風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

浜昼顔 【詩】

2022年06月30日 | 

「浜昼顔」

浜昼顔が咲いている
潮風に吹かれて、沢山
咲く時を知っている

僕はいつまで燻って
もったいぶって
花を咲かせないつもりだろう

思いは波のように
行ったり来たりをするばかり

心は何に
重い蓋をされて
開けないでいるのだろう

初夏の陽射しも
潮風も
目にしみる


年月にかすむ消印 亡き母の 絵葉書の字 まだ 鮮やかで 青 【短歌】

2022年06月28日 | 短歌
亡き母からの手紙を
時々読んでは励まされたりしています

中国にいた時に
離れて暮らしている子供を励まそうと書いてくれたもの
自分が親になるとその言葉の一つ一つが
心に沁みる気がします

消印はもうすっかりと薄れているのですが
絵葉書に青いペンで書かれている文字は
まだ鮮やかで
字の上手だったこともあり見入ってしまいます

いつまでも子供を励まそうとする親の気持ち
自分が親になると痛いほどに共感できます

蚊の声や夜の微雨にも紛れたり 【季語:蚊】

2022年06月25日 | 俳句:夏 動物
夜、パソコンの前に座っていたら
いつの間にか蚊に足を刺されていました
痒みがあったので、初めて
蚊がいることに気が付きました

普段、蚊がいれば気が付くのですが
その夜は小雨が降っていたので
その音に蚊の羽音も紛れ込んだのでしょうか

あるいは小雨にかき消させるほどの羽音の
蚊だったのでしょうか
その割には随分と痒みも強かったのですが

仕事 【詩】

2022年06月23日 | 

「仕事」

朝方、公園の伸びた草を
一人刈る人を見た
大木に囲まれて蝉のなく
人の憩う場所

誰かに頼まれたわけではなく
大きな剪定鋏を黙々と動かす
その人の横には刈られた草の山

誰にも気づかれないかも知れない
けれど一人一人の心からの仕事が
この世を支えている


笑ってよ、不思議と笑顔に、なる、僕も、あなたの、柔らか、笑顔大好き

2022年06月21日 | 短歌
小さな子供が笑いかけてくると
思わずこちらも笑顔になります

つまらないことを考えていた
難しい顔の緊張が解けるように感じられて
心もそれで柔らかくなります

笑顔でいることは大切なことですね
そうして側にいるだけで
自然と笑顔を誘われるような
人がいてくれたら

随分と生きて行くことも
楽になるのでしょうね

もちろん自分も
その笑顔のお返しを
出来る人でいたいと思うのですが

苔青し如雨露の威勢の雨続き 【季語:苔青し】

2022年06月18日 | 俳句:夏 植物
雨が続く日がありました
ここぞとばかりに苔を育てている鉢を
外に出しました

一日、一回は水をたっぷりと上げているのですが
どうもそれでは足りないらしくて
元気を失い気味なので、天からの恵みの雨に
お任せしたものです

外に出しっ放しにしていた苔は
家の中にいるよりも元気を取り戻したようで
少し緑を濃くしたようでした

ある日 【詩】

2022年06月16日 | 

「ある日」

# 1

ビルの屋上から 見下ろす
小さな 売地の一画
鉄線で囲われた
あれは母なる大地の 捕獲された姿
雑草にあれ果てた顔だ

長方形に切り取られた土地
切手を貼り付けるように
ぺたんと住所を押し当てられて
「売地」と名付けられた
お問い合わせの電話の
先にいるのは誰

# 2

古い家に囲まれて
窮屈で息も 詰まりそうな土地に
鉢植えの花は 咲き誇ったのだろうか
どんな夢が そこに持ち込まれ
腐れていくのか

# 3

切り分けられた母を
助ける 術もない僕は
高層ビルの一部屋で 宙ぶらりん
青空と大地の間で
通り過ごすだけの 生を
消化不良のまま 飲み下して

焼かれる体は
コンクリートの墓の中
母の胸に
眠ることすらも ままならない


急く君よ 生は終わらぬ学びあい ゆっくりで良し 人はそれぞれ 【短歌】

2022年06月14日 | 短歌
ついついあれもこれもやらなければと
焦りがちな自分です

そうして人が当たり前に出来ていることが
自分には出来なくて
ついつい自己嫌悪に陥ったり

自分を制御するのは
幾ら歳を経ても難しいものですね

ただ、年を取って良い意味での諦めなのでしょうか
自分の身の丈が分かったからでしょうか
焦らなくて自分のペースで進めば良いのだなと
思うようになりました

きっと学ぶことは
ずっと続いて行く行為
自分を如何に制するかだなと思いますし

いつかは自分の何かを
人に与えられようになれればと思ったりします

生は短く
けれど思った以上に長く感じられる部分もあるので
焦らずに進もうと思います

病床に寄り添えもせず夏に入る 【季語:夏に入る】

2022年06月11日 | 俳句:夏 時候
お見舞に出かけたい人がいるのですが
病院の新型コロナの感染対策もあり
なかなか会うことも大変です

寂しい思いをしていたら
申し訳ないなという気持ちを持ちつつ
随分とご無沙汰をして
いつの間にか夏になってしまいました

病院は体が弱っている人も
少ないないと思うので余計に気を使ってしまいます

なかなか、以前の通りとはいかないでしょうが
早く気兼ねなく
会いに行くことができるようになればなと思います

ある日 【詩】

2022年06月09日 | 

「ある日」

お前はもう
帰って行くんだ
僕らよりも先に
さらさらと手元からこぼれる
冷たい土の下へと。

僕は思う
大地がお前をきっと
楽しく遊ばせてくれる所へと
運んで行ってくれると。

今朝
針金細工のように硬直した
小さな黄色い体
あっけない死を手に乗せて
悲しみとともに
思っていたのは
僕の惰情さ
後味の悪い悔いだった。

思えば昨夜
元気のなかったお前が
無性に外に出たがっていたのは
今朝の死を感じとって
いたからなのかもしれない。

お前が楽しく
生をおくれたことだけが
唯一の慰めになるから
それを信じさせてくれる
思い出を胸に

今は冷たい墓のまわりが
春になって
野の花で飾られるような時分に
暖かい陽の中で
遊びぼうけておくれ

お前の羽ばたきを
かごに閉じこめて
邪魔するものは
もう誰もいないから