの間にか眠っていました

窓を開けていたら
爽やかな風が吹いてきて気持ちも良く
その気持ちの良さにつられたのかなと
そのまま寝かせておきました

夜更かしが好きな二人
早く寝ろと言ってもダラダラと起きているので
少し疲れたのでしょう

その合間に、家事などをしていたら
いつの間にか空には明るい夕映え
それでも子供たちは起きる気配がなく

あまりに寝かせると今度は
夜にまた眠らなくなりそうなので
食事前には起こし
寝ぼけ眼で食事をしていた二人でした