「浜昼顔」
浜昼顔が咲いている
潮風に吹かれて、沢山
咲く時を知っている
僕はいつまで燻って
もったいぶって
花を咲かせないつもりだろう
思いは波のように
行ったり来たりをするばかり
心は何に
重い蓋をされて
開けないでいるのだろう
初夏の陽射しも
潮風も
目にしみる
「浜昼顔」
浜昼顔が咲いている
潮風に吹かれて、沢山
咲く時を知っている
僕はいつまで燻って
もったいぶって
花を咲かせないつもりだろう
思いは波のように
行ったり来たりをするばかり
心は何に
重い蓋をされて
開けないでいるのだろう
初夏の陽射しも
潮風も
目にしみる
「仕事」
朝方、公園の伸びた草を
一人刈る人を見た
大木に囲まれて蝉のなく
人の憩う場所
誰かに頼まれたわけではなく
大きな剪定鋏を黙々と動かす
その人の横には刈られた草の山
誰にも気づかれないかも知れない
けれど一人一人の心からの仕事が
この世を支えている
「ある日」
# 1
ビルの屋上から 見下ろす
小さな 売地の一画
鉄線で囲われた
あれは母なる大地の 捕獲された姿
雑草にあれ果てた顔だ
長方形に切り取られた土地
切手を貼り付けるように
ぺたんと住所を押し当てられて
「売地」と名付けられた
お問い合わせの電話の
先にいるのは誰
# 2
古い家に囲まれて
窮屈で息も 詰まりそうな土地に
鉢植えの花は 咲き誇ったのだろうか
どんな夢が そこに持ち込まれ
腐れていくのか
# 3
切り分けられた母を
助ける 術もない僕は
高層ビルの一部屋で 宙ぶらりん
青空と大地の間で
通り過ごすだけの 生を
消化不良のまま 飲み下して
焼かれる体は
コンクリートの墓の中
母の胸に
眠ることすらも ままならない
「ある日」
お前はもう
帰って行くんだ
僕らよりも先に
さらさらと手元からこぼれる
冷たい土の下へと。
僕は思う
大地がお前をきっと
楽しく遊ばせてくれる所へと
運んで行ってくれると。
今朝
針金細工のように硬直した
小さな黄色い体
あっけない死を手に乗せて
悲しみとともに
思っていたのは
僕の惰情さ
後味の悪い悔いだった。
思えば昨夜
元気のなかったお前が
無性に外に出たがっていたのは
今朝の死を感じとって
いたからなのかもしれない。
お前が楽しく
生をおくれたことだけが
唯一の慰めになるから
それを信じさせてくれる
思い出を胸に
今は冷たい墓のまわりが
春になって
野の花で飾られるような時分に
暖かい陽の中で
遊びぼうけておくれ
お前の羽ばたきを
かごに閉じこめて
邪魔するものは
もう誰もいないから