風のささやき 俳句のblog

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暴れ者二人が目覚め来襲す朝の五時から休む間もなし 【短歌】

2019年07月31日 | 短歌
規則正しい生活を続けている子供たち
早寝早起きです

それはとてもいいことなのですが
夜7時過ぎに寝てしまうと
朝は五時過ぎには目を覚まして
遊ぼうといっては
体にのしかかってきます

その騒ぎにもう1人も目覚め
二人で攻めてこられると
こちらも眠れなくなります

自分は途中で会社へと出かけるので
それで何とかその暴れ者たちの攻撃から
身をかわすことが出来るのですが

家の者は一日その攻撃を受けて
夕方にはもう体力を使い果たしています

ありあまる子供の元気さが
こんな時には恨めしくも思えてきます

夏空は恋しき日々の墓標かな【季語:夏空】

2019年07月27日 | 俳句:夏 天文

新幹線に乗ると
子供がたくさんいたので
もう夏休みだと気がつきました

夏の思い出は自分にも沢山あって
故郷で遊んだ少年の日の思い出は
まだ鮮やかに記憶に残っています

その時に見上げた空の色と
同じような夏空を見ると
二度と戻らないものへの郷愁なのでしょうか
胸に恋しさが湧きます

空には失くした日々が
静かに眠っているようで
その青き墓標に立ち尽くします


雨の朝に

2019年07月25日 | 
「雨の朝に」


高い雨音に目覚めた朝
僕の頭の芯もいつの間にか
しっとりと濡れてしまったようだ
湿った思考はまだ夢の続きにあるようで
ゆったりと漂うばかり

まだ眠ったままのあなたは枕に
横顔をうずめたまま
海のそこに眠るように
目覚める気配もない

あなたの中に芽生えた小さな二つの生命も
その寝息の静けさに安心をして
あなたの中に深く眠っているのだろう

重なり合うあなたと新しい生命の吐息とは
紡がれた糸のように一つとなって
あなたの口元から零れている

いつの日にかその吐息も
はっきりと解きほぐされて
僕の両耳に届くのだろう
違う空気を吸い込み
違う夢に眠りながら

青白くなり過ぎている部屋を
暖かくするために僕は
炎の輪郭の上に薬缶を乗せている

やがて湯気が部屋の中に吐き出されるころ
僕は雨に濡れがちな僕の目を拭おうと思っている
やがて生まれ来る者たちの横顔に擦り寄る
朝日の眩しさにしっかりと眼を凝らしながら
湿りがちな舌に祝福の言葉を重ね
新しい生命の明日に添えたいと思っている

孫たちはその意味知らずはしゃぐのみ古希の思いは僕も計れず 【短歌】

2019年07月24日 | 短歌
父の古希は
仙台の温泉に泊まり祝ったのですが

久しぶりに一同に会した孫たちは
それだけで楽しいようすで
疲れることも知らずにはしゃいでいました

もう少ししんみりと
お祝いをできれば良かったのでしょうが
宴席は孫たちの歌や踊りに終始し
賑やかなままに終わりました

年を重ねるごとに
自分の中に想像もしていなかった
思いが湧いてきます

70年生きることとはどういうことだろうと
その胸の内を計りきれない
自分も孫たちと変わりないレベルだなと
思っていました

夏休み始まる子らのはしゃぎぶり 【季語:夏休み】

2019年07月20日 | 俳句:夏 人事
先日親戚の子供たちが遊びに来ました
一人の男の子は小学生になったばかり
初めての夏休みということでした

そのせいでもないのでしょうが
家についたとたんに
随分とはしゃいだ様子
いきなり相撲をとらされたりしました

疲れた僕は昼寝がしたいと言って
逃げようとしたのですが
なかなか離してもらえませんでした

自分もそう言えば夏休みが始まると
随分とうきうきとした気分を感じました
何かとても楽しいことが待っているようで
昼寝の時間も惜しんで遊び回っていました

そんな気分を羨ましく思い
楽しませてあげたいなと考えもしたのですが
その相手をする体力はありませんでした

錆 【詩】

2019年07月18日 | 

「錆」

かみ締めた林檎は錆の味がした
金槌で殴るように鼻の奥が寂しかった
蜘蛛の巣のように血走る目をして
林檎を飲み下した

口の中に残る赤茶けた錆の余韻
切れ味の悪い包丁の錆
あるいは赤切れの指先の血
農薬の残る赤い皮の苦味
原因は本当は知っている
体にしみついていた錆が
ついに表に滲みだしたのだ

夕日と一緒に後悔を葬れば
引きずられて心は地に沈む
包丁のように研ぎ澄ました心の叫び
誰にも届かない遠吠えとなり
喉の奥をしょっぱい潮風が吹いて
声はガラガラだ
打ち捨てられた廃艦を
赤茶けたフジツボが覆う

この体が錆びついていること
うすうすと感づいていた
こんなにも進行が早いとは
正直思ってはいなかったけれど

血管の中もきっともう錆で一杯
体が錆び付いて腐食してゆくことを
もう止める術もない


最高で4回できた水切りの記録のばすと石選り抜く子 【短歌】

2019年07月17日 | 短歌
子供たちは川に向って
水切りをやって遊んでいました

川に向うと
今の子供も昔の子供も
遊び方はさほど変わらないものだなと
思わされました

小学二年生になる親戚の子供も
熱心に水切りをしていた一人です

聞いてもいないのに
「僕の最高記録は4回なんだ
 でも僕のパパは小学校6年生の時には
 8回もできたんだって」
と興奮気味に話しています

その父親の記録に少しでも迫ろうと
なるべく平らな石を選ぼうと
石選びの段から熱心です

こうして子供たちは
親を追い越して行くんだなと
ぜひ追い越して欲しいなと
そんなことを思っていました

扇いでも風取りこぼし古団扇 【季語:団扇】

2019年07月13日 | 俳句:夏 人事
暑い夏の午後でした

部屋の窓を開けていたのですが
吹き込んでくる風自身も熱を吹くんで
少し息苦しく感じられるぐらいです

僕はいつから挟まっていたのかわからない団扇を
本棚の間から取り出して扇いでいました

机の上には普段はあまり飲まない
炭酸飲料に氷を浮かべた
グラスを置いていたのですが
そこにもすぐに水滴がついて大汗状態です

僕の額から滲み出す汗も引く気配もなく
団扇も無用の長物に感じられます

役に立たないなと
団扇に八つ当たりしながら
僕は窓をしめてクーラーをつけました

温かき夢の名残に目覚めれば胸の痛みの和らぐを知る 【短歌】

2019年07月10日 | 短歌
あまりないことなのですが
胸に温かさを覚えて
起きる朝があります

どんな夢かは覚えていないのですが
何かとても救われたような夢の記憶

眠りの中で
自分の傷口を癒してくれる
記憶の書き換えが行われているのかも知れません

人生の三分の一は眠りの世界
何もしていないようで
目覚めの時間を助けてくれる
世界が広がっているようです

山百合が虫食う捕食者真似ている 【季語:山百合】

2019年07月06日 | 俳句:夏 植物
山百合が大きな花を開いていました

その周りは鬱蒼とした林
山百合の咲く辺りだけ
スポットライトのような
強い陽射しが降りていました

よく見ると山百合が顔を向ける
枯れ枝の先には羽を休めるとんぼ

花が重すぎて
前傾姿勢の山百合は
そのとんぼに
食いかかろうとしているかのようでした